コラム

RettyのIPOを分析。実名型グルメプラットフォームを運営

2020-10-06
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部
ユーザーの口コミをはじめ、全国の飲食店情報を蓄積したグルメプラットフォーム「Retty」を運営する、Retty株式会社(以下、Retty)が東京証券取引所マザーズに上場承認を受けた。承認日は2020年9月28日で、同年10月30日に上場を果たす。 Rettyは、「食を通じて世界中の人々をHappyに。」をビジョンに掲げ、各ユーザーの好みに合わせて個別最適化された飲食店情報を提供することを目指している。2010年11月の設立からおよそ10年での上場となる。 本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。 売上高の着実な成長に伴い、経常利益も黒字化

ユーザーの口コミをはじめ、全国の飲食店情報を蓄積したグルメプラットフォーム「Retty」を運営する、Retty株式会社(以下、Retty)が東京証券取引所マザーズに上場承認を受けた。承認日は2020年9月28日で、同年10月30日に上場を果たす。Rettyは、「食を通じて世界中の人々をHappyに。」をビジョンに掲げ、各ユーザーの好みに合わせて個別最適化された飲食店情報を提供することを目指している。2010年11月の設立からおよそ10年での上場となる。本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。[toc]

売上高の着実な成長に伴い、経常利益も黒字化

2019年度通期の売上高は、2015年度と比べて約17倍に成長しており、経常利益の黒字化も達成している。なお、2020年度の指標は、Rettyが発表した業績予想に基づく予想値である。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、売上高は前年度を下回り、経常利益は赤字が予想されている。 「Retty」事業の収益源は「FRM」と「広告コンテンツ」 同社の事業は、実名型グルメプラットフォーム「Retty」運営事業の単一セグメントであるが、「Fun Relationship Management(FRM)」と「広告コンテンツ」のふたつのサービスを展開している。 (1)FRM 「Retty」を通じたオンラインでの販促を提供し、飲食店から毎月定額のサービス利用料収入を得るサブスクリプション型のサービス。契約した飲食店(有料店舗)に対して、広告掲載のみでなく、検索結果の上位に表示したり、顧客管理システムを活用した双方向コミュニケーションを実現したりと、二次集客・三次集客につながる販促ツールを提供することで、飲食業界の課題である低い利益率や高い廃業率などの改善に貢献する。 (2)広告コンテンツ 広告コンテンツは、①「Retty」を活用した広告ソリューション、②「Retty」を運営し、拡大させてきた中で蓄積してきたコンテンツを活用したコンテンツソリューションのふたつからなっている。 ①広告ソリューション ブランド認知向上などのプロモーションを行いたい広告主のタイアップ広告を、「Retty」を積極的に利用するユーザーに対して掲載するほか、「Retty」上の広告枠においてテクノロジーを駆使することで、効率的な運用を追求している。 ②コンテンツソリューション 同社には、79万店(2020年8月時点)に及ぶ店舗データや写真データ、実名口コミデータ、ユーザーログなどのコンテンツが蓄積されている。これらを「Retty」のデータベースである「Food Data Platform」としてクライアントに継続的に提供している。

2019年度通期の売上高は、2015年度と比べて約17倍に成長しており、経常利益の黒字化も達成している。なお、2020年度の指標は、Rettyが発表した業績予想に基づく予想値である。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、売上高は前年度を下回り、経常利益は赤字が予想されている。

「Retty」事業の収益源は「FRM」と「広告コンテンツ」

同社の事業は、実名型グルメプラットフォーム「Retty」運営事業の単一セグメントであるが、「Fun Relationship Management(以下、FRM)」と「広告コンテンツ」のふたつのサービスを展開している。

(1)FRM「Retty」を通じたオンラインでの販促を提供し、飲食店から毎月定額のサービス利用料収入を得るサブスクリプション型のサービス。契約した飲食店(有料店舗)に対して、広告掲載のみでなく、検索結果の上位に表示したり、顧客管理システムを活用した双方向コミュニケーションを実現したりと、二次集客・三次集客につながる販促ツールを提供することで、飲食業界の課題である低い利益率や高い廃業率などの改善に貢献する。

(2)広告コンテンツ広告コンテンツは、①広告ソリューション、②コンテンツソリューションのふたつからなっている。①広告ソリューションブランド認知向上などのプロモーションを行いたい広告主のタイアップ広告を、「Retty」を積極的に利用するユーザーに対して掲載するほか、「Retty」上の広告枠においてテクノロジーを駆使することで、効率的な運用を追求している。②コンテンツソリューション「Retty」を運営し、拡大させてきた中で蓄積してきたコンテンツを活用。同社には、79万店(2020年8月時点)に及ぶ店舗データや写真データ、実名口コミデータ、ユーザーログなどのコンテンツが蓄積されている。これらを「Retty」のデータベースである「Food Data Platform」としてクライアントに継続的に提供している。

2019年度通期の売上高は、2015年度と比べて約17倍に成長しており、経常利益の黒字化も達成している。なお、2020年度の指標は、Rettyが発表した業績予想に基づく予想値である。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、売上高は前年度を下回り、経常利益は赤字が予想されている。 「Retty」事業の収益源は「FRM」と「広告コンテンツ」 同社の事業は、実名型グルメプラットフォーム「Retty」運営事業の単一セグメントであるが、「Fun Relationship Management(FRM)」と「広告コンテンツ」のふたつのサービスを展開している。 (1)FRM 「Retty」を通じたオンラインでの販促を提供し、飲食店から毎月定額のサービス利用料収入を得るサブスクリプション型のサービス。契約した飲食店(有料店舗)に対して、広告掲載のみでなく、検索結果の上位に表示したり、顧客管理システムを活用した双方向コミュニケーションを実現したりと、二次集客・三次集客につながる販促ツールを提供することで、飲食業界の課題である低い利益率や高い廃業率などの改善に貢献する。 (2)広告コンテンツ 広告コンテンツは、①「Retty」を活用した広告ソリューション、②「Retty」を運営し、拡大させてきた中で蓄積してきたコンテンツを活用したコンテンツソリューションのふたつからなっている。 ①広告ソリューション ブランド認知向上などのプロモーションを行いたい広告主のタイアップ広告を、「Retty」を積極的に利用するユーザーに対して掲載するほか、「Retty」上の広告枠においてテクノロジーを駆使することで、効率的な運用を追求している。 ②コンテンツソリューション 同社には、79万店(2020年8月時点)に及ぶ店舗データや写真データ、実名口コミデータ、ユーザーログなどのコンテンツが蓄積されている。これらを「Retty」のデータベースである「Food Data Platform」としてクライアントに継続的に提供している。

FRMの売上が全体の約6割を占める

カテゴリー別売上高に注目すると、2017年9月期にFRMの割合が、広告コンテンツを上回ったことがわかる。その後も、FRMが全体の60%程度の割合を維持し続けている。 国内における飲食店市場は、一般社団法人 日本フードサービス協会「平成30年外食産業市場規模推計について」によると、19兆6,699億円の市場規模と推計されている。飲食店における販促市場は、飲食市場全体の約3%程度と言われており、約6,000億円程度がFRMの市場規模と考えられる。 今後もFRMを中核にしつつ、食データを活用したコンテンツソリューションの大幅な成長や飲食店の課題を解決する新たな事業領域の展開、海外への事業展開も目指していく。 上場後に掲げる5つの戦略とは? 同社は上場後の中期的な経営戦略として以下の5つを掲げている。 ①実名型グルメプラットフォーム「Retty」のさらなる成長 ②FRMにおける有料店舗数増加とARPUの向上 ③広告コンテンツの売上拡大 ④新規事業創出及び海外展開の促進 ⑤高い利益成長を可能とする財務・収益モデルの構築 同社は経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、実名型グルメプラットフォーム「Retty」の月間利用者数を重要指標としている。今後は、販売代理店の拡大や人材育成などの販売力の強化を継続的に行うことで、サービス向上を目指す方針だ。 有料店舗数に関しては、2020年には新型コロナウイルスの影響で減少しているが、緊急事態宣言の解除後、2020年7月から増加傾向に転じており、2020年8月末時点では有料店舗数は9,678店まで増加している。 また、「Retty」の月間利用者数に関しては、2020年5月は新型コロナウイルスの影響で月間利用者数が減少しているが、緊急事態宣言が発令されて最も影響が大きかった4月の2,445万人から増加傾向に転じ、2020年8月末時点では4,398万人と前年同月比で103.9%まで増加している。 サービスのさらなる普及と運営・開発体制の強化が、今後の成長の鍵 同社は事業上の対処するべき課題として、以下の4つをあげている。 ①利用者数・投稿数の増加、ユーザビリティの向上 ②販売代理店の営業体制の拡充 ③組織体制の整備 ④技術力の強化について 今後も成長を維持していくためには、「Retty」の知名度向上と新規ユーザーの獲得、登録店舗数の拡大が必要不可欠である。プロモーション活動の実施や開発による機能改良に取り組む方針だ。 また、直結的に売上に繋がる有料店舗数をメインに、「Retty」への登録店舗数を拡大させていくことも重要である。販売代理店の営業体制拡充や教育など、更なる販売力の向上を図っていく予定だ。 運営体制の面では、優秀な人材を採用・育成し、組織体制を整備していくことが、今後ますます重要になっていくと思われる。その上で、サービスの拡充・強化に向けたビックデータの分析・活用を加速させていくために、優秀な技術者を採用・育成するとともに、先端技術への投資や、技術志向な風土の維持などを通じて、技術力の向上に取り組むことも今後のテーマになるだろう。 VCを中心に合計8回の資金調達を行い、累計調達額は26億500万円

カテゴリー別売上高に注目すると、2017年9月期にFRMの割合が、広告コンテンツを上回ったことがわかる。その後も、FRMが全体の60%程度の割合を維持し続けている。国内における飲食店市場は、一般社団法人 日本フードサービス協会「平成30年外食産業市場規模推計について」によると、19兆6,699億円の市場規模と推計されている。飲食店における販促市場は、飲食市場全体の約3%程度と言われており、約6,000億円程度がFRMの市場規模と考えられる。今後もFRMを中核にしつつ、食データを活用したコンテンツソリューションの大幅な成長や飲食店の課題を解決する新たな事業領域の展開、海外への事業展開も目指していく。

上場後に掲げる5つの戦略とは?

同社は上場後の中期的な経営戦略として以下の5つを掲げている。

①実名型グルメプラットフォーム「Retty」のさらなる成長②FRMにおける有料店舗数増加とARPUの向上③広告コンテンツの売上拡大④新規事業創出及び海外展開の促進⑤高い利益成長を可能とする財務・収益モデルの構築

同社は経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、実名型グルメプラットフォーム「Retty」の月間利用者数を重要指標としている。今後は、販売代理店の拡大や人材育成などの販売力の強化を継続的に行うことで、サービス向上を目指す方針だ。有料店舗数に関しては、2020年には新型コロナウイルスの影響で減少しているが、緊急事態宣言の解除後、2020年7月から増加傾向に転じており、2020年8月末時点では有料店舗数は9,678店まで増加している。また、「Retty」の月間利用者数に関しては、2020年5月は新型コロナウイルスの影響で月間利用者数が減少しているが、緊急事態宣言が発令されて最も影響が大きかった4月の2,445万人から増加傾向に転じ、2020年8月末時点では4,398万人と前年同月比で103.9%まで増加している。さらなるサービス普及と運営・開発体制の強化が、今後の成長の鍵同社は事業上の対処するべき課題として、以下の4つをあげている。

①利用者数・投稿数の増加、ユーザビリティの向上②販売代理店の営業体制の拡充③組織体制の整備④技術力の強化

今後も成長を維持していくためには、「Retty」の知名度向上と新規ユーザーの獲得、登録店舗数の拡大が必要不可欠である。プロモーション活動の実施や開発による機能改良に取り組む方針だ。また、直結的に売上に繋がる有料店舗数をメインに、「Retty」への登録店舗数を拡大させていくことも重要である。販売代理店の営業体制拡充や教育など、更なる販売力の向上を図っていく予定だ。運営体制の面では、優秀な人材を採用・育成し、組織体制を整備していくことが、今後ますます重要になっていくと思われる。その上で、サービスの拡充・強化に向けたビックデータの分析・活用を加速させていくために、優秀な技術者を採用・育成するとともに、先端技術への投資や、技術志向な風土の維持などを通じて、技術力の向上に取り組むことも今後のテーマになるだろう。

VCを中心に合計8回の資金調達、累計調達額は26億500万円

VCを中心に合計8回の資金調達を行い、累計調達額は26億500万円 表から、過去8回の調達で、累計で26億500万円の資金調達をしていることがわかる。出資元の種類ではVCが多く、サーバーエージェント・キャピタル、STRIVE、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、Eight Roads Venturesなど、複数回にわたって出資している投資家も見受けられる。

表から、過去8回の調達で、累計で26億500万円の資金調達をしていることがわかる。出資元の種類ではVCが多く、サーバーエージェント・キャピタルSTRIVE三菱UFJキャピタルみずほキャピタルEight Roads Venturesなど、複数回にわたって出資している投資家も見受けられる。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は10月30日を予定しており、上場する市場はマザーズとしている。今回の想定価格は、1,150円である。調達金額(吸収金額)は63.72億円(想定発行価格:1,150円×OA含む公募・売出し株式数:5,541,300株)、想定時価総額は124.34億円(想定発行価格:1,150円×上場時発行済株式総数:10,812,504株)となっている。

公開価格:1,180円初値:1,611円(公募価格比+431円 +365.0%)時価総額初値:174.18億円
※追記:2020年10月30日(上場日)

筆頭株主は、同社代表取締役社長である武田和也氏であり、29.4%を保有する。次いで、YJキャピタルが運営するYJ2号投資事業組合が13.12%、Eight Roads Venturesが運営するJAPAN VENTURES I L.P. が10.32%、グリーベンチャーズが運営するAT-Ⅰ投資事業有限責任組合が7.19%、WiLが運営するWiL Fund I, L.P.が6.22%を保有している。 以下、サーバーエージェント・キャピタル、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、SBIインベストメント、同社取締役で共同創業者である長束欽也氏が名を連ねる。

筆頭株主は、同社代表取締役社長である武田和也氏であり、29.4%を保有する。次いで、YJキャピタルが運営するYJ2号投資事業組合が13.12%、Eight Roads Venturesが運営するJAPAN VENTURES I L.P. が10.32%、グリーベンチャーズが運営するAT-Ⅰ投資事業有限責任組合が7.19%、WiLが運営するWiL Fund I, L.P.が6.22%を保有している。以下、サーバーエージェント・キャピタル伊藤忠テクノロジーベンチャーズSBIインベストメント、同社取締役で共同創業者である長束欽也氏が名を連ねる。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

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