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顧客サポート向け有人サポートシステム「MOBI AGENT」などを提供するモビルスのIPOサマリー

大手コンタクトセンター向けチャットサポートシステムを中心としたコミュニケーションプラットフォームの開発などを提供するモビルス株式会社(以下、モビルス)が東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2021年7月29日で、同年9月2日に上場を果たす。

同社は「テクノロジーでサポートを新しく。」というミッションを掲げ、コンタクトセンターに向けてSaaSの提供と顧客の目標ROI(Return On Investment)を実現する上で不可欠なコンサルテーションサービス、データ構築サービスなどを展開している。2011年9月の創業からおよそ10年での上場となる。

主にコンタクトセンター(注1)に向けてSaaS型の独自ソリューションの提供と、顧客の目標ROI(Return On Investment、投資収益率)を実現する上で不可欠なコンサルテーションサービス、データ構築サービスおよびカスタマイズ開発サービスなどを含むプロフェッショナルサービスを展開している。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書の部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

注1:コールセンターは基本的に電話での対応のみを行う場所だが、コンタクトセンターでは電話に加えてチャット、メール、SNS、Fax、ウェブページなど複数のチャネルでユーザー対応を行う。

売上高は4年間で約3.6倍に成長。営業利益も黒字化を達成

上図は過去5年間の売上高と営業利益の推移である。売上高は2016年8月期から2020年8月期の4年間で、約3.6倍に成長している。営業利益は2020年8月期時点で黒字転換しており、2021年においても既に1億円を突破。

新型コロナウイルス感染症の拡大により個人消費・企業活動が停滞しており、徐々に経済活動再開に向けた動きが見られるものの、依然として先行きは不透明な状況となっている。

その一方で、国内企業の人手不足感の高まりやコスト削減への圧力から、コンタクトセンターの効率化および自動化へのニーズは引き続き高く、また新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うリモートワークに対応したシステムのニーズが急速に高まりをみせている。これらの背景が売上高、営業利益ともに堅実な成長をみせている要因となっている。

SaaSソリューション事業の単一セグメントで5つのサービスを展開

同社は従来の電話を中心とした人の労力に依存したサポートにおける様々な課題を解決し、顧客サポートの現場に携わる人々の助けとなるソリューションを開発・提供している。また、SaaSソリューション事業の単一セグメントで、その内容は以下の通りだ。

(1)SaaSサービス

①モビエージェント(MOBI AGENT)
AIとオペレータの最適なワークシェアを実現するコンタクトセンター向けチャットサポートシステム。従来の電話(音声)による対応ではなく、ウェブやLINEをはじめとした様々な顧客チャネルからのチャット問い合わせに対応している。

モビボット(MOBI BOT)
ペイメント(決済)・CRM・RPAなどの外部システム連携が可能なチャットボットシステムであり、基本的には「モビエージェント(MOBI AGENT)」と組み合わせて利用する。国内外の主要な対話AIエンジンにいち早く連携し、顧客の希望に沿ったAIエンジンとの連携が可能となっている。また、CRMや基幹システムとの連携による顧客認証・個別自動対応も可能な独自のシナリオ型ボット機能を保有しており、顧客企業のニーズに従ってカスタマイズを行うことが可能。

③モビキャスト(MOBI CAST)
今までの一方的なLINE広告に欠けていた双方向コミュニケーションを可能とするために、年代、性別などの顧客情報やアンケート情報に基づいて、LINEユーザーにテキストやスタンプ、画像・動画などのリッチコンテンツを送ることができる、LINEセグメント配信システムであり、基本的には「モビエージェント(MOBI AGENT)」と組み合わせて利用する。

④モビボイス(MOBI VOICE)
電話での受注・問い合わせ等を自動受付し、通話内容のテキスト化やメール通知を行うことを可能とするボイスボットシステム。

⑤ビジュアルIVR(Visual IVR(注2))
ユーザーのホームページやスマーフォンのブラウザ上で、電話、ウェブチャット、LINE、チャットボット、ボイスボット(電話自動応答)など、複数ある問い合わせチャネルを一覧で表示し、お客さまの目的や受電状況に応じて最適な窓口へ誘導できるシステム。長いガイダンスで待たされるという音声IVRへの不満を解消し、FAQやチャットボットなどで自己解決を促すことで、顧客の満足度を高めると同時にコンタクトセンターの呼量(注3)を減らすことができる。

注2:IVRは「Interactive Voice Response」の略
注3:単位時間あたりの電話使用量

(2)プロフェッショナルサービス
SaaSサービスの提供のみではなく、初期導入サポート(初期診断支援・目標値設定・プロジェクト設計等)、カスタマイズ開発、オペレータおよび管理者向けトレーニング、コンサルティング、KPI分析サポート、AI教師データ作成、PDCA支援などのサービスを提供している。
(3)イノベーションラボサービス
将来的な商品化や新たなビジネスに繋がる可能性のあるシステム開発について、新たなビジネスの機会を創出する目的のもとコミュニケーション領域を中心とした受託開発を行っている。

主力事業はSaaSサービスの「MOBI AGENT

カテゴリー別売上高は、2021年8月期第3四半期時点でSaaSサービスが約5割を占めており、プロフェッショナルサービスが3割、イノベーションラボサービスが2割となっている。

主要事業であるSaaSサービスは、コアプロダクトである「MOBI AGENT」が順調にユーザー企業数を伸ばしており、金融、メーカー、サービスと業界を問わずにリーディング企業に採用された。また、AI電話自動応答システム「MOBI VOICE」は、BCP(事業継続計画)対策やバックオフィス業務の効率化などの背景から、ユーザー企業数が拡大してきている。

2021年5月末時点で、同社のSaaSプロダクトの契約数は209件(前年対比163%)となった。また、プロフェッショナルサービスは、カスタマイズ案件獲得が堅調に推移。イノベーションラボサービスは、既存顧客から継続的な発注があり、順調な推移を見せた。

国内コンタクトセンター向けCRMソリューション市場は今後も拡大傾向に。BPOサービス市場にも注目

矢野総研の「コールセンター市場総覧2020によると、同社の属する国内コンタクトセンター向けCRMソリューション市場は前年度比5.7%増の5,073億円となっている。今後もゆるやかに拡大基調が続くものと考えられており、2021年度予測では市場規模は5,285億円となると予測されている。

また、コンタクトセンター向けBPO(​​ビジネスプロセスアウトソーシング)サービス市場においては、オペレータの採用難や局地的な風水害への対応、電話やメール離れによる旧来の問い合わせチャネル利用率低下などの課題がある。これらに加え今回のコロナ禍により全国レベルでのBCP対応や対面窓口業務をコンタクトセンターで引き受ける必要性など、新たな課題が出てきた。

同調査によると、2021年度のコンタクトセンター向けのBPOサービス市場の市場規模は1兆281億円程に成長する見込みである。2019年度の同市場規模の見込みである9,963億円から約300万円伸びる予測だ。オペレーションの効率化によって、今後は同市場の一部がコンタクトセンター向けCRMソリューション市場に取り込まれていくと同社は考えている。

ARRやサブスクリプション売上高、契約数などが重要指数

同社は、サブスクリプション型のリカーリングレベニューを継続的に成長させていくことを基本方針としている。この達成状況を判断する上で、ARR(注4)、サブスクリプション売上高とサブスクリプション売上高比率、契約数、契約あたりの平均MRR(注5)、解約率を重要な指標としている。

既存の契約あたりの平均MRRの向上と契約数の拡大を目指すために、コンサルティングとカスタマーサクセス活動の強化により、顧客の問い合わせ対応でのノンボイス対応比率の上昇をサポートすることによるオペレータIDの追加、提案力強化によるサービス追加、新規オプションの開発に注力するとしている。

また、インサイドセールスとフィールドセールスの人員増強による営業体制の拡充や新規代理店の開拓による代理店商流の強化、カスタマーサクセス活動の強化によるチャーン抑止などによって契約数の拡大を図るとしている。

注4:Annual Recurring Revenueの略語で、毎年経常的に得られる同社製品の月額利用料の合計額。四半期末月のMRR(毎月経常的に得られる同社製品の月額利用料の合計額)を12倍することにより算出
注5:Monthly Recurring Revenueの略語で、毎月経常的に得られる同社製品の月額利用料の合計額

開発体制の強化とサービス認知・ブランド力の向上に注力

同社は事業上および財務上の対処すべき課題として以下の5点をあげている。

①新技術への対応、開発体制の強化
最先端のAIテクノロジーに対応した新しいサービスを開発する体制を構築するために、最新テクノロジーの把握やエンジニアスタッフの教育、R&D専門組織の強化を図る。
②認知度およびブランド力の向上
認知度の向上とブランド力の強化のため顧客ニーズへの対応やサービスの強化に努める一方で、営業活動、広告宣伝活動を積極的に展開する。
③カスタマーサクセスの実現
サービス導入後の継続的な利用のため、顧客への成功体験や付加価値の提供することが必要だとし、カスタマーサクセス実現を目的とした担当者の設置や実現体制の構築・共有の強化を図る。
④コーポレート・ガバナンス体制の強化
経営の公平性や透明性、健全性を確保するための社外取締役や監査役監査体制、内部監査、会計監査・内部統制システムの整備などにより強化を図る。
⑤人材の確保、育成
今後事業規模を更に拡大していくための優秀な人材の確保・育成や評価制度、社内キャリアパス制度の構築に努める。

8回の資金調達を実施し、累計で129,300万円を調達

同社は三菱UFJキャピタルSMBCベンチャーキャピタル静岡キャピタルアニコムキャピタルケイエスピーなどのVCからの資金調達を多く実施している他、LINE Ventures文化放送オウケイウェイヴアイテック阪急阪神トランスコスモスなどの事業会社からも資金調達を実施している。

2020年6月にはエヌ・ティ・ティ・コムウェアから約4億5,000万円を調達するとともに顧客サポート支援のソリューション開発に関する業務提携を締結。AI電話自動応答システム「モビボイス(MOBI VOICE)」の開発に加え、IT活用による業務効率化やサービス品質の向上、人手不足やBCPへの対応を急ぐとしていた。

その他ソフトウェア協会グローバル・イノベーション・パートナーズが投資家として参画しており、これまでに8回の資金調達を実施し、累計で12億9,300万円を調達している。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は2021年9月2日を予定しており、上場する市場は東証マザーズとしている。また、大和証券が主幹事を務める。

今回の想定価格は、1,060円である。調達金額(吸収金額)は13.4億円(想定発行価格:1,060円 × OA含む公募・売出し株式数:1,267,000株)、想定時価総額は、59.1億円(想定発行価格:1,060円 × 上場時発行済株式総数:5,570,844株)となっている。

公開価格:1,280円
初値:1,830円(公開価格比 +550円 +43%)
時価総額初値:101億9,400万円

※追記:2021年9月6日

筆頭株主は前代表取締役社長のラン・ホアン氏で、全体の31.12%の株式を保有。次いで阮明徳氏が10.47%の株式を保有している。

また、富士通の運営するグローバル・イノベーション・ファンドや三菱UFJキャピタルKSPSMBCベンチャーキャピタルなどのVCが名を連ねている。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書の部を参考

 

 

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