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【東京大学との共同研究論文】東京23区におけるスタートアップ・エコシステム集積の研究 -2変量ローカルモラン統計量を用いた共集積の分析

2020-12-22
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部

国立大学法人東京大学(東京都文京区、総長:五神真)空間情報科学研究センター(柴崎研究室)に対し、STARTUP DB(スタートアップデーターベース)を用い、「スタートアップ・エコシステムの構造分析」に関する共同研究に2019年9月より取り組んでまいりました。本研究結果を、2020年11月8日に行われた「2020年度都市計画学会 全国大会」にて、発表いたしましたので報告いたします。研究結果からは、スタートアップとその支援機関(VC、インキュベーターなど)によって構成されているエコシステムは、東京都心の渋谷区・港区・千代田区・中央区に集中して立地する傾向が明らかになりました。

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研究の背景(1)

研究の背景(2)

研究の背景(3)

・経済危機の後は、優秀な人材が流動化し易いので、成長企業が創業されるケースが多い。例えば、2008年のリーマンショックの後には、Uber、Airbnb、日本ではユーザベース(News Picks)、コロプラWantedlyなどが創業している。

・リーマンショックの後、新たな産業を興し、雇用や経済を回復させるためにニューヨーク、ロンドンではスタートアップ支援策を強化した。結果的にこの2都市は世界有数のスタートアップハブへと成長し、エコシステムランキングが上昇した(下図)。

研究のオリジナリティ

・エコシステムは、スタートアップとそれをサポートする支援機関によって構成されている。支援機関は、資金提供ばかりではなく、経営ノウハウ、客先の紹介、人材紹介など総合的なサポートを行う。

・コミュニティの構成メンバー、地理的距離が情報のやり取り、資金提供、営業取引に影響する。

・新規性:リーマンショック以降、スタートアップの立地を扱った研究は限られている。また、ビル単位での集積状況等を研究した例も少ない。

・独自性:拡張2変量ローカルモランによってエコシステムのコミュニティの共集積の状況を空間的に可視化した。また、エコシステムが不足しているエリアの抽出も行った。企業の立地を可視化した研究は多いが、エコシステムの構造を可視化した研究は少ない。

使用データの特徴

・急成長企業(先端技術・デジタルテクノロジーをベース)に特化したデータベースは、STARTUP DBなどの一部のリソースに限られており、希少性が高い。

・収録社数は約1万社以上(上場予備軍の成長企業、一般的な中小企業は含まない)。上場企業は3,687社(2019年9月末)、年間の上場企業数が約100社であるため、上場予備軍企業としては十分なカバー率。

・企業の立地データ以外に出資データ、出資者属性、企業の業種分類のデータも含むのが特徴。

研究方法

モラン統計量

データの特徴分析①

データの特徴分析②

セクター別立地

データの特徴分析③

結論とまとめ:集積の特徴と課題

スタートアップは都心のごく限られたエリアに立地:都心エリアに強い集積(グローバルモランIは0.6)。特に渋谷・赤坂・六本木では、ビル単位で高度に集積(ロンドン、ボストンと似た傾向)。

支援拠点(投資家、大学、インキュベーターなど)の立地は分散:渋谷・赤坂・大手町にホットスポットがみられるが、全体としてはよりランダムに立地、スタートアップに比べ集積度は低い(グローバルモランIは0.3)。新興ファンド、信金系ファンドなどが都心周辺に立地、全体のバラツキ度合いを高めている。東大周辺にも集積はあるものの、必ずしも高いわけではない。

エコシステム・コミュニティ(スタートアップと支援拠点の共集積)の立地もやや分散:支援拠点の立地がバラついている影響で、小規模なエコシステム・クラスター(集積)がランダムに発生。効率的な集積とはなっていない可能性がある。

見えてきた課題と支援策、ポテンシャルエリアは?:スタートアップの集積があり、ホットスポットになっているにも関わらず、支援機関が少ないのでエコシステムのホットスポットになっていないエリアがある。このようなエリアに対しては公的支援拠点、民間の支援拠点を設置することでよりコミュニティが強化され、スタートアップの成長が促進される可能性が考えられる。例えば、五反田、新宿(東新宿)、千駄ヶ谷など。

次の課題:セクター別での立地特性分析,ビル単位での集積特性分析,立地要因の特定

研究者:穴井宏和(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
    柴崎亮介(東京大学 空間情報科学研究センター 教授)

 

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