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2017年VC組成ファンドからみる、資金調達環境の変遷

株式会社FOLIOやJapan Taxi株式会社が70億円以上もの調達を実施しており、2018年に入っても、引き続き日本のスタートアップは積極的に資金調達を行っている。

順調に伸びつつある資金調達の総額であるが、スタートアップの活躍はもちろんのこと、それを影で支えているのがベンチャーキャピタル(以下、VC)だ。スタートアップに関する記事を目にする事はよくあるが、VCに着目したものは少ない。しかし、VCはスタートアップが急成長する上で、欠かせない存在としてエコシステムを形作っているのは確かだ。

今回の記事では、影の立役者ともいえるVCが2017年にどのようなファンドをどれほど組成したのかを分析していく。

2017年に組成されたファンド属性

全体として、2017年に組成されたファンドは合計65件で、金額の総計は2215億円を記録。(Startup DB調査)ファンド組成件数としては金融機関系VCが多いものの、金額においては独立系VCが最も多いという結果になった。

図1

VC属性別ファンド組成件数

金額比較でみると、独立系VC、金融機関系VC、事業会社VCが非常にバランスよく分布している事から、リーマンショック以前に金融機関系VCが過半数を超えていたのと比較すると、日本のVCマーケットが成長し、多様化しているのが分かる。

図2

VC属性別金額比較

 

そして、図3はステージごとの金額割合である。(公表しているもののみ計算)

図3

投資ステージ別VCファンド規模

シード、アーリーに対する投資額が過半数を超えている事が読み取れる。
多くのスタートアップにとって初期フェーズは、売上がまだ十分にたっていないため、資金面で苦しい時間を過ごさなければならなかった。

VCにとっても、シードやアーリーはまだまだ不確定要素が多く、成功するかが分からないために投資するのが難しい。しかし、上図はそんな状況が変わりつつあることを示している。

100億円以上の規模をもつ注目ファンド

次に、2017年に組成されたファンドの中でも規模が大きい上位8つの注目ファンドを紹介する。
※()内はファンド規模

・Eight Roads Ventures Japan
 ーJapan Ventures II L.P.ー(250億円)
旧フィデリティ・グロース・パートナーズ・ジャパン。世界的にも有名な資産運用会社であるフィデリティの自己資金を活用したVC。フィデリティの巨大な運用額(2018年時点で260兆円)をもとに、2017年で最も大きなファンドを組成している。Ventures Ⅱ(2号ファンド)では再生医療、バイオ、ブロックチェーンなど技術に強い企業への投資をする予定で、事業拡大に力をいれるミドルステージを中心に投資を行う。最近では、FLOSFIAやCandeeへの出資を実施。IPO実績としてはメタップスがある。
・株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ
 ードコモ・イノベーションファンド2号投資事業有限責任組合ー (150億円)
大手キャリアNTTドコモのコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)として設立された子会社で、2017年に組成された日本のファンドとしては最大規模を誇る。情報通信関連分野全般に投資を行っており、主にアーリーからミドルステージを対象としている。親会社との事業シナジーがあるかどうかも投資判断規準になっている。IPO実績としては、Fringe81、すららネット、gumiなど。
・ニッセイ・キャピタル株式会社
 ーニッセイ・キャピタル8号投資事業有限責任組合ー (100億円)
大手保険会社の一つである日本生命のCVCとして設立された子会社。積極的に投資を行っており、設立以来、累計1000を超える企業に投資を実施している。そして、その内251社が上場。全領域、ステージが対象。IPO企業では、ULURUやAiming、sMedioなど。
・三菱UFJキャピタル株式会社
 ー三菱UFJライフサイエンス1号投資事業有限責任組合ー (100億円)
メガバンクとして知られる三菱UFJ銀行グループのCVC。投資組合の名称にあるように、医薬品や医療機器などの医療領域に注力をしている。目的がアカデミアが有するシーズを実用化実現につなげる事であるため、今後アカデミア方面への投資も進めていくと考えられる。2018年4月時点での投資実績は、Veritas In Silico、ひむかAMファーマなど。
・三菱UFJキャピタル株式会社
ー三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合ー (100億円)
メガバンクとしての安定した資金をもとに投資を着実に積み上げているCVC。すでに6号目の投資組合であり、過去にも同規模のファンドを運営している。IPOの実績としては、マネーフォワードやユーザベース、Aimingなど。
・インキュベイトファンド株式会社
 ーインキュベイトファンド4号投資事業有限責任組合ー (100億円)
独立系として最も有名なVCの一つで、シード期のスタートアップに対して投資を行っている。シード期の投資は不確定要素が非常に多いため、ミドル、レーター期に比べ非常に難しいにも関わらず、1999年の設立以来、着実に実績を積み上げており、総額170億円もの資金を120社以上のスタートアップに対する投資実績をもつ。また、アクセラレータープログラムとしてインキュベイトキャンプなども主催。IPO実績としては、GameWith、みんなのウェディングなど。
・B Dash Ventures株式会社
 ーB Dash Fund 3号有限責任投資事業組合ー (100億円)
独立系VCで、シード、アーリーを中心に投資を行った20億円規模の1号ファンドにより実績を残し、規模を拡大している。今回の3号ファンドは100億円規模であり、エンタメ、メディア、広告、FinTech領域に投資を行っている。IPO実績としては、gumi、マネーフォワードなど。
・B Dash Ventures株式会社
ーグローバル ICO ファンドー (100億円)
B Dash VenturesのICOに特化したファンドで、従来のエクイティ型の投資(注1)ではなく、トークン型の投資(注2)を行う。ICOを実施する注目スタートアップに対して国内外問わず投資を行う考えであり、投資したトークンが取引所に上場した段階で、売却し利益を得る。ファンドには、ICOで100億円以上調達した実績をもつ、QUIONEが参画しているため、「登録仮想通貨交換業者がサポートする日本初のグローバルICOファンド」となっている。

注1:企業の株と資金の交換という形で投資する手法。
注2:企業の発行する独自トークンを購入するという形で投資する手法。

ICOファンドという新しいファンドの形

2017年VCマーケットにおいて最も大きな動きにあたるのが、100億円規模のICOファンドが独立系VCのB Dash Venturesから組成されたことだ。

株式を用いず、トークンを用いて資金を調達するICOは新しい資金調達の形として注目を集めている。

ホワイトペーパーと呼ばれる事業計画書を公開するだけで、グローバルな資金調達ができるものの、ICOは詐欺として実施される事も多く、信用がないと批判する声も多い。実際にアメリカのICOに関するアドバイザリーを行うSatis Groupによると、ICOの80%以上が詐欺であったと結論づけるレポートも出している。

しかし、B Dash Venturesという実績をもつVCがICOファンドを組成する事によってICO自体に対する信頼度が高まるのではないだろうか。あるいは、B Dash Venturesが投資した企業は信用できるから、との理由でICOを通じて投資する人が増えるかもしれない。投資額が増え調達できる金額が大きくなれば、挑戦をするスタートアップも増えるだろう。

この筋書きほど上手くはいかないかもしれないが、ICOをより良くするきっかけになる動きであると編集部は考えている。VCにとっても脅威といえるICOを前向きとらえ、ICOに特化した投資ファンドを設立した動きは、時代の変わり目としてとらえられる日がくるかもしれない。

資金調達環境の変遷

2017年のファンド組成から読み取れる事は、資金調達の環境が変化しつつあるという事である。

スタートアップにとって資金調達が難しかった、シード、アーリー期に注力をする多くのファンドが設立されつつある。さらには、短期間で簡単にグローバルで資金を調達する事ができるICOという調達方法も活性化している。起業家にとって、苦しい時期により簡単に資金調達ができるようになったといえるのではないだろうか。

ユニコーンとして認知されている企業は世界で200社以上存在している中で、日本経済新聞社によると、日本発のユニコーン企業はメルカリとプリファードネットワークスの2社だけである。世界で戦える企業を新しく生み出せていない日本にとって、この流れは非常に好ましいといえるだろう。

今後も世界規準のスタートアップを支援するVCマーケットの成長に期待したい。

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