コラム

「第二のCEO」プロダクトマネージャーとは?

2018-11-28
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部
「第二のCEO」?プロダクトマネージャーとは

名刺交換をした際、「PM」という肩書きを目にしたことがある人は多いのではないだろうか。PMと略される役割には2種類ある。「プロジェクトマネジャー」と「プロダクトマネジャー」だ。前者は予算、納期そして戦略を計画し、推進することが役割である一方、後者は、製品の事業そのものについての意思決定を行う。戦略はもちろん、デザインや開発、広報に集客と、プロダクトに関わる様々な領域のすべてを司っているため、「製品最高経営責任者(CEO)」「ミニCEO」とも呼ばれている。「プロジェクトマネージャー」は名称および役割がすでに広く知られているが、「プロダクトマネージャー」はITやWebサービス業界以外では馴染みが薄い。しかし、メーカー企業であれば、いずれ必要となる役割であろう。今回は、プロダクトマネージャーについて、その役割や重要性について紹介する。

プロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーの違い

「第二のCEO」?プロダクトマネージャーとは

まずはじめに、混合されやすいプロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーの違いについて説明する。

プロジェクトマネージャー

目的や目標を意識した視点を持ち、QCDを守ってプロジェクトを成功させる役割を担う。QCDとは、Quality(品質)・Cost(費用)・Delivery(納期)のこと。つまり、費用を予算内に納め、納期を遵守し、品質の良いプロダクト・サービスをリリースすることが求められる。

プロダクトマネージャー

顧客や市場を見据えた視点を持ち、プロダクト・サービスを管理する役割を担う。プロダクト・サービスに関わる社内外の人とコミュニケーションをとるため、ビジネススキルだけでなく、マーケティングスキルや、UI/UXスキル、基本的なテクノロジー知識を持つ必要がある。

プロダクトマネージャーが求められている理由

「第二のCEO」?プロダクトマネージャーとは

プロダクトマネージャーというポジションを置く理由は何か。それは大きく3つある。1.プロジェクトの責任の所在を明確にするためプロジェクトには様々な部署が関わるので、日々多くの意思決定がなされているが、最終判断を行う人がいないと齟齬やトラブルが起きかねない。また、起こってしまった場合、要因の特定が遅れ、その結果解決が後手に回ってしまい被害がより大きくなることも予想される。そのようなことを防ぐため、プロダクトマネージャーを最高責任者として最終決定権を付与し、責任の所在を明確にしておくのだ。2.プロジェクトをスムーズに進めるため「デザイナーはこう言っている」、「エンジニアはこう言っていている」、「マーケティングはこう言っている」と、関係各所の様々な意見を全て取り入れようとすると混乱が生じます。プロジェクトマネージャーが方針を明確に打ち出し、各部署のハブとなることで、開発などをスムーズに進める役割を担う。3.ユーザー目線に立ってプロジェクトを進行するため戦略や納期、プロダクトやサービスの拡張性など様々な要素を考慮しながらプロジェクトを進めていくと、スケジュールの関係で一部の仕様変更を求められたり、既存事業との兼ね合いでコンセプトの再調整を依頼されたりする場合もある。この時に失ってはいけないのが「ユーザー目線」です。企業にとってはプラスのことであっても、ユーザーにとってデザインや機能面でマイナスのものをローンチしてしまうと結果的に事業自体がうまくいかなくなってしまう。それを防ぐために、ユーザー視点を持ち、代替案の提案や関係各所の調節などを行いながらプロダクトやサービスの価値を担保し、プロジェクトを遂行するのがプロダクトマネージャーである。なお、もしプロダクト・サービスの価値が失われた場合、それはプロダクトマネージャーが役割を全うできなかった結果とも言える。

プロダクトマネージャーに必要な資質

「第二のCEO」?プロダクトマネージャーとは

プロダクトマネージャーに必要な資質には、どのようなものがあるのだろう。一言で言うと、「全体を俯瞰するマクロの視点と、細部にまでこだわるミクロの視点」だ。マクロの視点とは、ユーザー・市場の求めるものを敏感に察知した上でプロダクト・サービスのゴールを設定するということ。そして、ビジョンを明確に掲げ、実現できるか・できないかではなく、実現したいか・したくないかの判断基準を持って遂行するということだ。そして、ミクロの視点とは、プロダクト・サービスに関わるあらゆる部署の間に立ち、スムーズに進行するよう調整に心を砕くこと。そして、プロダクト・サービスのクオリティに妥協しないということだ。ただし、クオリティに関しては前提として最低限の技術は必要となる。エンジニアと議論を交わす際に、状況と課題の難易度が理解できるレベルのものは身につけておくのがベターだ。また、 Infer(*1)のCEOであるVik Singh氏は、毎月10人以上のPM候補との面接経験を踏まえ必要資質について以下のように語っている。(*2)必須スキルは3つ。「影響力があること」「知識が備わっていること」そして「経験があること」である。その上で、抑えるべきポイントは4つだ。1.必要最小限からイノベーションを起こす機能がたくさんあって何がポイントなのか分かりにくい製品ではなく、顧客ニーズを満たすために本当に必要な「核」をプロダクトマネージャーが定義することで、その後の開発は変わる。2.優先順位を明確にするどんなに綿密に予定を立てていても、アクシデントは起こりうる。そのときPMが判断に迷うとメンバーが動揺や不安を抱くので、迅速に優先順位を決めて明確な指示を出す必要がある。3.威張らない「営業」や「マーケティング」「開発」など様々な部署と連携する際、信頼関係を結ぶためには「尊敬」が必要だ。尊敬は自分の役割にプロフェッショナルであることや経験、知識があることが求められる。決して「威張る」ことで得られるものではない。4.心のこもったコミュニケーションを取るPMがやりとりするのは、社内の部署だけではない。取引先など、社外の人とも多数関わらなければならない。そこで信頼を勝ち取るためには、心のこもったコミュニケーションが必要だ。

*1) カリフォルニア州にあるスタートアップ企業。コンバージョン率を高める予測SaaSプラットフォームを企業に提供している。*2)「Why Most Product Managers Suck」参照https://thenextweb.com/entrepreneur/2014/05/11/product-managers-suck-better-one/

以上がプロダクトマネージャーの役割や求められる資質だ。マーケット・顧客視点を常に持って調整役としてあらゆる関係者の間に立ちながら、プロダクト・サービスの価値を最大化することにコミットして企画からリリースまで携わるプロダクトマネージャー。その責任の範疇、大きさは、まさに第二のCEOである。今後のキャリアプランとして起業を考えている人には修行という意味でうってつけのポジションとも言えるのではないか。

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