ランキングレポート

創業10周年のスタートアップランキング。メルカリ・UUUMなど著名企業が続々誕生、未上場にも大型調達実施企業

2023-03-23
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

当時の安倍政権による経済政策「アベノミクス」が始動し、特定秘密保護法をめぐって国民的な議論が巻き起こった2013年。当時誕生したスタートアップ企業は、2023年に節目の10年目を迎える。

2013年に生まれたスタートアップは、どのような成長の軌跡を辿ったのか。IPO(新規株式公開)やM&AなどのEXIT、それに累計の資金調達額などから浮き彫りにしていく。

IPOは25社 メルカリ筆頭にUUUMなど著名スタートアップ並ぶ

2013年創業のスタートアップは634社。そのうち、IPOを果たしたのは25社だった。代表的な存在はフリマアプリを手掛けるメルカリだ。2018年に東証マザーズ(当時)に上場すると、22年6月にプライム市場へ移行。プライム市場への上場変更が承認されたのは、東証の市場再編後では初の事例だった。

直近の2023年6月期第2四半期決算によると、四半期の売上は442億円と前の年の同じ時期よりも18%増加した。営業利益は27億円と3四半期連続の黒字となった。主力のマーケットプレイス事業では、GMV(流通総額)が2,548億円(10月1日〜12月31日)と過去最高を記録した。一方でアメリカ事業では、GMVが対前年比で12%マイナスの2億7,000万ドルとなるなど想定を下回った。今後は費用の見直しなどを通じた赤字の縮小を進めていくとしている。

同じくプライム市場にはアプリの受託開発を手掛けるSun Asteriskが上場している。テック・デザイン・ビジネスにそれぞれ専門的な知見を持つメンバーが、事業構想段階から伴走してプロダクトを作り上げるのが強み。2022年12月期の通期決算によると、年間の売上は107億4,500万円と前年から33.8%のプラスも業績予想には届かず。営業利益は9億200万円で、こちらは予想を上回ったものの前年より36.1%減った。エンジニアをベトナムで雇用しており、ベトナムドンに対する円安進行が影響したという。

プライム市場には、マンガアプリの開発・運営を多数手掛けるLink-Uと、主にEU(電子商取引)事業者向けに物流機能を提供するファイズも上場している。

グロース市場には19社。このうち、ヤプリはプログラミング不要でアプリ開発ができるプラットフォーム「Yappli」を手掛ける。同社は2020年12月に東証マザーズへ上場。当時発表していた導入企業数は450社だったが、直近の2022年12月期第4四半期決算によると783社まで伸びた。

一方で通期売上高は41億4,200万円と、前の年から26.9%増も業績予想に届かず。経常利益は8億2,400万円の赤字で、広告宣伝費の抑制やオフィス縮小などコスト面の見直しを実施しつつ、黒字化を目指していくとしている。

YouTuberのマネジメント事務所として知名度が高いUUUM(2017年上場)は、収益構造の転換に取り組む。2023年5月期第2四半期決算によると、YouTubeの再生回数などに依存するアドセンスの売上は21億6,700万円と前年同期の8割ほどだった。専属クリエイター数も188人と、前年同期の303人から4割ほど減らしている。

これに対し、グッズやマーケティングなど、アドセンス以外の売上は40億6,000万円と27%のプラスだった。今後も、YouTuberマネジメントを主体とした事業からの転換を進めていく方針だとしている。

未上場企業の資金調達ランキング トップはSmartHR

未上場のスタートアップを、創業からの資金調達金額順に並べた。調達額が10億円を超えたのは46社だった。

トップはSmartHRで233億8,100万円。入社手続きや雇用契約、それに年末調整など、企業の労務手続きを効率化させるクラウド人事労務ソフトで知られる。2015年にサービスを開始し、登録社数はすでに50,000を超える。

2位はお金のデザインで104億8,000万円。ロボアドバイザーによる資産運用サービスを複数提供している。このうち、個人向けサービスの「THEO(テオ)」は、顧客の年齢や金融資産額などに応じて、231通りのポートフォリオから投資先を決定するという。

ユニファが89億2,000万円で3位だった。保育施設向けのICTサービス「ルクミー」を手掛ける。「ルクミー」はクラス情報の管理から午睡中の体動チェック、それに保護者連絡など施設の幅広い業務を効率化させるサービス。2022年10月時点で、全国約60の自治体で15,000件の導入実績があるという。

4位のトレタは飲食店のDX(デジタルトランスフォーメーション)を手掛ける。来店履歴などの顧客情報を蓄積できる予約帳や、注文から会計までをスマホで行えるモバイルオーダー機能などを兼ね備えている。2018年12月にはNTTドコモから30億円を調達するとともに、資本業務提携を締結した。

調達額5位のFOMMは研究開発型のモビリティメーカー。2019年3月には「緊急時には⽔に浮く電気⾃動⾞」と銘打ったFOMM ONEの量産を開始した。水害などを想定した設計だ。

FOMMは電気自動車の生産をタイで行ってきた。新潮社Foresightによると、現地ではすでに販売され、洪水の懸念から注目を集めているという。FOMMに多く出資しているのはタイの石炭・発電大手Banpu Power Public(バンプー・パワー・パブリック)で21億9,500万円。資本業務提携を結んでいるヤマダホールディングスが10億5,000万円を、クオンタムソリューションズが10億円をそれぞれ出資している(金額は登記簿からの推計を含む)。

26億1,400万円で20位のFRDジャパンは魚の陸上養殖を手掛ける。バクテリアを活用した独自の濾過技術が強みで、「水換え不要」(同社公式サイト)の養殖を可能にした。海から離れた場所でも養殖を実施できるほか、海水冷却に必要だった電気代をカットできるなどの強みがあるという。自社でトラウトサーモンの「おかそだち」を育て、販売している。

同社をめぐっては、三井物産が2017年に9億円を出資し株式の80%を取得している。

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