1. HOME
  2. MEDIA
  3. SaaS型AIソリューションサービスを提供するAppier GroupのIPOサマリー

SaaS型AIソリューションサービスを提供するAppier GroupのIPOサマリー

マーケティングおよびセールスの活動の全領域を支援するSaaS型AIソリューションサービスを提供するAppier Group株式会社(以下、Appier Group)が東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2021年2月24日で、同年3月30日に上場を果たす。

Appier Groupの起源は、2012年に台湾にて設立されたAppier, Inc.である。2018年4月に東京オフィスが開設され、2019年1月に組織変更、Appier Groupが誕生した。

同社は、“将来の事象を予測する人工知能(AI)を用いて、データに基づく意思決定に従い、顧客企業の事業が成長・成功することを支援する”をミッションに掲げ、マーケティングおよびセールスの活動の全領域を支援するAI SaaSソリューションサービスを提供している。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書の部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

グローバルスタートアップが日本で上場する理由

同社は17の国と地域に子会社をもつ。そのうちアメリカ、イギリスの2都市を除いた15都市は全てアジア・太平洋地域の国である。

同社は、研究開発費の投入、事業拠点の拡充、優秀な人材の確保を進めることで、新規事業創出に力を入れたいと考えている。そのため、資金調達能力の拡大による自己資本の充実や、社会的信用度・知名度の向上を目的として、上場を推進した。

北東アジア地域(日本・韓国)は同社グループの売上収益の地域別最大シェアを誇るため、日本において株式を上場させることは、同地域での事業拡大および社会的信用度・知名度の向上の観点で最も意義があると判断し、グループ内編成をした上で、日本での上場に舵をとった。

売上高は前年同期比23.3%増

2020年第3四半期の売上高は61億7,627万円で、前年同期比23.3%増となっている。これは、営業体制の強化、継続的なソリューションの改善によってサービスの需要が拡大したことが要因であると同社は分析している。

設立以降、3期にわたって営業損失および当期純損失を計上しているが、同社は製品・サービスの開発、顧客企業基盤の拡大、事業領域や市場の拡大を重視し、今後も積極的に投資を行っていく方針を掲げている。

AI SaaS事業の単一セグメントで事業展開

AI SaaS事業の単一セグメントで4つの事業を展開。デジタルマーケティングとセールス領域において、潜在的なユーザーの予測および獲得からユーザーの維持および関係構築、販売に至るすべてのプロセスを一気通貫でサポートできるソリューションを提供している。全て最先端のAIモデルによって将来予測を行うという特徴をもっており、データが真の価値を発揮することを可能にする。

Appier Groupのソリューションはそれぞれ、マーケティングおよびセールスの領域におけるファネル(注1)の各段階での課題に対応したものになっている。

各段階の課題と対応するサービス
潜在ユーザーの予測および獲得:CrossX
②ユーザーの維持および関係構築:AIQUA
③購買・アクションへの動機付け:AiDeal
④オーディエンス・インテリジェンス:AIXON

(1)Cross
AIが最も生涯価値の高いユーザーを予測し最適なチャネルで獲得することで望ましい投資対効果を実現する広告プラットフォーム。

(2)AIQUA
AIを活用して、ユーザーにパーソナライズされたメッセージを作成し、最も効率的にあらゆるチャネルを通じて、ユーザーとのエンゲージメントを実行するマーケティングオートメーションプラットフォーム。“ユーザーの維持および関係構築”のためのソリューションサービス。

(3)AiDeal
購入をためらっているユーザーをAIが発見し、当該ユーザーに対し効果的なオファー(期間限定のディスカウントなど)を提案し購入まで導くことで、収益性の向上を実現。

(4)AIXON
導入しやすいデータサイエンス機能を持つAI搭載の予測分析プラットフォーム。ユーザーの行動を予測する最先端のAIを活用した予測モデルを自動で構築することが可能。

注1:「じょうご」の意。同社は、潜在的なユーザーおよび獲得からユーザの維持および関係構築、販売に至るマーケティング全てのプロセスを「フル・ファネル」と表現している

AIソフトウェア市場は2年で約1.4倍予想

IDC「IDC Semiannual Artificial Intelligence Tracker, 1H 2020(2021年1月)」によると、AIの市場規模は今後も成長し、そのうち88%がソフトウェアによるものと予想されている。また、AIソフトウェアの市場規模は、2020年の2,480億米ドルから2022年には3,430億米ドル超に達すると見込まれている。

同社グループは、IDCの定義による「カスタマーリレーションシップマネジメント」セグメントと「データ分析およびプレゼンテーションソフトウェア」セグメントにおける同社グループのTAM(注2)について、2020年に合計約524億米ドルだったものが、2022年に約675億米ドルにまで拡大すると見込んでいる。なお、同社グループは長期的にはアジア太平洋以外の地域にも事業を拡大する計画を有している。

注2:TAMとは、Total Addressable Marketの略。想定する最大の市場規模を意味する用語

その他同社を取り巻く経営環境は以下のとおりである。

データの爆発的増加とAIへのニーズ
インターネットおよびモバイルデバイスの急速な普及によって生み出された検索や商取引等の膨大なトランザクション・データや画像・動画等の非構造化データは膨大である。情報の氾濫に伴い、これらのデータを保管・処理する技術は飛躍的に進化した。そのため、企業がデータに基づいた意思決定を行う必要性は益々高まっている。

データに基づいた意思決定を行う必要性は高まる一方、導入には障壁がある
Gartner CIO Survey(2020年5月)によると、企業の73%が近い将来、事業にAIを展開する計画がある一方、現在AIの導入を完了している企業はわずか19%にすぎない。また、Gartner「Three Barriers to AI Adoption(2019年9月)」によると、専門技術を有するスタッフが欠乏していることがAI導入における最も一般的な障害である。
内製AI組織でなく、AI SaaSソリューションの活用が拡大
他のソリューションと比較して導入が容易なSaaSのソリューションが増えると同社は予想している。
デジタル化の加速
新型コロナウイルスの流行の影響で、デジタル化の流れは加速している。IDC「Global DataSphere(2020年5月)」によると、デジタルデータは今後年換算複利成長率26%のペースで増加すると予測されている。
AIによる予測がマーケティングやセールスへの投資の中心に
マーケティングやセールスへの投資は投資対効果の予測が難しいが、AIを活用することでその予測が可能となる。
デジタルマーケティングにおけるAIによる自動化と効率化
現在、デジタルマーケティングは、担当者が各種の設定を手作業で調整するという労働集約型のビジネスとなっている。AIは過去のデータに基づき、最適解を予測するため、AIの普及により、デジタルマーケティングの組織の効率化とマーケティングの成果の増加をもたらす可能性がある。

Appier Groupが誇る5つの強みとは

(1)革新的な機械学習を用いたAI技術

革新的な機械技術を活用したAI技術は同社ソリューションの基盤となっており、同社は特に以下の4つの技術を強みとして挙げている。

技術力の強み
①深層表現学習技術(注3)
②機械学習の自動化
③オンラインリアルタイム学習
④転移学習(注4)

注3:データから特徴検出や分類に必要な表現を自動的に発見し、テキストだけでなく画像や動画のソースからも深い意味を抽出することができる技術のこと
注4:ある領域で学習したAIモデルを別の領域に活用し、効率的にAIモデルを学習させる技術

(2)AIのエキスパートとビジネスのベテランによる経営陣

同社グループの役員または従業員によるトップジャーナル、カンファレンス、ワークショップにおける発表論文数は300を超え、国際的なデータ・マイニング・コンテストにおいて実績を有する者を多数擁している。また、全エンジニアの約70%(2021年1月末時点)がAI・ビッグデータの領域における博士号・修士号を有している。

そして、ビジネスの執行面においても、ソフトウェアおよびテクノロジー分野の大手企業で営業や財務の上級管理職を務めた経験のある多数のメンバーが在籍しているほか、他の取締役やアドバイザーの専門的な知見も活かせる強みを持っている。

(3)プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果

同社ソリューションには、以下の①〜③を繰り返すネットワーク効果がある。これは他社では短期間には再現できないものであり、競争優位性であると同社は考えている。

①顧客企業が同社ソリューションを採用すると、分析されるデータ量が増える
②同社AIアルゴリズムの精度が向上し、顧客企業の満足度が高まる
③同社の提供している別のソリューションを利用する意欲が高まる
(4)戦略的な買収によるポートフォリオの拡大

同社グループは、内製でのソリューション開発に加えて、既存ソリューションと補完的な関係にあるソリューションを持つ企業を戦略的に買収し、ソリューションのポートフォリオを拡大してきた。2018年にはQuantumgraph Solutions PrivateLimited.を、2019年にはEmotion Intelligence株式会社を買収し、最先端のAI技術で再設計・改良することによりAIQUAとAiDealを完成させ、顧客企業を増やしている。

(5)アジア太平洋地域にまたがる顧客基盤

同社グループには、ソリューションを様々な業種に適応させ、異なる国・地域で事業を拡大していくノウハウがあり、現在は世界17の都市にオフィスを構えている。また、顧客企業の業種はeコマース、小売、ゲーム、ソーシャルメディアやエンターテイメント、消費財、金融など幅広く、2020年12月31日現在、顧客企業グループ数は827となっている。

(6)顧客企業の獲得・維持・拡大における実績

同社グループのソリューションはデータを扱うビジネスに決定的なプラットフォームとなることから、顧客企業はソリューションを長く使うことによってますます手放すことが難しくなると同社は考えている。2020年12月期において、月次顧客解約率(注5)は約0.8%、月次顧客収益解約率(注6)は約0.6%となっており、この結果、NRRは118%という高い水準になっている(注7)。

注5:前四半期末時点の顧客企業の数に対する当四半期に離脱した顧客企業数の割合を月平均したもの
注6:前四半期末時点の顧客企業からの売上収益に対する当四半期に離脱した顧客企業からの前四半期における売上収益の割合を月平均したもの
注7:Net revenue retention rateの略で、該当年度におけるその前年度以前に獲得した顧客企業から生じた売上収益÷前年度における当該顧客企業から生じた売上収益のこと

(7)リカーリング売上収益の増加と営業レバレッジ

“ランド・アンド・エクスパンド”手法(まずは顧客企業に1つソリューションを利用してもらい、その後、別のソリューションへの利用拡大を促す手法)が有効に機能しており、2020年12月期のNRRは118%となっている。この結果、安定した収益源であるリカーリング売上収益が増加傾向にある。また、同社グループの顧客企業は多様な業界および地域にわたっているため、市場の不安定な時期においても、業績に与える影響は緩和されると、同社は考えている。

現在の企業形態に変更後、累計6億1,212万6,000円を調達

これまでに合計で6億1,212万6,000円を調達している。三井住友銀行みずほ銀行からは融資で資金調達している。なお、Appier groupが2019年11月に公開した公式HPによると、累計調達額は1億6,200万米ドルに達しているが、組織変革前につき有価証券報告書に含まれないため、表記していない。

SEQUOIA Capitalは、これまでにAppleやGoogleYahoo!、Instagramなど名だたる企業に投資してきた、アメリカの老舗ベンチャーキャピタルである。SEQUOIA Capitaの投資先企業が日本市場でEXITするのは今回が初である。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は2021年3月30日で、上場先市場は東証マザーズである。SMBC日興証券が主幹事を務める。今回の想定発行価格は1,400円である。調達金額(吸収金額)は82.3億円(想定発行価格:1,400円×OA含む公募・売出し株式数:5,885,100株)、想定時価総額は、1,398.2億円(想定発行価格:1,400円×上場時発行済株式総数:99,872,490株)となっている。

公開価格:1,600円
初値:2,030円(公募価格比+430円 +26.8%)
時価総額初値:2,027.41億円※追記:2021年3月30日(上場日)

筆頭株主には、アメリカのゲーム会社であるPlaxieが18.54%を保有、次いで、アメリカを代表するベンチャーキャピタル、Sequoia Capitalの関連会社であるSEQUOIA INDIAが16.67%と名を連ねた。

日本からは唯一ソフトバンクグループがランクイン、4.74%を保有している。4.75%を保有する蘇 家永氏は、同社の共同創業者兼取締役CTOである。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書の部を参考

 

 

シェアする

Scroll to Top
Copyright © for Startups, Inc. All rights Reserved.