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半導体レーザー事業を展開する、QDレーザのIPOサマリー

網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA Display」シリーズや半導体レーザ・エピタキシャルウェハを手掛ける株式会社QDレーザ(以下、QDレーザ)が東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2020年12月28日で、2021年2月5日に上場を果たす。

QDレーザは「レーザの力で、“できない”を“できる”に変える。」というミッションを掲げ、半導体レーザの開発・製造・販売を主軸とした事業を展開する。2006年4月の創業からおよそ15年での上場となる。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

売上高は堅調に推移、営業損失は縮小傾向へ

上図は過去5年間の売上高と営業利益の推移である。2020年3月期の売上高は2016年3月期から23%増加した。その間に売上高の上下はあるもの、着実に成長していることがわかる。2019年3月期から2020年3月期にかけての売上高の減少は、米中貿易摩擦の影響を受けて北米を中心に精密加工用1064nm帯レーザの受注数低下、センサ用緑・黄緑・橙レーザにおける主要顧客の在庫調整に伴った一時的な受注数低下によるものである。

また、2019年3月期、2020年3月期では大きな営業損失を計上していたものの、2020年9月期時点において営業損失は3億9,233万円に縮小している。

主力のレーザデバイス事業と投資を進めるレーザアイウェア事業

同社グループには、非連結子会社のQD Laser Deutschland GmbH(ドイツ)がある。レーザ(注1)技術を用いた製品の開発・製造・販売を行っており、レーザデバイス事業とレーザアイウェア事業を展開している。QD Laser Deutschland GmbHの非連結子会社化は、レーザアイウェア事業の欧州における臨床検査試験推進を目的としている。

同社のコア技術として、下記6点が挙げられる。 

半導体結晶成長:半導体基板の上に半導体材料を作製することを半導体結晶成長という。 
レーザ設計:所望の機能を満たす半導体レーザを作製するために、必要なパラメータ(例えば半導体レーザの長さ)を決定すること。 
小型モジュール:半導体レーザは半導体レーザチップをパッケージの中に入れるが、そのパッケージのことをモジュールと言い、同社の532nmや561nmレーザのモジュールサイズは、他社に比べて小さいため、小型モジュールとしている。 
VISIRIUM Technology:メガネ型フレームに内蔵された超小型レーザプロジェクタから、網膜に直接画像を投影する技術。 
回折格子:半導体レーザ内部に波長を選択するための周期100ナノメール程度の凹凸を作り込んでおり、これを回折格子としている。 
量子ドット:半導体材料で出来たナノメートルサイズの塊で、電子をこの中に閉じ込めることによって、温度特性を改善させることでできる。



(1)レーザデバイス事業
結晶成長を自社で実施し、半導体レーザチップ加工およびモジュール実装を、社外協力会社に製造委託する水平分業体制によるファブレス製造(注2)を実現し、ハイエンド技術を基にした事業となっている。同社は半導体レーザの特性を決める活性層成長を担っており、特に量子ドットの結晶成長については他社にはないノウハウを有する。また、研究機関からの基礎技術の研究開発や、メーカの新規アプリケーションの光源開発を行う開発受託業務も手掛けている。
(2)レーザアイウェア事業
レーザ網膜投影技術を使ったメガネ型ディスプレイ(網膜走査型レーザアイウェア)を、ファブレス製造にて、製品開発・製造を行っている。 

同社からは、コントローラーユニット・メガネユニットの製造・調整に必要な製品仕様、部品リスト、部品仕様書、回路図、実装図、プリント配線板製造データ、組み立て指示書、検査指示書、ソフトウエアを協力会社に供給し、製品製造・検査を委託している。

販売に関しては、一般顧客向けには販売パートナー(メガネ店、通販業者)を通じ販売し、法人顧客向けには直販を行っている。網膜走査型レーザアイウェアは、メガネ型フレームに内蔵された超小型レーザプロジェクタから、網膜に直接画像を投影(VISIRIUM Technology)し、装着者の視力やピント位置に影響を受けることなく、カメラの撮像画像 や外部入力されたデジタル情報を見せることができる製品となっている。装着者のピント調整能力に依らず、ボケのない画像を見せられる(フリーフォーカス)ことから、全盲ではないものの、視覚に障がいのあるロービジョン(矯正視力が0.3未満および0.05以上)と一部の社会的失明者(矯正視力が0.05未満)に対する視覚支援機器として、生活の質の向上に資する性質を有する。

注1:レーザ(Laser)とは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光増幅放射)の頭文字を取ったもので、共振器を用いて電磁波を増幅して得られる人工的な光であり、指向性や収束性に優れ、また波長を一定に保つことができる等の物理的な特長がある。

注2:ファブレス製造とは、工場を持たないメーカーが、自社で企画、開発した商品の製造を他社の生産工場に委託すること。

セグメント別売上高では、レーザデバイス事業が9割を占める

セグメント別売上高に注目すると、2020年9月期における全売上高に占める割合は、レーザアイウェア事業が4.29%、レーザデバイス事業が95.71%となっている。

同社の関連する主な市場状況では、レーザデバイス事業の分野では精密加工用、センサ用ともに比較的堅調に推移している。一方、レーザアイウェア事業の分野では眼鏡店が新型コロナウイルス感染症対策に伴う休業などの影響を受け、需要が低迷した。 このような状況下においても、テレワークやオフピーク出社の積極的な活用により、新型コロナウイルス感染症対策と生産性の維持の両立を図り、製品の開発・販売を進めてきた。

レーザデバイス事業は、精密加工用レーザ、センサ用赤色レーザの受注が増加した一方、シリコンフォトニクスを含む通信用レーザの受注が減少。この結果、売上高は325,299千円、セグメント損失は54,549千円となった。

レーザアイウェア事業は、新型コロナウイルス感染症対策に伴う海外渡航制限や眼鏡店等の休業などの影響を受け、民生用網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA® DisplayⅡ」の受注が低迷した。これにより、売上高は14,595千円、セグメント損失は226,797千円となっている。

長する「半導体レーザ」業界の世界的ニーズ、売上高総利益率を最重要KPIへ

人と物があらゆる情報とつながり始めたこの世界において、高機能汎用技術である半導体レーザ技術の有用性はますます高まっている。同社は「人の可能性を照らせ。」という経営理念のもとに、世界の人々の生活を安全で豊かなものにし、幸福と平和に貢献する企業を目指すことを経営方針としている。

同社の属する「半導体レーザ」業界の経営環境は、世界的にもニーズが高まり、光通信・インターコネクト、ディスプレイ、バイオセンサ、スマートフォン顔認証、自動運転レーダ、精密加工、プリンタ、照明など順調に市場は伸長している。その市場の中でシェアを獲得するために以下5つの経営戦略を立案し、推進している。

①ファブレス製造
②幅広い波長領域のレーザの開発、量産化
③量子ドットレーザ量産技術のシリコンフォトニクス展開
④最終製品展開
⑤医療機器展開

また、企業価値を継続的に向上させるためには利益の確保が重要であることから、同社は売上高総利益率を最も重要な経営指標として採用している。事業別の指標としては、レーザデバイス事業は認定顧客数の毎年20%増加とし、レーザアイウェア事業は累計販売10万台・年間生産5万台と定めている。

網膜走査型レーザアイウェア事業の市場形成が今後の成長の鍵

同グループは取り組むべき課題として以下の7つを挙げている。

①網膜走査型レーザアイウェア事業の形成、構築
②営業体制の強化
③水平分業パートナーとの協業体制の維持と発展
④研究開発、製品開発基盤の維持・発展とマーケティングとの連動
⑤高品質・安定した製品の供給
⑥医療機器販売許可取得
⑦経営管理体制の強化及び人材の育成

同社が開発した網膜走査型レーザアイウェアは、これまで世の中に無い製品であるため市場の形成、拡大が課題であるとしている。民生品と医療機器双方の事業展開を推進し、累計販売10万台を達成するための市場形成の課題として、生産性向上・高度化、各種認証の取得、商流構築の推進を図る。

このため、国内外大学病院・教育機関・有力眼鏡店などと密に連携し、機能・デザイン・ユーザインタフェース、知的財産への参入障壁構築、安全性を追求していく。これを足がかりに、視覚補助用アイウェアの新市場を形成し、事業モデル(設計・製造・販売)を確立していく方針だ。

計16回の資金調達で累計67億6,430万円を調達

これまで16回の資金調達を実施し、累計で69億6,430万円を調達していることがわかる。

2019年4月には、世界初の網膜走査型アイウェアの製品開発および医療機器認証取得を行う目的で、総額36.6億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先は、社名が明らかになっている上記18社とその他事業会社2社、同社の常勤取締役2名となっている。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は2021年2月5日を予定しており、上場する市場は東証マザーズとしている。また、SMBC日興証券が主幹事を務める。

今回の想定価格は、275円である。調達金額(吸収金額)は42.9億円(想定発行価格:275円×OA含む公募・売出し株式数:15,593,300株)、想定時価総額は、95.1億円(想定発行価格:275円×上場時発行済株式総数:34,584,180株)となっている。

公開価格:340円
初値:797円(公募価格比+457円 +134.4%)
時価総額初値:275.63億円

※追記:2021年2月5日(上場日)

筆頭株主は、グローバル・イノベーション・ファンドを通じて出資を行っていた、総合エレクトロニクスメーカーの富士通が合わせて26.64%を保有する。次いで、大手総合リースの東京センチュリー13.02%、MGI Global Fund L.P.を運営する三井物産グローバル投資12.45%を保有する。

Beyond Next Ventures1号投資事業有限責任組合を運営するBeyond Next Venturesは、主に医療・ヘルスケア分野を中心とした、技術系スタートアップへのインキュベーション投資を展開するベンチャーキャピタルだ。これまでに、五常・アンド・カンパニーPOLメトセラサスメドなどへの投資実績を有する。

そのほか、同社代表取締役の菅原充氏やアクサ生命保険第一生命保険、リアルテックファンド1号投資事業有限責任組合を運営するリアルテックジャパンなどの事業会社、ベンチャーキャピタルが大株主として参画している。

今回大株主として参画しているリアルテックファンドとBeyond Next Venturesは、投資先としてQDレーザが上場第一号となっている。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

 

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