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入退室管理システム「Akerun」シリーズの開発・提供、PhotosynthのIPOサマリー

入退室管理システム「Akerun」シリーズの開発・運営を手がける株式会社Photosynth(以下、Photosynthが東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2021年9月30日で、同年11月5日に上場を果たす。

Photosynthは、”つながるモノづくりで感動体験を未来に組み込む”を企業ミッションに掲げ、スマートロック等のIoT機器およびクラウド型認証プラットフォームサービスの開発を手がける。収益形態は主にサブスクリプションモデルとなっており、2014年9月の創業からおよそ7年での上場となる。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

売上高は5年間で17.9倍に成長、積極的な先行投資による営業損失も縮小傾向に

上図は過去5年半の売上高と営業利益の推移である。売上高は2016年12月期から2020年12月期のおよそ5年間で、約17.9倍に成長。営業損失は2019年12月期に6億9,338万円、2020年12月期に6億6,703万、2021年6月期に3億1,282万円となっている。

2020年12月期中においては、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」やAkerunの新ロゴの発表を行った。加えて、新規顧客獲得のために積極的な広告宣伝活動を実施。継続してエンジニア等の人件費や研究開発費の先行投資も推進している。その結果、同社のメインサービスである「Akerun入退室管理システム」の月額利用料収入が好調に推移した。

Akerun事業にはオフィス領域と住宅領域があり、2021年6月期中の業績にかかわる取り組みとしては、オフィス領域における成長拡大が挙げられる。中小企業への販売促進施策を継続的に強化するため、大阪と福岡の地方拠点の活用に加え、販売パートナーを支える専任チームの強化・拡充を通じた価値提案を加速している。

さらに、より大きな収益機会が見込める大規模企業への販売拡大を目的に、専任チームの増員や提案力の向上も図ることで、リレーション強化を通じたアップセルを含む、継続的なLTVの最大化と新規顧客獲得を加速。当該会計期間の経営成績は、売上高7億1,645万円、営業損失3億1,282万円となった。

キーレス社会実現に向けて3つのスマートロックサービスを展開

同社はキーレス社会の実現に向け、クラウドとインターネットで繋がるスマートロック等のエッジ端末(注1)による個人認証とセキュリティを主軸としたサービスを法人と住宅向けに展開。サービスは法人向けのソフトウェア「Akerun入退室管理システム」の他、会社や住宅の既存の鍵に合わせたハードウェアのプロダクトを2種提供している。

(1)入退室履歴や鍵の管理をクラウド化するソフトウェア「Akerun入退室監理システム」
IoTを活用し、Web管理ツールによる鍵権限の柔軟な設定を実現した、クラウド型入退室管理システム。ユーザーの利用履歴を永続的に保持し、Web上でいつでも確認できる機能を備える。外部システムとの連携が可能なAPIを公開しているため、遠隔での各種情報の取得や操作が可能であり、他のサービスとの共同ソリューションを活用することもできる。

(2)金具型の扉に対応するハードウェア「Akerun Pro」
サムターン錠(注2)が使われている既存の扉に工事なしで後付け可能なハードウェア。取り付け工事不要、初期費用0円で導入できるため、従来の入退室管理システムと比較して導入にかかる工数や費用を大きく低減している。

(3)電気制御の扉に対応するハードウェア「Akerunコントローラー」
既存の自動ドアや電磁錠などの電気錠(注3)に後付けで導入でき、簡易的な工事のみで運用できるハードウェア。電気制御で鍵の開閉を行う電気錠に対応することで、「Akerun入退室管理システム」の適用範囲をさらに拡大し、さらに多くのオフィスや施設のニーズに対応することが可能となっている。
注1:インターネットで接続されたシステム全体における末端の端末として、データの収集/処理や上位システムへのデータの送信等に加え、上位システムからの指令やデータ等を受信して稼働したり、利用者に伝達する等の機能を担うハードウェア。
注2:扉の室内側についている錠の開閉を行うためのツマミ式の金具で開閉を行う錠前。
注3:電気的に鍵を施解錠する機構を組み込んだ錠前。

129%の年平均成長率を持続させる安定した収益基盤

同社で展開している各サービスは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、月単位・年単位などで課金されるサブスクリプションモデルによるレンタルサービスとして提供している。扉ごとのストック型収益により、高い成長率と安定した収益基盤を構築しており、ARRの年平均成長率は129%となっている。

堅牢なアクセス認証基盤及びクラウドセキュリティシステムや、アクセス認証基盤を活用した認証プラットフォームとしての価値にも強みを持っており、これらもARRの増加に寄与しているといえる。また運用の手軽さや利便性により、サービスの解約率は平常時で1%台半ばの低い水準に抑えられている。

今後はオフィスや住宅の他、医療機関や行政機関、商業施設、交通機関など扉の存在するあらゆる場所へ対象を拡大していく方針だ。さらに扉を起点にインフラを拡大していくことで、その認証を担うアクセス認証基盤のプラットフォームとしての価値も向上すると同社は捉えている。外部サービス提供事業者も共通認証プラットフォームとして利用できるサービス提供モデルを目指すことでさらなるARRの増加を見込んでいる。

市場規模は4.5兆円、時流にマッチした市場開拓でさらなる成長が見込まれる

オフィス領域におけるセキュリティ関連市場及び個人認証・アクセス管理型セキュリティソリューション市場の市場規模は4.5兆円(注4)、住宅領域も加えた市場規模は6.4兆円(注5)と推計されている。

2015年の個人情報保護法の改正に伴う物理・情報セキュリティの対策強化、新型コロナウイルス感染症の影響の拡大による分散型オフィスの活用の加速、様々な用途の空間をシームレスに行き来する空間利用・都市開発手法の加速が、今後、セキュリティ関連市場や個人認証・アクセス管理型セキュリティソリューション市場の成長を後押しすると予想されている。

Akerun事業におけるオフィス領域、住宅領域それぞれの特徴やサービスの強みに加え、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」によるFlywheel効果(注6)を最大限に引き出し、事業成長を実現していく方針だ。

また、今後はセキュリティや認証にとどまらず、プラットフォーム上に蓄積されたビッグデータを活用したユーザー体験の向上、新規事業を含めた周辺領域へのサービス展開なども視野に入れている。

注4:同社算出値。2,100万ドア × 1.8万円/月 × 12か月 = 4.5兆円。オフィスの入退室用ドアは、非常灯の設置が義務付けられていることからドア数 ≒ 非常灯数と推定。
2,100万ドア=300万個(パナソニック・ライフソリューションズ社より) × 7年 (リプレイスメントサイクル)、1.8 万円/月:現在のAkerun入退室管理システムの費用
注5:同社算出値。注4の数値に、全国の総住宅数6,240万 × 2,500円 × 12ヶ月 = 1.9兆円を加算。全国の総住宅:2018年総務省「住宅・土地統計調査」より、2,500 円/月:現在の家庭向けスマートロックの費用
注6:本来は機械設備の用語で、回転エネルギーを効率的に蓄え、持続的に回転が維持されるように設計された機械装置の名称。転じて、企業における効率的かつ持続的な事業成長をもたらす仕組みやビジネスモデルを指す。

サービスと事業領域の拡大の先に見据えるビジョンとは

同社は、世の中の物理鍵とそれに伴う様々な制約から人々を解放し、扉で分断されたあらゆる場所や空間に人々が自由にアクセスできるキーレス社会の実現を目指している。経営戦略は3つの方針から成る。

①社会インフラとしてのキーレス社会の創出を通じた価値提供
新たな社会インフラとして、誰もが利用する鍵や扉を起点としたキーレス社会を新たに創出し、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」をトータルで提供する社会インフラの企業としてのポジションを確立していく。セキュリティや生産性の向上に留まらず、IoTにより取得するビッグデータの利活用やアクセス認証基盤を通じた価値提供を行う。

②認証インフラによるキーレスの適用領域の拡大
オフィス領域で培った実績をベースに、住宅領域、医療機関・行政施設などの非商業施設、ホテルなどの宿泊施設、レジャー施設などの商業施設、さらには自動車や交通機関などのあらゆる場所へと事業対象を拡大していく。併せて、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」を外部のサービス提供事業者も利用できる共通認証プラットフォームとして昇華させ、サブスクリプションモデルによるARRの増加を目指す。

③ユーザーへの提供価値を継続的に強化するビジネスの好循環モデル
アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」を中核とした既存のAkerun事業の拡大を通じて、認証のためのエッジ端末の導入数とユ ーザー数の増加を図る。Akerun事業の拡大をベースに、新規事業を含めた周辺領域への展開も見据え、シナジー効果による成長の好循環モデルを推進していく。

新規ユーザーの獲得、利益創出による先行投資の回収、サービス開発の加速などが課題

同社は下記8つの主要課題を掲げている。

①さらなる新規ユーザーの獲得
②技術開発力の継続的な向上 
③利益及びキャッシュ・フローの創出
④営業のマルチチャネル化を通じた販売の拡大
⑤サービス提供価値のさらなる向上と新規サービスの提供
⑥情報セキュリティ体制の強化
⑦ガバナンスの強化
⑧優秀な人材の採用と育成

認証基盤「Akerun Access Intelligence」のユーザー数増加は最重要課題であり、既存の扉に後付け可能というAkerun事業の各サービスの特徴を活かし、国内の企業や住宅における導入を推進していく方針だ。今後、営業体制の増員、販売チャネルの新規開拓と拡大、技術開発を通じたサービス自体の価値向上などに注力していく。

また、同社サービスは、顧客獲得費用や開発費用が先行して計上される特徴がある一方、サブスクリプションモデルで顧客にサービスを提供し、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルを構築している。今後、事業拡大によるストック収益を順調に積み上げることで、先行投資費用の回収とともに、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化にも努めていく方針を示している。 

さらに、ユーザー基盤の拡大と既存顧客の満足度向上に向け、開発体制の強化を通じた新規サービスの開発、外部パートナー企業との技術連携にも注力していく。また、「Akerun来訪管理システム」や美和ロック株式会社との合弁会社を通じたAkerun事業の住宅領域への進出も推進していく予定だ。 

総額68億8,000万円の資金調達を確認

同社はグロービス・キャピタル・パートナーズ大和企業投資ジャフコグループグローバル・ブレインなどのVCから数多く出資を受けている他、Fidelity International農林中央金庫からの大型調達も実施している。

その他、凸版印刷ビジネスストラテジックパートナーズスクラムベンチャーズなども参画しており、資金調達の回数多さと調達先が多岐にわたっている点が特徴的だ。なお、累計資金調達金額は68億8,000万円にのぼる。

上場時主要株主と想定時価総額

上場日は2021年11月5日を予定しており、上場する市場は東証マザーズとしている。また、大和証券とクレディ・スイス証券が共同で主幹事を務める。

今回の想定価格は、1,500円である。調達金額(吸収金額)は108.9億円(想定発行価格:1,500円 × OA含む公募・売出し株式数:7,260,200株)、想定時価総額は、228.5億円(想定発行価格:1,500円 × 上場時発行済株式総数:15,235,400株)となっている。

筆頭株主は同社代表取締役社長の河瀬航大氏で、全体の18.35%の株式を保有する。次いでグロービス・キャピタル・パートナーズが運営するグロービス5号ファンド投資事業有限責任組合が9.81%、農林中央金庫が7.45%の株式を保有している。

その他、国内の投資信託企業であるコタエル信託ジャフコグループが運営するジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、海外投資信託企業のFidelity Internationalが運営するFidelity Fundsなどが名を連ねている。株式が寡占状態にあらず、外部による資本参加が多いことが特徴として挙げられる。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

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