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ライドシェアサービスだけではない。米Lyftの上場分析

ライドシェアサービスを主軸に事業を展開するLyft。北米地域においてUber最大のライバルとされており、240億ドル越えのビッグIPOとして3月28日付でNASDAQデビューを飾った。

ライバルのUberよりも先にIPOを行なった形となる。では、Lyftは一体どのような企業なのだろうか。

ライドシェアサービスを主軸とするLyftとは?

Lyftはライドシェアサービス「Lyft」を主事業に成長を遂げている企業だ。同社は“Improve people’s lives with the world’s best transportation.”のミッションを掲げている。

成長の背景としては、米国での主要移動手段が車であることが挙げられる。また、一般家庭で車を所有するコストが住居に次いで2番目であることも挙げられるだろう。

Lyftの共同創業者であるグリーン氏とジマー氏は以前、Zimrideというサービス名で大学や企業向けにライドシェアサービスを提供していた。こちらの事業は2012年の「Lyft」立ち上げ後、2013年にEnterprise Holdingsへ譲渡している。Lyftの事業、一般消費者向けのライドシェアに集中したのだ。

米国でLyftやUberは有名だが、日本では見かけることはない。理由は、日本だと「白タク(第二種運転免許を持たないタクシーの営業行為)」が法律で禁止されており、同事業で収益性が担保できないからだ。Uberは、2013年に国土交通省より行政指導をうけ撤退を余儀なくされた

しかし、日本にもLyftやUberと全く同じではないものの、配車やライドシェアの観点で類似するサービスを提供する企業は存在する。配車の観点ではJapan Taxi、MOVが類似しており、アプリひとつでタクシーの予約・手配・支払いが可能である。

また、ライドシェアではCREWやnottecoが挙げられ、いずれも近くを走るドライバーとサービス利用者をマッチングする。CREWやnottecoが規制対象にならない理由は、ドライバーが無償でサービスを提供する(運転の実費は請求可能。運転への謝礼は任意)からだ。日本でも少しずつLyftのような特徴を持つサービスが台頭しつつある。

ライドシェアとカーシェアとの違いとは

ライドシェアサービスは、シェアリングサービスとして近いイメージをもつ、カーシェアサービスと混同されがちなので、簡単に特徴を整理する。

ライドシェアとカーシェアの最大の違いは共有するものの違いだ。直訳するとライドシェアは車での移動を共有し、カーシェアは車を共有する。そのため、ライドシェアはタクシー、カーシェアはレンタカーの代替サービスとして注目されている(参考:https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/human-society/20180601_020125.pdf)。

では、ライドシェアはなぜこれほど広まったのだろうか。まず、サービス利用者に対してのメリットが2点ある。

1点目は普段から車を使わなければ移動に困る人も、車を保有しなくても良い点。つまり、自家用車の購入・メンテナンス費用を省くことができるのだ。

とくに、米国において1年に平均9,500ドルが車に各家庭で使われていることを考えると、この負荷を軽減できることはサービスとしてインパクトが強い。

2点目はどこでも手軽に安全にサービスが利用できる点だ。LyftやUberはオンデマンドサービスなので、土地勘がなくてもアプリが入っていれば、どこでもサービスを利用できる。

また、利用者がドライバーをレーティングでき、Uberならば直近500回の運転でレーティングが平均4.6を下回ると職務停止、Lyftは制限こそないものの平均が4.8以下のドライバーには注意勧告が促されるという。

ドライバー情報が事前にアプリを通して送られて来るので、その車が嫌ならば違う車を利用することも可能。これによって安全性が担保できているのだ。

一方、供給者に対しては労働機会が創出され、極端な場合、本業に通勤中のドライバーもサービスを提供することがある。例をあげるとタクシードライバーから本業をLyftに切り替えた方や、アルバイト感覚でLyftのドライバーを終日行う学生もいる。

Uberとの違いは

Lyftは、ライドシェア以外にもさまざまな交通手段を提供する情報プラットフォームだ。サービススタート時は利用毎に料金を支払うモデルだったが、現在はサブスクリプション型の料金体系も一部導入している。

LyftとUberの最大の違いは、コーポレートスローガンとそこから派生した事業ポートフォリオだ。Lyftはこれまで述べたように人の交通の利便性を向上する事業を展開してきた。対するUberは、純粋に交通にこだわっているわけではなくUberを通してデリバリーや物流関連事業を行なっている。

似通った交通サービス提供プラットフォームを持つ両社だが、派生事業が異なる点が両社の違いだ。

下図がLyftのビジネスモデルである。

業績を左右させる数字

Lyftの成長は各四半期ごとの

①アプリ利用者数
②総乗車回数
③1回あたり平均売上単価

によって特徴付けられる。

①アプリ利用者数

有価証券報告書資料を参考に編集部が作成

Lyftの業績を握るのは、アプリ利用者数であるアプリを通してユーザーがライドシェア・自転車・スクーターを利用する際の手数料を得るビジネスだからだ。

Lyftが上場に伴って米国証券取引委員会(以下、SEC)に提出した資料によると、アプリ利用者数は2016年3月期から2018年12月期の3年間で5倍に増えている。ここでのアプリ利用者数の定義は、各四半期ごとに一度でもLyftを利用したユーザーのことを指す。

②総乗車回数

有価証券報告書資料を参考に編集部が作成

また、業績を支える総乗車回数も増加傾向にある。2016年3月期末に2,900万回だった総乗車回数は、2018年12月期末には6倍弱の1億7,840万回まで伸びた。

2018年9月期末から12月期末までのアプリ利用者及び乗車回数の増加は、Motivateの買収により、Lyft Bikes(レンタル自転車・スクーター)事業を始めたことによるものとされる。

Motivateは北米最大最古のシェア電動自動車業を営んでおり、ニューヨーク・ワシントン・サンフランシスコにて強大なユーザー数を誇る。

③1回の平均売上単価

有価証券報告書資料を参考に編集部が作成

Lyftの平均売上単価はここ3年(2016年度始めから2018年度終わり)で、2倍強まで増えた。①、②にも言えるが、平均売上単価の上昇はLyftが広げた強大なネットワークに寄与することが考えられる。

2016年度の始めは200都市(米国のみ)あまりにしかサービスは提供されなかったが、2018年には300都市(加国にも進出)にLyftのサービスが提供された。客の長距離移動が可能になったことで平均客単価が上昇したと考えられる。

これらの指標からLyftは平均客単価とアプリ利用者数を増やすことにより、業績を伸ばしてきたことが伺える。

財務は赤字だが健全なのか?

Lyftの売上高は大幅に伸びており、アプリの利用者数・総乗車回数・1回利用平均単価の増加が影響している。2018年度末の決算では売上高が前年比2倍伸び、21億ドルを突破した。その一方で同社の当期純損失は拡大しており、9億ドルを越える赤字を計上している。

2018年度の当期純損失は販管費の中でも広告宣伝費が主要因である。売上総利益(売上高 ー 売上原価)は9.1億ドルであるのに対し、販管費が18.9億ドル発生し、営業損失が△9.7億ドル。販管費の中でも広告宣伝費が8億ドルを占めており、42.5%に当たる。

昨年度の広告宣伝費は販管費の51.1%を占めていたため、比率は減少は見せている。ただ、依然として拡大期にあるLyftの販管費の大部分を広告宣伝費が占める構造は変わっていない。

また、当期純損失に売上原価の増加も関連していると考えられる。売上原価の大部分はライドシェアの車両、シェア自転車やスクーターにかかる保険費用だ。現在、Lyftのネットワーク拡大期にあり、今後も先行投資として売上原価は増加することが予測される。

さらに上場参考資料からは、同社の研究開発費も膨らんでいることが見て取れる。そのため、当期純損失を計上してはいるものの、事業拡大を目指す積極的な姿勢が見られる。

現在は先行投資が目立っている状況だが、今後プラットフォームを利用するユーザーが増加すれば売上高の上昇を牽引し、収益性も改善されるであろう。

バランスシートと主要財務指標について

有価証券報告書資料を参考に編集部が作成

貸借対照表と主要な財務指標は上記の通りだ。Lyftは当期純損失が発生しているため、収益性は非掲載である。安全性の指標は流動比率が160%、自己資本比率は61%ほどである。よって、同社は短期の支払い能力は比較的高く、自己資本比率が50%を超え比較的高いといえるだろう。

事業の効率性を表す総資本回転率だが、こちらは0.57回となっている。日本のサービス業の総資本回転率が0.87回であり、日本の情報通信業では平均が1.04回なので、Lyftの数字は低水準だといえる。

この原因は、自動運転版のLyftのサービスがまだ大々的にリリースされておらず、固定資産が売上高に直結していないことが考えられる。自動運転分野の事業化で売上が立てば、既存のサービスとともに売上高が伸長するので、総資本回転率の改善は見られそうである。

日本のライドシェアへの期待

Lyftの当期純利益は赤字だが、今までの評価とこれからの将来性は十分高い。

冒頭でご紹介したように日本の中でもライドシェアや配車サービスは登場しつつあり、民間での動きは活発である。また、民間からだけでなく、政府や法律面からも国内でのライドシェア普及を目指す言葉や動きが見られる。

2015年10月20日、安倍首相は「日本を訪れる外国の方々の滞在経験を、より便利で快適なものとしていくため、過疎地等での観光客の交通手段として、自家用自動車の活用を拡大する」と国家戦略特別区域諮問会議で述べている。

2018年には、楽天の三木谷氏が代表理事を務める新経済連盟からも「ライドシェア新法」の提案を国土交通大臣とその関係大臣に提出した(参考:https://jane.or.jp/assets/img/pdf/ride-sharing_proposal_2018.pdf)。同提案ではライドシェアリングの必要性から実現のための法案を提案している。

日本版Lyftが生まれるか、法規制が緩まる中で注目である。

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