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ブロックチェーンでマージンのない社会を!LayerX福島氏の目指す世界

ここ数年目に触れる機会が増えている「ブロックチェーン」。詳しい仕組みは知らなくても、「仮想通貨の技術」と理解している方は少なくないだろう。しかし、ブロックチェーンの可能性は仮想通貨だけに留まらず、インターネットが世界の常識を変えたように、これからの世界を革新する可能性を秘めている。

そんなブロックチェーンの技術を使って、イノベーションを起こそうとしているのが、LayerXのCEO福島氏である。LayerXは、R&D活動、ブロックチェーンサービスの開発やコンサルティングを行っている。

今回は福島氏に、ブロックチェーンでどんな未来を描いていくのか、なぜブロックチェーンにフォーカスしたか話を伺った。

ブロックチェーンが実現するのはマージン(手数料)のない社会

■福島良典(ふくしま・よしのり)
東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。
2012年大学院在学中にGunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。2018年にLayerXの代表取締役社長に就任。
2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。
2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。

福島氏が初めてビットコインを知ったのは2013年。まだ国内の企業が、仮想通貨の取引所を始める前のこと。当時からブロックチェーンという技術に興味を持っていたものの、ビジネスとして使うにはまだ早いと思ったそうだ。

福島「機運が高まったのは、2016~2017年のことですね。ブロックチェーンの開発をする企業が増えて、利用者も一気に増えました。スマホの市場が立ち上がるのを目の当たりにした経験から、ビジネスは立ち上がる瞬間に立ち会わないとシェアもとれないし、人材もキャッシュも回ってこないことを体感しています。2017年、これがブロックチェーンでビジネスをする最後のチャンスだと思って、ブロックチェーン市場に参入したのです」

これからの「信用」がデジタルに変わっていく時代に、ベースの技術として使われるのがブロックチェーンだという。いったいブロックチェーンの技術によって、社会はどのように変わるのだろうか。

福島「ブロックチェーンによって可能になったのは、簡単にいうと『デジタルの数字(お金)に価値をもたらすこと』です。
 
どういうことかというと、ブロックチェーンには、デジタルの数字に次のような2つのルールをもたらします。
 
①一度使ったら消える
②利用履歴を改ざんできない
 
この2つの仕組みによって可能なのが、『二重払いを不可能にする』ことです。
 
例えば今まで、デジタル上にお金を作っても、いくらでもコピーができたために絶対的な価値はありませんでした。しかし、ブロックチェーンによって、二重払いができなくなったことで、デジタル上の数字に価値が生まれたのです。
 
この利点は、遠くにいる人に簡単に送金できるようになることです。現金を海外に送金しようとすれば、多大なコストがかかりますが、デジタルになったことでそのコストを削減できます」

信用がデジタルになることで、現在信用を担保するためにかかっている様々なコストを削減できると福島氏は言う。そして、ブロックチェーンと並んで、もうひとつの重要な技術である、『プログラマブルセキュリティ』についても説明した。

福島「例えば、企業が株式を発行する際には、さまざまなルールがあります。そのルールで定められた条件をクリアしなければ、株式を発行できませんし、もし条件を満たさず株式を発行しても、その株式には価値がありません。つまりルールを敷くことによって、株式の価値を担保していることになります。
 
そして、株式がちゃんとルールに従って発行されているか、証明する処理を『オーバーヘッド』と言いますが、このオーバーヘッドをプログラムで行っているのがプログラマブルセキュリティの特徴です。実際に株式を発行しようと思えば、さまざまなコストと時間がかかりますが、プログラマブルセキュリティを利用すれば、レギュレーションを保ちながら、コストも時間も節約できるのです。
 
企業が資金調達を行うために、申し込みをしてから実際に資金を調達できるまで6ヶ月かかるとします。これは今すぐ資金が必要な方にとっては、大きなハードルです。しかし、プログラマブルセキュリティを使って、オーバヘッドを削減すれば、期間を1/10以下にすることも可能です。これならより多くの方が資金調達ができるようになるでしょう。プログラマブルセキュリティが使われることで、心理的ハードルと時間的コストが下げられるのです」

株式の発行といえば、経営者や投資家などでなければ、ピンとこない話かもしれない。しかし、プログラマブルセキュリティの技術が普及すれば、身近なところでも生活が変わり始めるという。

福島「人類というのはこれまで、多くの情報を紙に書いて記録してきました。そして、その記録というのは価値になります。
 
例えば、一定期間無事故なら保険料が下がる保険がありますが、無事故であるか調べるには多くの時間とコストがかかります。その確認作業がブロックチェーンによってできるなら、安く短時間で行えるはずですし、それによって確認の為に発生していたマージン(手数料)が減れば、その恩恵は利用者にも返ってくるでしょう。
 
つまり、ブロックチェーンが普及した後には、究極的にマージンのない社会が待っているのです」

市場にいち早く参入しなければ有利なポジションを取ることはできない

ブロックチェーンの可能性に気づいた福島氏だが、なぜ金融業界でのビジネスを選んだのだろうか。市場の捉え方についても話を聞いてみた。

福島「今は金融機関や資金調達の需要のある企業などに対して、プログラマブルセキュリティの共同開発などを行っていますが、将来的には自分たちのサービスを作っていく予定です。今でも勝負は始まっていますが、人材とノウハウが溜まった時に、本当の勝負がくると思っています。
 
ブロックチェーンの技術は、お金との相性が良い技術なので、お金に関わる領域からはじめました。金融や株式、不動産というのはブロックチェーンが活用される事例も多いですし、お金も集まりやすい領域なので、ビジネスが展開しやすいと考えました。お金と関係のある領域に見えるが、今までお金になっていなかった領域は、ブロックチェーンビジネスとして成立するには、もう少し時間がかかると思います」

ビジネスを展開していくやり方には、アマゾンから学ぶところもあったとも言う。

福島「これまでいろんな企業を研究してきましたが、僕の感覚だとビジネスを作り続けている人が勝っていますね。例えば、アマゾンは最初本屋からビジネスを始めていますが、最初から市場の捉え方が違いました。結果的にインターネット上にウォルマートを超えるマーケットを作りましたが、最初は実現度が高く、ビジネスとしても回りやすい本から始まっているのです。
 
もしアマゾンが、最初から本だけでなく食品も家電も売って、物流までやっていたら失敗していたと思います。大事なのは、その瞬間に成り立つビジネスを、作り続けていくことだと思っています。ノウハウや技術が溜まっていけば、そのタイミングで新しいビジネスを立ち上げていけるので」

市場を見定める上では、「情報を細かく調べること大切にしている」と続ける。

福島「まず公開情報を調べていくと、世界での時差に気づくのです。中国ではこんなビジネスが立ち上がっているけど、日本ではまだないな、といった風に。ちなみに僕が会社を設立した時は、日本でブロックチェーンを使って成立していたビジネスは仮想通貨の取引所だけで、他のビジネスはボロボロでした。
 
大事なのは、情報を一番最初に受け取るポジションにいるっていうことですね。1年前はこの市場も、ぼくたちしかいませんでしたが、今はもう違います。そして、僕らはもう次のフェーズにリソースを充てていますし、単純に海外を追いかけるだけじゃなくて、自分たちでもビジネスを作っています。
 
そして、公開情報だけを調べればいいわけではありません。賢い人が同じ情報を見れば、ビジネスチャンスに気づいてしまいます。しかし、僕らには、ブロックチェーン領域でビジネスをしてきたからこそ見える景色がありますし、僕らだから得られる情報というものがあります。
 
これが早く市場に参入するメリットですし、トップのポジションから見えてる景色から生まれるビジネスこそが本当に継続しやすく世の中に価値が出しやすいビジネスだと思います」

組織はむやみに拡大しなくてもいい

LayerXは現在エンジニアを積極的に採用している。福島氏は、組織を大きくして行く際に、どんなことを気をつければいいのだろうか。

福島「ROIの合わない採用というのは失敗しますね。月に100万円払う人材を採用するなら、300万円は稼いでもらわなければなりません。採用にはそういったリスクがあるのです。
 
そもそも僕は、組織は必要がなければ拡大しなくてもいいと思っています。インターネットが普及する前、例えばウォルマートのようなビジネスモデルであれば、どうしても人員も土地も必要でした。しかし、ネットサービスであれば効率化によって、少人数でもビジネスを回せますし、最低限の人数で生産性を高めた方がリスクもコストも減らせます。
 
もしコンピューターを駆使して、コンピューターだけで仕事が完結すれば、人は必要ありませんよね。しかし、現実にはコンピューターだけで仕事を完結させることは無理です。なので、人を採用していますが、特に、自分でビジネスを作って会社に利益を生み出せる人材であれば、いくらお金を出していいと思っています」

組織を拡大することよりも、少人数でも生産性を重要視するという福島氏。では生産性を上げるために、どのようなことを意識すればいいのだろうか。

福島「同じことをしないことですね。同じことを繰り返すというのが、一番のコストだと思っています。生産性というのは、同じ作業が発生したときに、いかにコストをかけないかということです。機械にやらせて自動化してもいいですし、もしくは自分を機械のようにして、思考リソースを使わないことです。そうすれば、その分の思考を、次の不確実性を考えることに使えます」

ではいったい、同じことを繰り返さないためには、何をすればいいのだろうか。

福島「しっかり振り返りをすることですね。私達も必ず2週間に1回は振り返りをする時間をとっています。何が問題だと思って、それを踏まえてどのようなアクションをとるのか、全員で振り返りをするのです。それを続けるだけでも生産性は上がるはずです。
 
一人であれば、毎日、今日何をしたのか、もしその日の朝にタイムスリップして同じ1日を繰り返せるなら、どんな風に仕事をするのか考えれば、必ず生産性は上がります。もし変わってなければ、同じ失敗を繰り返しますし、同じ失敗をしなくなったらそれだけ生産性が上がったということです」

仕事を任せることと丸投げは根本に違う

LayerXは、現在R&Dと事業開発で同時に複数のプロジェクトが進んでおりそれぞれの責任者に進行を任せているという。福島氏が考える、「大きな仕事を人に任せる」とは、いったいどういうことなのだろうか。

福島「まず前提として言えるのは、仕事を『任せる』ことと、『丸投げ』することは全然違うということ。『丸投げ』は、自分ができない仕事を人にお願いすること。任せるのは自分ができる仕事だけど、自分には他にやらなきゃいけない仕事がある場合に、人にやってもらうことが、『任せる』ということです。
 
大事なのは、人に任せる仕事は、自分が一番理解していなければならないことです。つまり、任せた仕事がちゃんとできているか、自分でレビューできなければいけませんし、それができないなら丸投げということになります。
 
丸投げすることが悪いわけではなくて、自分で仕事を任せているのか、丸投げしているのか把握していることが大切なのです。任せるのであれば、仕事のレビューもできなければいけませんし、うまくいかないのであれば、壁打ち役もできなければいけません。丸投げするなら、相手のことを信頼している必要があります」

最後に、これからスタートアップに挑戦する人へのメッセージももらった。

福島「僕らのような会社は新たな市場をいち早く開拓していくチャレンジングなことをしており、決して甘い世界ではありません。しかし、本気でgoogleのようなグローバルに価値をもたらす会社を作っていこうと思っています。興味のある方は、ぜひ一緒にチャレンジしましょう」

福島氏は市場におけるポジショニングを、非常に大事にしていた。現在、時価総額が1千億を超えるメガベンチャーというのは、多くは98年から2000年にかけて創業していると話してくれた。ITバブルの黎明期に市場に参入してポジションをとったからこそ、今のような成長を遂げていると。

これからブロックチェーンが、同じように社会のインフラになっていくとき、先駆けて市場に参入した福島氏だからこそ、最高のポジションをとっていけるのだろう。

執筆:鈴木光平
編集:Brightlogg,inc.
撮影:高澤啓資

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