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転職&採用業界に変革を起こす「ビズリーチ」運営、ビジョナルのIPOサマリー

“プロフェッショナル人材と企業をつなぐ転職サイト”「BizReach(ビズリーチ)」を展開する株式会社ビズリーチ(以下、ビズリーチ)の完全親会社である株式会社ビジョナル(以下、ビジョナル)が東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2021年3月17日で、同年4月22日に上場を果たす。

ビジョナルは、2020年2月3日に株式移転により、ビズリーチの完全親会社として設立され、持株会社として同社グループの経営方針策定および経営管理を行っている。同社グループは、同社、国内子会社5社(ビズリーチビジョナル・インキュベーション、BINAR、Cloud Solutions、トラボックス)、国内関連会社1社(スタンバイ)で構成される。

同社は、「新しい可能性を、次々と。」をミッションとし、社会における様々な課題を、テクノロジーを活用したサービス創造を通じて解決する事業を複数擁するデジタル・トランスフォーメーション・カンパニー。2007年8月のビズリーチ創業からおよそ13年9ヶ月での上場となる。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書の部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

売上高は4年で4倍以上に成長。経常利益も黒字達成

上図は過去5年間の売上高と経常利益の推移である。2020年7月期の売上高は2016年7月期からの4年間で約4.2倍に成長。経常利益は、2018年7月期に約6億5,800万円の黒字となり、その後、着実な成長を遂げている。

安定した成長と、経常利益の黒字転換の背景には、同社の以下の強みがあると考えられる。

市場での「ビズリーチ」の明確なポジショニングの確立
各採用領域における充実したサービスラインナップの提供
収益構造の多様化
「ビズリーチ」に代表されるフロー型の収益構造に加え、「HRMOS」に代表されるサブスクリプション型サービスの提供による、収益構造の多様化
幅広い領域における新規事業創出能力
同社は新規事業の創出による新たな収益源の確保のみでなく、新規事業を創出し、一定の規模に育てた上で、当該事業を高く評価するパートナー企業に持分を譲渡することを通じて、成長資金を獲得してきた背景を持つ。
プラットフォーマーとしてのポジショニング
同社は、主力サービス「ビズリーチ」運営で培ったプラットフォーム運営ノウハウを活かし、他社との協業も通じて、他領域でも主要なプラットフォーマーとしての地位を確立している。

主力のHR Tech領域での事業拡大に取り組みつつ、Incubation事業にも注力

HR Tech

HR Techセグメントはビズリーチ事業、HRMOS事業及びその他のHR Tech事業で構成されている。

(1)ビズリーチ事業
「ビズリーチ」はビジネスプロフェッショナル、国内外の優良・成長企業、各業界に精通したヘッドハンターの三者を、効率的にマッチングするプロフェッショナル人材(管理職・専門職等)に特化した会員制転職プラットフォームである。

従来、企業と求職者が直接やりとりできるプラットフォームがなかった人材業界において、採用活動に取り組む企業とヘッドハンターに人材データベースを開放することで、日本の転職市場における”ダイレクトソーシング”の概念の先駆者となった。

(2)HRMOS事業
人財活用プラットフォーム「HRMOS」は、採用から入社後の活躍までの情報を一元化・可視化することで、エビデンスに基づいた人財活用を可能にするサービスだ。客観的な判断に基づく“採用・評価・育成・配置”が可能になることで、企業や組織の継続的な成長の実現を支援していく。

(3)その他のHR Tech事業
「ビズリーチ」および「HRMOS」の他、ターゲットとする年齢や職種等毎に人材採用支援サービスを提供。具体的には、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」、ハイスキルITエンジニア転職プラットフォーム「BINAR」、求人検索エンジン「スタンバイ」が挙げられる。

Incubation

業界構造や先行市場での動向を分析し、デジタル・トランスフォーメーションを進めることができる大きな市場ポテンシャルを有する領域において、新規事業を推進している。具体的には、物流DXプラットフォーム「トラボックス」、事業承継M&Aプラットフォーム「BizReach SUCCEED」、B2Bリードジェネレーション・プラットフォーム「BizHint」、オープンソース脆弱性管理クラウド「yamory」を提供。

なお、同社の主力事業「ビズリーチ」のビジネスモデル図は、下記のとおりである。

「ビズリーチ」のユニークな収益構造とは

「ビズリーチ」は直接採用企業、ヘッドハンター、求職者の三者にサービス提供をしているため、一般的な人材紹介業のビジネスモデルとは異なり、直接採用企業からの課金売上だけでなく、ヘッドハンター(人材紹介会社)および求職者からの課金売上も存在するユニークな収益構造を有している。その構造を以下にまとめた。

2020年7月期において、上記表内のリカーリング売上高とパフォーマンス売上高の比率は、リカーリング売上高28に対し、パフォーマンス売上高は72となっている。

また、売上高の構成比率は、2020年7月期において、直接採用企業からの売上高61に対し、ヘッドハンターからの売上高は39だ。

「ビズリーチ」の外部顧客に対する売上高の推移は、以下の通りである。

図から、「ビズリーチ」の売上高は2018年7月期から2019年7月期にかけて約1.4倍、2019年7月期から2020年7月期にかけては約1.2倍と、着実な増加を見せている。

「ビズリーチ」は、インハウス・マーケティングチームによるオンライン広告とマス広告の効果的運用により、ブランド認知度は92%(注1)と高い認知度を既に獲得。

注1:2020年2月時点での関東における、正社員の中途採用担当者によるブランド認知度。調査主体:株式会社ビズリーチ/調査実施機関:株式会社インテージ/調査対象者数:996名

また、同社では、直接採用企業数については、累計導入企業数と年次利用中企業数、ヘッドハンターについては、利用ヘッドハンター数、求職者(会員ユーザー)については、スカウト可能会員数を社内指標として捉えている。

都道府県別 一般事業主行動計画策定届の届出及び認定状況(20203月末時点)」によると、「ビズリーチ」のメインターゲットとなる、日本における従業員101名以上の企業数は、48,645社である。その内、同サービスの累計導入企業数は15,500社以上にのぼる。

図から「ビズリーチ」は、直接採用企業数、ヘッドハンター数、求職者数の3指標全てにおいて、堅実な成長を遂げている。

HRMOS」事業の成長ドライバーである、利用中企業数とARRはともに続伸

「HRMOS」事業は、採用管理クラウド「HRMOS採用」と人材管理クラウド「HRMOS」によって構成されている。人材管理クラウド「HRMOS」は、従業員データベースを基本機能とし、追加機能として、「評価管理」、「組織診断サーベイ」、「1on1支援」をリリースしている。今後は給与、労務、勤怠などの機能ラインナップを順次拡充していく予定だ。

採用管理クラウド「HRMOS採用」と人材管理クラウド「HRMOS」はいずれも、SaaS形式で提供されており、サブスクリプション型の課金体系を導入している。

「HRMOS」事業では、ARR(注2)、Churn rate(注3)、利用中企業数、ARPU(注4)を社内指標として捉えている。それぞれの指標の推移は以下のとおりである。

注2:Annual Recurring Revenueの略称。対象月末時点における継続課金企業に係る月額料金の合計額であるMRRを12倍して算出。
注3:(当月の解約により減少したMRR)÷(前月末のMRR)を単月Churn rateとし、その直近12ヵ月平均を算出したもの
注4:Average Revenue Per Userの略称。(月末時点のMRR)÷(利用中企業数)

上図から、「HRMOS」事業のARRは、2020年7月期3Q末時点で10億円、2021年7月期2Q末時点では、11億円を超えており、堅実な成長を見せている。今後、「ビズリーチ」に並ぶ同社の収益源となることが期待されている。

利用企業数は2020年7月期Q4で一時落ち込みを見せたものの、その後、順調な増加を取り戻しており、今後もサービスの成長が見込まれている。

Churn rateは、(当月の解約により減少したMRR)÷(前月末のMRR)であるため、数値は低いほど好ましいとされている。2020年4月から5月にかけて実施された、第1回の緊急事態宣言を受け、2021年7月期Q2のChurn rateは相対的に高い水準にあると判断されている。緊急事態宣言直後の2020年6月以降、単月Churn rateは上昇しているため、今後の改善策が講じられている。

ネット転職情報サービスとHR Techクラウドサービス、ともに市場規模が拡大

同社の主力事業である人材紹介業およびネット転職情報サービスの国内市場規模は、それぞれ年々拡大している。矢野経済研究所が発表した「人材ビジネスの現状と展望2020年版」によると、両者の合算値ベースで、2015年度の3,028億円(人材紹介業2,100億円、ネット転職情報サービス928億円)から、2019年度には4,395億円(人材紹介業3,080億円、ネット転職情報サービス1,315億円、合算値につき2015-2019年度年平均成長率9.8%)まで成長。雇用の流動化により、ホワイトカラーの転職活動が中長期的にさらに活発化していくポテンシャルが存在していると考えられる。

また、働き方の変化により、企業の人材活用・人材戦略を支えるHCM(注5)のニーズは高まっている。シード・プランニングが発表した「HRテクノロジーの現状と将来展望2020年版」によると、「HRMOS」が位置付けられているHR Techクラウドサービスの国内市場は、1,199億円(年成長率:+29.6%)と想定され、市場における「HRMOS」の拡大余地があるとともに、市場全体の成長可能性に期待が寄せられている。

注5:Human Capital Management、従業員を重要な経営資源の1つとし、企業内の人材情報を統合的に管理し、生産性向上を目指す経営手法のこと

HR Tech領域でのさらなる成長、新規事業の継続的な創出、有望企業への投資を戦略に掲げる

今後は、主力サービス「ビズリーチ」を含むHR Tech領域でのさらなる事業成長とともに、社会的課題を捉えた新規事業の継続的な創出、国内外の有望な企業への投資とノウハウ提供を通じて、事業領域拡大と企業価値の向上を図っていく方針だ。

また、同社は事業規模と収益性を測る指標として、売上高と営業利益を主要指標としている。サービス別では、「ビズリーチ」においては、累計導入企業数およびスカウト可能会員数の拡大を重視。「HRMOS」においては、サブスクリプション型のサービス提供をしているため、利用中企業数の拡大とChurn rateを低く抑える事を重視している。

「ビズリーチ」のさらなる拡大、収益源の多様化、組織強化が今後のテーマ

① 採用市場における「ダイレクトリクルーティング」の浸透
同社の中核をなすHR関連サービスにおいて、「ダイレクトリクルーティング」の浸透が大きな成長ドライバーだ。一方で、国内すべての正社員転職件数を潜在的な市場とみなした場合、同社サービスを経由した転職件数が占める比率はまだ低い水準にあると考えられている。サービスの認知度の高まりを活用し、同社サービスを経由した転職件数の更なる増加に繋げることが今後のテーマとなる。

② 収益源の多様化
売上については、ほとんどの事業において順調に成長している一方、営業利益については、ビズリーチ事業への依存度が高い状態にある。ビズリーチ事業に続く収益の柱を確立することが重要だと考えられている。

③ 優秀な人材の確保
今後も事業領域を広げつつ、各事業の成長を目指していく上で、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の採用を継続していくことが必要だと考えられている。あらゆる選択肢の中から主体的に最善手を選びながら「ダイレクトリクルーティング」を実践、加速させていく方針だ。

④ 情報管理体制の強化
同社事業においては、顧客情報、個人情報を数多く取り扱っている。引き続き、関連社内システムの一層のセキュリティ強化、社内研修の更なる整備などを図り、情報管理のための管理体制を拡充していく必要があると考えられている。

⑤ 内部管理体制の強化
同社グループは、急速に事業が成長しており、経営上のリスクを適切に把握、コントロールすることが重要だと考えられている。事業運営上のリスク管理、定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化、監査等委員会による監査などを基軸とする、コーポレート・ガバナンス機能の充実を図る方針だ。

ビジョナルの累計資金調達額は9億2,000万円

ビジョナルは、これまで4回の資金調達を実施し、累計で9億2,090万円を調達していることがわかる。

出資元には、YJキャピタル三井住友トラスト・インベストメントグロービス・キャピタル・パートナーズセールスフォース・ドットコムが参画している。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は2021年4月22日を予定しており、上場する市場は東証マザーズとしている。また、野村証券が主幹事を務める。

今回の想定価格は、4,355円である。調達金額(吸収金額)は594.16億円(想定発行価格:4,355円×OA含む公募・売出し株式数:13,643,300株)、想定時価総額は、1,457.33億円(想定発行価格:4,355円×上場時発行済株式総数:33,463,400株)となっている。

筆頭株主は同社代表取締役社長の南壮一郎氏であり、42.47%の株式を保有する。次いで、ジャフコグループが運営するジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合が11.78%、同社社外取締役であり、USEN-NEXT HOLDINGSの取締役副社長COOを務める島田亨氏が5.79%を持つ。

そのほか、YJキャピタルが運営するYJ2号投資事業組合、同社取締役CTOの竹内真氏が名を連ねる。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書の部を参考

 

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