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ドイツ発ユニコーンN26に見るスタートアップのスケールアップ

ドイツ発ユニコーンN26に見るスタートアップのスケールアップ

ドイツのユニコーンスタートアップ概況

2019年2月15日時点で、ドイツには7社のユニコーンスタートアップが存在する。最新の資金調達ラウンドでの時価総額が高い順に、AUTO1 Group(35.4億ドル)、N26(27億ドル)、NuCom Group(22億ドル)、CureVac(16.5億ドル)、Celonis(10億ドル)、About You(10億ドル)、Omio(旧社名:GoEuro。1億ドル)だ。この中で、NuCom Groupは、バイエルン州の大手メディアコングロマリットProSiebenSat.1 Mediaが傘下のデジタルコマース子会社10社を統合してスピンアウトし、未だ株式の過半数を保有する企業である点を考慮すると、独立系のユニコーンスタートアップは6社となる。

AUTO1 Groupは中古車取引プラットフォーム、N26はモバイルバンキング、CureVacは創薬、Celonisはビジネスインテリジェンス解析、About YouはファッションEC、Omioはバス・鉄道・飛行機予約サイトと、業種は多岐に亘る。また、ドイツのスタートアップエコシステムハブと言えばベルリンが想起されるが、AUTO1 Group・N26・Omioの3社がベルリン発祥である以外は、CureVacはテュービンゲン、Celonisはミュンヘン、About Youはハンブルグに本拠地を構える等、出自も様々だ。

この様にバラエティに富んだドイツのユニコーンスタートアップだが、特筆すべき共通点がひとつある。それは、ドイツ国外の、しかも、グローバルでベンチャーキャピタル(VC)投資を牽引しているエリート投資家シンジケートから、巨額の資金調達を成功させていることだ。資金調達の詳細については、図1をご参照頂きたい。

ドイツのユニコーンスタートアップ7社の資金調達状況

※図1

AUTO1 Groupを例に採ると、日本でも話題になったSoftBank Vision Fundによる出資に加え、米欧の大手投資・商業銀行(Goldman Sachs、J.P.Morgan、Citigroup、Barclays、BNP Paribas)や、Baillie Gifford(創業110年を誇るスコットランドの老舗機関投資家。T.RowePriceと並ぶTeslaの大株主として知られ、近年はVC投資でもSpaceXやLyft、Ola、AirBnB、Slack、Spotify、Flipkart等に出資)、更にはDST Global(Facebookの初期投資家のひとりとして知られるロシア人投資家ユーリ・ミルナー率いる世界屈指のVC投資会社。Twitter、Alibaba Group、Xiaomi、JD.com、Didi Chuxing、Go-Jek等に出資)と、錚々たる名前が並ぶ。

また、NuCom Groupに出資したGeneral Atlanticや、CelonisのAccel、OmioのKleiner Perkins、New Enterprise Associates、Battery Ventures、Silver Lake Kraftwerk等、米国を代表するVC投資会社が参画している点も、共通する特徴だ。

更には、前述したBaillie Gifford然り、大手機関投資家(シンガポールの政府系投資会社/SWFである GIC、Temasek Holdings)が、グロースフェーズにおけるスポンサーとしてバックアップしている点も、ドイツのユニコーンスタートアップの成長を加速させている要因のひとつだと考えられる。

ドイツは、国内VC投資市場が米中と比較して小規模で、地場系VC投資会社のファンド運営額も決して大きくない。加えて、ドイツの伝統的な金融機関は保守的な体質であり、リスクマネーの供給に対して必ずしも積極的ではないと、一般的に言われている。その様な環境下において、ドイツのユニコーンスタートアップは、国外の有力投資会社から巨額の資金を調達することで、更なる拡大成長に必要な推進力を獲得して来た。

では、人口が8,000万人とマザーマーケットが日本よりも小さいドイツのスタートアップが、どの様にして国外の有力投資会社を惹き付けることが出来たのか、その背景でどの様な事業戦略を描き、成長を実現して来たのか?今年1月に、シリーズDで3億ドルの資金調達を成功させたばかりのモバイルバンキングスタートアップN26を例に採り、詳述してみたい。

ドイツスタートアップユニコーンのエース、N26

n26_hp

https://n26.com/en-eu

N26は、2013年2月、バレンティン・スタルフとマクシミリアン・タエンサールというふたりのオーストリア人によって、ベルリンにて創業された。当初はPapaya/パパイヤと名乗っていたが、その後Number26へと改称し、2016年に現社名へとリブランディングしている。ベルリンの中心地ミッテの中でも、市庁舎やアルテス・シュタットハウス(旧東ドイツの首相官邸。現在はベルリン市内務省ビル)、教会等が建ち並ぶ古風な地区アルト=ベルリン(「Old Berlin」の意)に本社を構える。

CEOを務めるバレンティン・スタルフは、ウィーン出身。ドイツ語圏の財界に多数の指導者を輩出した、社会科学分野におけるスイスの最高学府ザンクトガレン大学で会計・財務の学士・修士号を取得している。尚、在学中に上智大学経済学部に留学しており、日本との関わりも浅くはない。卒業後は、ベルリンのスタートアップエコシステムを世界水準にまで引き上げた立役者であるベンチャービルダーRocket Internetに入社し、Entrepreneur in Residenceとして、決済サービススタートアップ2社の運営に携わっている。後述するが、ベルリンのスタートアップエコシステムにおいて強い影響力を持つRocket Internet出身者(通称「Rocketer/ロケッター」)のネットワークに入れたことが、資金調達面でも大きくプラスに働いている。

一方、共同創業者でCFOを務めるマクシミリアン・タエンサールは、ウィーン経済商科大学で経営学修士号、ウィーン大学で法学修士号を取得している。卒業後、オーストリアを含む中東欧で最大の保険会社ウィーン・インシュアランス・グループに入社し、CFOの補佐として子会社の買収・売却を主導している。更に、オーストリアの大手ローファームCMS Reich-Rohrwig Hainzにて、M&Aを始めとする企業法務に従事した後、長年の友人であるバレンティン・スタルフと共同で、N26を創業している。

ふたりが創業したN26は、「Europe’s first completely mobile bank」を謳う、その名の通り、モバイルバンキングサービスだ。ユーザーは、N26のアプリで銀行口座を開設・保有し、付随するMasterCardのデビットカードでキャッシュレス決済が出来たり、提携するTransferWiseのシステムを利用しN26ユーザー間で無料の海外送金が出来たりする。更には、提携企業が提供する投資信託・預金・保険商品を購入することが出来たり、家計簿の機能も付いている等、ユーザーはアプリひとつで総合的な金融サービスを受けることが出来るようになっている。

N26の資金調達の軌跡

N26の資金調達の軌跡

N26は、2013年6月、Axel SpringerとPlug and Playが共同で運営するシードアクセラレーションプログラムに第一期生として参加している。Axel Springerは、「Bild」や「Die Welt」等、ヨーロッパ最大の発行部数を誇る新聞や、ビジネス・技術ニュースメディアの「Business Insider」等を傘下に持つ、ドイツ最大の新聞・雑誌コングロマリットだ。この 時N26は、株式の5%と引き換えに、25,000ユーロを調達している。

3ヶ月間のプログラムを修了した後、2014年6月には2回目のシードラウンドを実施し、Axel Springer Plug and Play Acceleratorから追加出資を引き出すと同時に、新たにRedalpine Venture PartnersとEarlybird Venture Capitalの2社を投資家として迎えている。ここで注目すべきは、Earlybird Venture Capitalの存在だ。同社は、ファンド運営額12億ドル、投資件数177社と、ベルリンを拠点とするVC投資会社としては最大手だ。しかしそれ以上に、同社でN26への投資を担当したサイモン・シュミンクの存在が興味深い。彼は前述した「Rocketer」のひとりで、Rocket Internet在職中に3社の起業を主導している。

1社は、食品ECのFoodpandaで、CFO兼グローバル責任者として、東南アジア8ヶ国における事業拡大を指揮した。Foodpandaは後に、Rocket Internetの投資先で、2017年6月に45億ドルの時価総額で上場したDelivery Heroに買収されている。2社目は、食品定期購読サービスのHelloFreshで、CEOとして北米進出の陣頭指揮を執っている。HelloFreshも、2017年11月に17億ドルの時価総額で上場している。Rocket Internetにとっても大型の成功案件となった2社と比べて、サイモン・シュミンクがChief Product Officerを務めた決済サービススタートアップのPaymillは地味な存在だ。しかし、このPaymillこそ、N26のCEOバレンティン・スタルフがRocket Internet在職中にセールスヘッドを務めたスタートアップであり、当時の人脈がこの時の資金調達にも大きく利いて来ていると言える。N26は、2回目のシードラウンドで3社から計2百万ドルを調達することに成功した。

成功の勢いに乗って2014年10月にロンドンで開催されたTechCrunch Disrupt Europe 2014に出場したN26だが、残念ながらStartup Battlefieldでの優勝は逃している。しかしN26のUI/UXデザインの秀逸さは、次世代のモバイルバンキングアプリとして多くの注目を集め、このことが、後の資金調達へと繋がって行く。

N26の名前がドイツのみならずヨーロッパで一躍脚光を浴びることになった契機が、2015年4月に実施されたシリーズAだろう。この時、前回ラウンドからの継続出資となったRedalpine Venture PartnersとEarlybird Venture Capitalに加え、新たにValar Venturesが投資家陣に参画している。あのピーター・ティールが創設したVC投資会社だ。Valar Venturesは、この前にイギリスのユニコーンスタートアップであるTransferWiseに出資しており、N26はヨーロッパで二件目のFinTech投資案件となる。

Valar Venturesで本件を担当するアンドリュー・マコーマックは、PayPal時代からピーター・ティールと共働しており、2008年からはThiel Capital(ピーター・ティールのグローバルVC投資を仕切るファミリーオフィス)で多数の投資案件を主導する等、正に右腕とも言える人物だ。2015年当時は、米国発のFinTechブームが世界中に広がり始める一方、ヨーロッパの伝統的な金融機関はモバイルバンキング対応が後手に回っていた頃であり、N26のサービスの成長ポテンシャルの高さに目を付けたValar Ventures自ら、出資を打診したとのことだ。このラウンドで、N26は計1,000万ドルを調達している。

Valar Ventures出資のインパクトもあってか、これ以降、N26の資金調達は拡大の一途を辿り、綺羅星の様な名前が投資家陣に並ぶこととなる。2016年6月に計4,000万ドルを調達したシリーズBでは、Redalpine・Earlybird・Valarの継続出資は勿論のことながら、香港最大の企業グループ長江実業を率いる李嘉誠のファミリーオフィスHorizon Venturesや、ボストンに本拠地を構えるファンド運営額68億ドルの大手VC投資会社Battery Ventures、Zalandoの共同創業者兼CEOであるルービン・リッターとロバート・ゲンツが新たに参画している。

Zalandoは、Rocket Internetが創業したファッションECであり、ここにも「Rocketer」ネットワークが顔を出している。2018年3月に1.6億ドルを調達したシリーズCには、Tencent Holdingsに加えて、ドイツ最大の保険会社でありヨーロッパ最大級の金融グループであるAllianz Groupのデジタル投資部門であるAllianz Xが参画。2019年1月に実施されたシリーズDでは、ニューヨークに本拠地を構えるファンド運営額154億ドルの大手VC投資会社Insight Venture Partnersがリードインベスターを務め、3億ドルを調達している。このラウンドには、シンガポールの政府系投資会社/SWFのGICも参画した。

2013年6月の25,000ユーロから始まり、N26が5年半で調達した金額は、計5.1億ドルに達する。N26の資金調達の軌跡を遡ると、ある意味で、スタートアップの王道を歩んで来たように見える。シードアクセラレーションプログラムへの参加、ピッチコンテストへの出場を皮切りに、スポンサーとして巻き込むVC投資会社を地場系最大手→グローバルで強大な影響力を持つ米系大手→デジタル金融系事業会社→大手機関投資家へとスケールアップさせて行くことで、事業拡大に伴い肥大する成長資金を確実に獲得して来ている。また、その過程で、メガベンチャーを育て上げた経営経験を有する起業家を投資家として巻き込んでいる点も興味深い。

この様に、資金調達での華々しい成功を実現して来たN26だが、有力投資家陣から成長のポテンシャルを期待されるに値する事業面での工夫が凝らされていたことも事実だ。

N26の成長戦略

N26の成長戦略

N26の成長戦略には、大きく3点特徴がある。1点目は、自社はUI/UXのデザインに注力し、バックエンドシステムやアプリケーションは他社との連携を通じ「ありもの」を活用する、スピーディーかつスケーラブルな商品開発。2点目は、プロダクト・サービスの多言語対応による早期の海外展開。そして3点目が、プレミアムアカウントの充実による、マネタイズの実現だ。

前述した通り、N26のプロダクトのユーザーメリットの一つは、スマートフォン上で十分と掛からずに銀行口座を開設出来ることだ。住所と身元を証明するパスポートがあれば、外国人を含む誰もが、思い立った時に簡便かつストレスフリーで銀行口座を開設出来る。実際に、筆者もベルリンでN26の銀行口座を開設したが、基本情報の入力から身元確認のビデオ電話(英語)を経てサービスが利用可能になるまで、一連のプロセスが極めて円滑に進み、伝統的な銀行での作業(実店舗に行き、必要書類を記入し、窓口に呼ばれるまで待ち、実際に窓口で担当者に諸々の確認をされる)と比較し、利便性の高さを実感した。

この様に、N26は、モバイルバンキングアプリとしてのUI/UX(アプリの使い易さだけでなく、その背景のユーザー導線の設計を含む)のデザインに工夫を凝らし、限られた開発リソースを、その向上に優先的に投入することで、迅速なユーザー獲得を実現して来た。

その一方で、プロダクト・サービスに必要なその他の機能も、既存プレイヤーとの積極的な連携を通じ、漏れなく実装して来ている。例えば、モバイルバンキングに不可欠な銀行業免許とバックエンド決済システムは、フランクフルト証券取引所に上場するグローバル決済ソリューションプロバイダーであるWirecardと提携することで、手中に収めている。また、N26のユーザーが実際の支払で使用するデビットカードは、MasterCardのものだ。

更に特筆すべきは、N26が、WirecardやMasterCardの様な大企業だけでなく、FinTechスタートアップも巻き込みながら広範なプロダクトを提供し、プラットフォーマーとしてのポジションを強固なものとしている点だ。例えば、国際送金は前述の英TransferWise、投資信託商品の提供はフランクフルト発のVaamo Finanz、預金商品はRaisin、保険商品はClark(共にベルリン発)と提携している。N26自身は金融商品の作り込みにリソースを投入しない代わりに、当面プラットフォーマーとしてユーザー獲得に注力することで、アライアンス全体ではトランザクションが増え、パートナー達とWin-Winの関係を構築し得るという構図だ。戦略性の高い打ち手だと言えるだろう。

2015年のプロダクトローンチ以来積極的なユーザー獲得攻勢を仕掛けて来たN26だが、ドイツ国外への展開にも早くから取り組んでいる。ローンチ当初はドイツとオーストリアに限定していたが、2015年12月にヨーロッパ6ヶ国(フランス、イタリア、スペイン、アイルランド、ギリシャ、スロバキア)に進出している。2019年2月15日時点で、N26の一般銀行口座が開設可能な国は22ヶ国に上る(キプロス、ラトビア、リトアニア、マルタを除くユーロ圏の15ヶ国+イギリス、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランドの7ヶ国)。

Brexitでも話題に上ったが、ヨーロッパ31ヶ国で構成されるEEA(ヨーロッパ経済領域)加盟国の何れかで銀行業免許を取得すれば、EEA内では自由に銀行業を運営出来る(「シングルパスポート制度」と呼ばれる)ため、ヨーロッパのFinTechスタートアップが地理的に事業を拡大することは、比較的容易ではある。その地の利を素直に活かし、N26は積極的な海外展開を推進して来たが、その実現に向け、アプリUIの表記のみならず、開設時のビデオ電話を含む各種カスタマーサポートでも多言語対応化させたことは、特筆に値する。尚、ヨーロッパ攻略 を一段落させたN26は、シリーズDで調達した3億ドルをもって、いよいよ米国に進出する。米国でのプロダクトローンチは、2019年上半期の予定だ。

2019年1月のシリーズDラウンド完了時の公表数値によると、ヨーロッパ22ヶ国で普及するN26のモバイルバンキングの会員数は、230万人だ。その内、約3分の1が有料会員だと言われている。一般的なフリーミアムモデルの有料会員率が10%程度だと言われている中で、N26の比率は非常に高い。N26は、「Standard」、「Black」、「Metal」という3つのプロダクトラインナップを有しており、後者ふたつがプレミアムアカウントで、それぞれ月額9.9ユーロと16.9ユーロとなっている。

「Black」の特徴は、海外で現地通貨をATMから引き出す際の手数料が無料になることと、N26の出資者でもあるAllianzが提供する様々な海外保険サービス(渡航先での病院診察費、飛行機が四時間以上遅延した際に掛かった費用、現金・現地での購入品・携帯電話が盗まれた際の費用、等の払い戻し)を無料で受けられることだ。主に、海外出張が多いビジネス層をターゲットとしている。

「Metal」は、「Black」のサービス内容に、N26が提携する特別パートナー企業のサービスを割引で受けられる機能が追加される。例えば、WeWorkのデスクを無料で使えたり、Hotel.comでホテルを予約すれば10%割引になったり、各種ECサイトで購入すると割引を受けられたりと、クレジットカードのプレミアムサービスに近い。N26のプロダクトは元々、デジタルリテラシーが高い層をアーリーアダプターとしてターゲティングしていることから、プレミアムサービスを早期に実装・充実させることで、有料会員率を高くし、マネタイズすることに成功としていると言える。

終わりに

ここまで、時価総額で現在ドイツ第2位のユニコーンスタートアップN26の成長の軌跡を見て来た。ドイツのスタートアップだから実現出来たのであり、日本のスタートアップが真似することは難しいという取組みも、少なくないだろう。

ここまで、時価総額で現在ドイツ第2位のユニコーンスタートアップN26の成長の軌跡を見て来た。ドイツのスタートアップだから実現出来たのであり、日本のスタートアップが真似することは難しいという取組みも、少なくないだろう。

例えば、EUという世界最大の経済圏・市場を後背地として持っている地の利や、ユーロという単一通貨の存在、EEAのシングルパスポート制度等が、積極的な海外展開・ユーザー獲得を後押しし、その潜在成長性の高さ故に、世界最高峰の有力投資会社・事業会社が巨額資金を出資するに至ったと考察することは出来る。また、Rocket Internetを起点に、経営ノウハウや人脈、資金のプールが、エコシステムの根底にアセットとして存在していたことも大きい。

一方で、創業当初から自国以外のマーケットを見据える経営者のグローバルな視野・視座や、海外展開を迅速に推進する実行力、プロダクトの作り込みよりもユーザー獲得を優先し、自社のUnique Selling Propositionとして定義した領域へと限定されたリソースを注力する一方で、大企業・スタートアップを問わず他社と連携し「ありもの」を活用する商品開発・アライアンス戦略の巧みさ、マザーマーケットと近接市場を先に攻略してから世界最大の市場である米国に進出する優先順位付け等、模倣し得る取組みも少なくないと考えられる。

スタートアップエコシステムの累積経験・規模の観点から、日本にとって、米国は「憧れ」に近い存在になってしまい得る一方、ドイツは「ライバル」として捉えられ、スタートアップにとっても現実的なお手本になり得るのではないか。また、ドイツの潜在成長性が高いスタートアップは、日本のVC投資会社にとっても、良い投資対象になるのではないかと考えられる。

寄稿:伊澤範彦(ローランド・ベルガー)

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