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【東京大学との共同研究論文】2モードグラフによるスタートアップ・エコシステムの資金調達構造分析

国立大学法人東京大学(東京都文京区、総長:五神真)空間情報科学研究センター(柴崎研究室)に対し、STARTUP DB(スタートアップデーターベース)を用い、「スタートアップ・エコシステムの構造分析」に関する共同研究に2019年9月より取り組んでまいりました。本研究結果を、2020年6月9日から12日まで行われていた「2020年度人工知能学会全国大会(第34回)」にて、発表いたしましたので報告いたします。研究結果からは、前の世代の成功者が次世代のスタートアップに対して投資を行い、成長支援を行っていることが明らかになりました。

研究の背景(1)

研究の背景(2)

研究の背景(3)

・政府の「成長戦略(2019年6月21日閣議決定)」の中で、「グローバルに活躍するスタートアップ(※1)の創出・育成」が重要政策として打ち出され、数値目標として 「ユニコーン(※2)企業数を2023年には20社に増やす」が設定された。

・ユニコーン育成の課題としては、「リスクマネーの供給」が挙げられている
(※3)。

・ 一方で、足元ではユニコーンの数は、2019年2月の2社(1社は2019年に上場)から2020年2月には7社に増加。実質的に1年で6社のユニコーン企業が誕生、エコシステム(※4)の構造が従来と比べて変化している可能性がある。

※1:スタートアップとは革新的アイディアや技術で短期間で急成長する企業(例:メルカリなど)、一般的なベンチャー企業とは区別される。
※2:ユニコーンとは株式時価総額は1,000憶円以上の未上場企業のこと。時価総額=発行済株式数×株式の時価評価額
※3:『成長戦略に「ユニコーン」創出目標が掲げられる』ニッセイ基礎研、2018年6月14日
※4:エコシステムとは、スタートアップを成長させるためのヒト・モノ・カネの生態系のことをいう

研究の目的

・エコシステム強化政策が打ち出された一方で、資金調達を中心としたエコシステム構造が、現状でどのようになっているかは、明確になってはいない(先行研究は限られている)。

・日本のエコシステムの課題としては、「成功者が次に投資するエコシステムの不足」⇒本研究の検証対象、「投資家が東京に偏在」、「世界のエコシステム間での競争が激化」、「大学発ベンチャーの低迷」などがあげられている(※5)。この部分をネットワーク分析によって検証する。

※5:第4次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会資料、経済産業省

研究のオリジナリティ

・新規性:2004年以降、日本のスタートアップエコシステムを扱った研究は限られている。リーマンショック以降の構造変化を反映したデータを用いた研究も限られている。

・独自性(1)既存研究では、「テクノロジー(論文引用、共同研究、技術キーワード解析)×エコシステム」の研究が多いが、「ファイナンス×エコシステム」の研究はあまり行われていない。(2)また、取得したデータは11種類の投資家属性データ付きであるため、どの属性の投資家(コミュニティ)がエコシステムに影響が大きいかの検証も行うことができる。

研究方法

・手順1:スタートアップと投資家をノードとして、投資をエッ ジとするネットワークデータ構築(2012年1月~2019年7月)。
・手順2:スタートアップと投資家の2-modeグラフを作成
・手順3:2-modeグラフを投資家の1-modeグラフに投影
・手順4:次数倍率( 2-mode に対する1-mode の倍率)によって投資家コミュニティのエコシステムに対する影響度を評価 ⇒前の世代の成功者が次の世代に投資しているかの検証 


2-modeグラフの1-modeグラフへの投影


分析結果:投資家属性の詳細分析


まとめ

・従来課題とされていた「成功者が次に投資するエコシステムの不足」という部分については、エコシステムが形成され、改善している状況が確認できた。すなわち2000年前後に創業した起業家が個人・ファンド経由・自分が創業した企業経由で資金供給を行っている(全体の出資件数の2割)。

・次数倍率の評価結果からエコシステムにおいて成長企業への支援の割合が高かった投資家属性は、1位:エンジェル投資家、2位:事業会社(40%がスタートアップ)、3位:金融機関の順番となった。

・課題は、エコシステム(投資家側)がインターネット、通信、メディア関連企業に偏っていて、バイオ、製造業関連のエコシステム(専門投資家)が少ないこと、外国企業の投資(主に大型資金)が少ないことをあげる。

今後の課題

・時系列でのネットワーク分析:2014年~2019年までは年々スタートアップの投資規模が拡大しており、投資家コミュニティのネットワークも時系列で成長している可能性がある。

・新しいセクター分類によるコミュニティ分析:スタートアップは、新しいテクノロジーをベースとする企業が多く既存の産業分類は当てはまらない。そこで、各社の技術キーワードを基にしたクラスタリングを行い、新しく分類されたセクターによってネットワーク分析を行う。また、セクターによって投資期間・リスクレベルが異なり、サポートする投資家属性も違っている。

・シンジケーションコミュニティ同士の繋がりの構造分析:「弱い紐帯(コミュニティ同士のつながり)」、「構造の空隙(拘束性指標)」など。

研究者:穴井宏和(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、柴崎亮介(東京大学 空間情報科学研究センター 教授)

 

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