起業するとしたら、年齢が若いほうが有利か、はたまた年齢とともに積み重ねた経験があるほうが有利か。
そのような議論はよく耳にするが、実際、ミドルエイジ(36歳以降)のほうが成功率が高い。
米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院が2018年に公開した、270万人の起業家を対象にした年齢についての研究によると、創業時の平均年齢は41.9歳。IPOもしくは買収された企業の平均年齢は46.7歳である。(*1)
また、同じく2018年に発表された米国のthe National Bureau of Economic Researchによると、創業時にミドル層であった起業家のほうが若年層よりも成功を収めている傾向にあるという調査結果も出ている。(*2)
国内においても、ミドル層の起業を後押しする動きが出ている。今年8月、独立系ベンチャーキャピタル「XTech Ventures」が50億円規模の1号ファンド(XTech1号投資事業有限責任組合)を組成。平均投資予定額は約1億円。既存産業やIT業界のミドル層の起業をサポートするとの方針を示している。
なお、代表取締役の西條晋一氏も、創業時は44歳。ミドルエイジでの起業だ。
今回は、ミドルエイジで創業した起業家のうち、累計10億円を調達した企業を紹介する。
*1)ケロッグ経営大学院:How Old Are Successful Tech Entrepreneurs?
*2)Age and High-Growth Entrepreneurship:https://www.nber.org/papers/w24489
累計10億円以上調達したミドルエイジ起業家

創業者:吉野 巌
起業時の年齢:40歳
調達額:1,680(百万円)
創業者:高岡 本州
起業時の年齢:44歳
調達額:1,400(百万円)
創業者:出村 太晋
起業時の年齢:44歳
調達額:1,200(百万円)
ミドルレイヤー起業家が示唆する未来

起業するにあたり、決して若さが有利というわけではない。
創業から5年間の成長率で上位0.1%に入るスタートアップの場合、創業者の創業時の年齢は平均45歳であり、新規株式公開(IPO)や事業売却でエグジットに成功したスタートアップも、創業者の年齢は同じように高かったという米国の調査結果もある。すなわち、最も成功している企業に関しては、創業者の平均年齢は下がるのではなく上がるのだ。(*3)
もちろん会社の規模やフェーズによって、求められる経営手腕は異なる。しかし、裁量のある仕事を任された経験に富むミドル層は、チームビルディングに長けていたり、自身の能力が最大限に発揮できる分野を熟知している分、安定した経営が望める。
また、取引先候補の会社に学生時代の同僚がいる、それも責任あるポジションについていることが多く、交渉のキーマンにアクセスしやすいというメリットもある。
このように、年齢を重ねているが故に切れるカードは意外と多い。
とりわけ、今回紹介した10億円調達という結果を出しているミドルエイジの起業家は、今後起業を視野に入れているミドル層に希望を与える存在と言える。
3*)出典:https://hbr.org/2018/07/research-the-average-age-of-a-successful-startup-founder-is-45