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創薬・抗体研究支援事業を手がける、ペルセウスプロテオミクスのIPOサマリー

医薬品等の研究開発、製造、販売を手掛ける株式会社ペルセウスプロテオミクス(以下、ペルセウスプロテオミクス)が東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2021年5月19日で、同年6月22日に上場を果たす。

ペルセウスプロテオミクスは、東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)で開発された蛋白質発現・抗体作製技術を基盤として、診断・創薬標的に対応する抗体の医療活用を目指して2001年2月に設立された。創業以来、がんやその他疾患の治療用医薬品の研究開発を行っており、およそ20年での上場となる。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

積極的な先行投資を行い、研究開発に注力

2020年度の売上高は、前年同期比68.9%減となった。主な要因は、マイルストーン収入(注1)による売上が当事業年度になかったことだ。新型コロナウイルス感染症の影響により研究機関の研究活動が停滞したことが痛手となり、抗体研究支援における研究受託の減少とあわせ、売上総利益は前年同期比69.1%減となった。

また、PPMX-T003の治験薬製造の完了およびPV(真性多血症)治療薬としての第Ⅰ相試験(注2)を開始したことにより、研究開発費が前年度と比べて増加している。

なお、同社製品のPPMX-T001については、米国での第Ⅰ相試験が2019年8月に終了し、国内での第Ⅰ相試験が開始。PPMX-T003の第Ⅰ相試験を開始を受け、同製品が上市・発売されることで先行投資の回収とともに、売上高の増加が見込まれる。

注1:医薬品の開発の進捗に伴って発生する、新規化合物発明企業への支払金。製薬企業などが、新規化合物を発見・発明した企業から、医薬品として同化合物を開発する権利を購入した場合に、その開発の進捗段階に応じて支払う費用を指す。

注2:臨床実験のうち、健康な成人ボランティア(健常人、通常は男性)を対象として、主に治験薬の安全性および薬物の体内動態について確認するための試験。

東京大学での研究により培った技術を活かし、創薬・抗体研究支援事業を展開

同社は医薬品事業のみの単一セグメントであり、以下の各分野において製品化に向けた研究開発やライセンス、製造方法の確立に取り組んでいる。

(1)創薬
長年の経験に基づいたハイブリドーマ法(後述)と、独自のスクリーニング技術を取り入れたファージディスプレイ法(後述)により、高機能抗体を取得し遺伝子工学的な改変あるいは化学的な修飾を 施すことで抗体医薬品候補として研究開発を行う。

(2)抗体研究支援
がんなどの抗体医薬品や研究用試薬の創出を通じて培った技術や経験を活かし、抗体に関連した研究支援(研究受託)を行う。

(3)抗体・試薬販売
がんや生活習慣病などの各種疾患のバイオマーカー(注3)となる核内受容体抗体を全48種類取り揃え、世界の研究者に向けて研究用試薬として販売。

注3:生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、血中蛋白質量等の生体情報を数値化・定量化した指標

また、治療用抗体を取得するため、同社は以下の4つの技術を保有している。

(1)抗体探索
抗体を取得する方法としてファージディスプレイ法とハイブリドーマ法を保有

①ファージディスプレイ法
動物を用いない抗体取得方法として、ヒト抗体ライブラリとラクダ抗体ライブラリから特定の標的分子と結合する抗体配列を選別。特許を持つ抗体スクリーニング技術(ICOS法)と組み合わせることで、狙った標的分子のみに強く結合する特異性や高親和性を持つ抗体を取得することができる。

②ハイブリドーマ法
標的分子をマウスなどの動物に免疫することで抗体を産生する細胞を作出する。古典的だが信頼性の高い抗体作製技術。ヒトと同じ機能性抗体を取得するのが難しい中で、東京大学との共同研究で得た最先端の知識と、アジュバント(注4)と呼ばれる免疫増強剤の使用・投与方法を工夫することで、高い結合力で的確に目標に結合する抗体を効率的に取得している。
(2)抗体工学
①抗体配列解析
独自に設計した遺伝子増幅用配列を用いて抗体配列情報を解析。ハイブリドーマから抗体に翻訳される遺伝子領域を取り出し、その部分を独自に設計した配列を用いて増幅する事で遺伝子配列を解析する。

②抗体デザイン
マウスに免疫して取得した抗体は、構造的にはマウスの特徴を備えた抗体であるため、そのままヒトに投与することは安全性に問題が生じる場合がある。そこで、抗体が目標とする蛋白質と結合する部分以外をヒトの抗体構造と置き換え、ヒトに投与しても安全なデザインを施す。
(3)標的探索
①トランスクリプトーム解析
抗体医薬品の新薬開発において最も重要なことの1つが、疾患の治療標的となる細胞表面に存在する蛋白質が何であるかを効率的に絞り込むこと。治療標的となり得る有用な蛋白質を発掘しがんの診断・治療に役立つ抗体を作製する。

②リバーストランスクリプトーム解析
がんなどの疾患に関連した細胞を利用し、細胞表面に存在する多様な標的分子の細胞表面上での構造を正確にとらえた抗体を多数取得・ライブラリ化。取得した抗体群は治療薬候補の抗体として研究開発を進める。
(4)機能性蛋白質発現
標的蛋白質が構造と機能を保ったまま生産されるように遺伝子組換えを施したウイルスを昆虫細胞に感染させ、そこから放出されるウイルスを免疫源として直接利用するBV(Budded Virus)技術を利用しこれまで作製困難だった標的に対する抗体の取得を行う。

注4:抗原と一緒に投与して、その効果を高めるために使用する物質

主要取引先トップ3は海外バイオテク企業、グローバルに事業展開

ペルセウスプロテオミクスの直近3年度の主要取引先別売上高は以下の通りである。

第20期事業年度における相手別売上高のトップで、第21期第3四半期累計においても総売上の22.3%を占める取引相手であるR&D Systemsは、米・ミネソタ州に拠点を置く血液関連の抗体・製薬を手がけるバイオテクスタートアップ。

また、Abcam plcは基礎研究用薬剤や蛋白質研究ツールの研究開発・製造・販売を行うイギリスのバイオテク企業。第20期事業年度では売上高の16.8%を占め、第21期第3四半期累計においても、全取引先の中でトップの22.7%を占めている。

第20期事業年度以降、取引金額で第3位に名が上がったのはPierce Biotechnologyだ。同社は、米・マサチューセッツ州を拠点とするバイオテク企業であるThermo Fisher Scientificの研究開発部門で、蛋白質生物学製品を用いた蛋白質の発現・同定・機能検出・測定・研究を手がける。

売上高において、海外のバイオテク企業・製薬会社との取引が占める割合が高く、グローバルに事業を展開している点が特徴だ。

その他、研究用試薬の販売事業を手がけるフナコシ富士フィルムとの取引実績も有している。

バイオ医薬品の市場規模は継続的な増大傾向、抗体医薬品は特に注目の的

EvaluatePharma® World Preview 2020, Outlook to 2026」によると、医薬品全体、およびバイオ医薬品の市場規模はともに年々増加している。2019年では、バイオ医薬品の市場規模は医薬品全体の29%を占め、約2,660億ドルに達している。今後も売上の増加が見込まれており、2020年で9,040億円の医薬品全体の市場規模は、2026年には1兆4,000億ドルを超え、バイオ医薬品の市場規模も約5,050億ドル(医薬品全体に占める比率は35%)に達すると予測されている。

また、「日経バイオテク」の「世界の医薬品売上高ランキング―2019年度(総合編)」によると、2019年度の世界の医薬品の売上高上位10品目のうち、抗体医薬品は1位も含めて4品目を占めている。

このような事業環境の中で、同社は機能性の高い抗体を独自の技術で作製し治療薬として開発しているほか、抗体に放射性同位体や毒素を化学的に結合させ、がん細胞への攻撃力を高める治療薬の研究開発も行っている。充分な競合優位性・事業成長の可能性があると、同社は考えている。

8大学と共同研究に関する契約を締結、研究開発を加速

開発パイプラインの強化・推進とともに、次期抗体の探索研究も、同社にとっての重要なテーマだ。大学・企業研究機関との共同研究を通じて、複数の次期開発候補抗体の基礎データを取得し、次の開発候補を明確にしていく。また、共同研究の中で技術的な討論をすることで、抗体研究支援の受注も推進していく。

同社は現在、8大学と10種類におよぶ共同研究に関する契約を締結しており、今後も研究開発を加速させていく方針だ。

研究開発体制の強化と資金確保に注力していく方針

同社の収入は研究開発の進捗に大きく左右されるため、ROAやROEは重視されていない。代わりに経営指標として、将来の売上に繋がるパイプライン開発の進捗、パイプラインの拡充状況、売上高を重視している。

中長期における同社の重要課題は、継続的に新規抗体を創出することである。そのため、開発パイプライン充実に向けた探索研究、および早期臨床開発の実施に注力している。

開発パイプラインは現在、PPMX-T001及びPPMX-T002が臨床試験段階であり、導出先企業において日本国内や欧米等、各地域での承認を取得していく予定。

今後、さらなる研究開発体制の強化と研究開発資金の調達に向け、新規提携先の確保、研究開発助成金の獲得、投資家からの資金調達を加速させていく方針だ。

さらに、優先的に対処すべき事業上および財務上の課題として、以下の4点を示している。

①開発パイプラインの拡充
PPMX-T003の開発が当面の重要課題であり、研究開発資源を重点配分する方針だ。また、開発候補を創出するため、新規抗体の取得も継続的に進めていく予定。さらに、全国の大学研究機関と積極的に共同研究を行い、抗体研究支援の受注も推進していく。
②抗体研究支援及び抗体・試薬販売の拡大
研究受託の売上増加を図るべく、大学や企業研究機関等からの新規研究受託を推進していく方針。
③財務体質の強化
同社は、多額の研究開発費用が先行して必要となるビジネスモデルのため、財務体質の強化が課題だ。ライセンス契約の締結をはじめ、国内外のパートナーとの提携、株式市場からの資金調達などを通じて、財務体質の強化に努めていく。
④優秀な人材の確保
様々な不確実性が存在する医薬品開発のプロセスにおいて、優秀な人材を積極的に採用し、効率的に研究成果をあげられる研究開発体制の構築を図る方針。また、他企業との業務提携にも引き続き注力していく。

6回の資金調達を実施し、累計で44億円超を調達

同社は、2003年に三菱UFJキャピタルを引受先として調達を行っている。

富士フィルムは2006年1月の出資に始まり、2009年1月には議決権の76.7%を所有する親会社となった。その後、2018年3月の同社が実施した第三者割当増資の結果、保有割合は48.6%に下がり、その他の関係会社となった。さらに、2020年11月の同社第三者割当増資の結果、議決権の保有割合は35.6%になり、現在の32.39%に至る。

2018年3月の調達には富士フィルムのほか、日本ベンチャーキャピタルイノベーション・エンジンみずほキャピタル三菱UFJキャピタルSMBCベンチャーキャピタルが参加している。

また、2020年11月の2回にわたる調達では、DBJキャピタルSBIインベストメントエムスリー京都大学イノベーションキャピタルアクシル・キャピタルグローブアドバイザーズNewton Biocapitalを投資先に迎え入れている。

これまで6回の資金調達を実施し、累計で44億594万円を調達している。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は2021年6月22日を予定しており、上場する市場は東証マザーズとしている。SBI証券が主幹事を務める。

今回の想定価格は、870円である。調達金額(吸収金額)は33.01億円(想定発行価格:870円 × OA含む公募・売出し株式数:3,795,000株)、想定時価総額は、101.67億円(想定発行価格:870円 × 上場時発行済株式総数:11,686,400株)となっている。

公開価格:870円
初値:1,005円(公募価格比+135円 +15.51%)
時価総額初値:117.44億円

※追記:2021年6月22日

筆頭株主は富士フィルムで、32.39%の株式を保有する。次いで、日本ベンチャーキャピタルが運営するNVCC8号投資事業有限責任組合が13.81%、DBJキャピタル運営のDBJキャピタル投資事業有限責任組合、SBIインベストメントが運営するSBI 4&5投資事業有限責任組合、エムスリーの三者がそれぞれ4.82%の株式を保有している。

また、イノベーション・エンジンが運営するイノベーション・エンジン産業創出投資事業有限責任組合は4.23%、みずほキャピタルが運営するみずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合は4.17%の株式を持つ。

そのほか、同社代表取締役社長の横川拓哉氏、Newton Biocapitalが運営するNewton Biocapital I Pricaf privée SA、三菱UFJキャピタルが名を連ねている。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

 

 

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