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世界標準のハードとOSを狙うリープマインドの正体

人口知能
AI
IoTは注目を集めて久しいが、その二つの言葉をかけ合わせた「DoT」という言葉を提唱するスタートアップがある。それが世界標準のハードとOSを開発するAIスタートアップ、株式会社リープマインド(以下 リープマインド)だ。DoTは、ディープラーニングオブシングスの略で、全てのモノがディープラーニングを行う世界をさしている。

DoTの世界においては、あらゆるモノが学習をし、適切な判断を下してくれる。例えば、朝起きるとちょうど良い光の加減で照明をつけてくれて、気温や天候を加味した服のコーディネートを提案してくれる。リビングでは、ベストな音楽やテレビを自動的につけてくれる。機械を意識して操作しない夢のような世界だ。

DoTの具体例の一つとして挙げられるのは全自動運転車だが、実現には未だいくつかの課題がある。その中でも大きなものは、リアルタイム性と通信コストだ。全てのデータをクラウドに送り、処理をするのでは間に合わずコストもかかりすぎてしまうのだ。

そこで注目されているのが、リープマインドが注力するエッジコンピューティングという技術。クラウドコンピューティングが、さまざまなインターネット内の接続ポイントを経由し、クラウドサーバーに情報を送信するのに対して、エッジコンピューティングは、出来るだけデバイスに近いところで情報を処理をしてしまい、処理結果をクラウド上に送信するというものだ。例えば、携帯電話事業者のコアネットワーク内にサーバーを設置するなどが挙げられる。これにより、リアルタイム性とコストのネックを解消し、より多くのものをAI化させる事が可能になるのだ。

リープマインドは、エッジコンピューティングという切り口から、夢のようなDoTの世界の実現を目指している。

同社は、50人に満たない規模であるにも関わらず世界各国から応募メールが届き、社内には世界10カ国以上から集まった人材が働いているという。

また、アメリカで有名な調査会社CBINSIGHTSによる、全世界を対象にした「革新的な人工知能技術に取り組んでいる最も有望な100社」の中にも選出された。

世界から注目を集めるリープマインドは、一体何をやっているのか。

リープマインドのビジネスモデル

リープマインドが行っているのは、「DeLTA-Lite」と呼ばれる開発ソリューションの提供と、あらゆるモノでのディープラーニングを可能にするデバイス「Blackstar」の提供だ。

リープマインドのビジネスモデル図

ビジネスモデルは非常にシンプルで、「DeLTA-Lite」と「Blackstar」を提供する対価として、収益を得ている。

簡単にAIを実装出来るソフトとハード両軸で開発を行っていることを特徴としている。

組み込みでのディープラーニングを可能にするデバイス「Blackstar

FPGAチップイメージ写真
強みの一つが独自に開発を行っているデバイス「
Blackstar」だ。

Blackstarの特徴の一つは、使用するチップにある。ディープラーニングと聞くと、NVIDIA(注1)の開発するGPU(注2)のチップが有名だが、リープマインドはFPGAを基盤にした専用チップを用いている。

FPGAは回路のプログラミングが可能という特徴をもっており、何度でも目的に合わせて最適化を行う事が出来る。リープマインドはそのチップをディープラーニングに最適化させているのだ。

そのチップを用いる事によって、GPUCPU(注3)よりも電力効率が良く、処理速度も速くなるという。

さらに、もう一つの特徴は、学習モデルの圧縮だ。物理的に小さいデバイスでディープラーニングをさせるには、いかに処理量を減らした学習モデルを組み込むかが大きな鍵となる。

Blackstarは、学習モデルを最大500分の1まで自動圧縮する機能を搭載。これにより、データの精度を落とさない範囲で自動で圧縮を行い、デバイスが小さいために、これまではディープラーニングを組み込むことが難しかったデバイスにも、組み込むことを可能にした。

ディープラーニングに最適化されたFPGAチップと学習モデルの圧縮機能により、GPUと比較して電力効率12.6倍、速度はCPUと比較して10倍以上という性能を記録し、リアルタイム性、消費電力という面において従来のエッジコンピューティングよりも優れているといえる。

1:アメリカ半導体メーカーで、GPUに強みを持つ企業。AI向けのGPUを開発する事で、低コストでのAI処理を可能にした。
2グラフィックス プロセッシング ユニットの訳。リアルタイムの画像処理に特化し、もともとはゲーム用に使われていたチップで、近年ではAIに用いられる事も非常に多い。
3:セントラル プロセッシング ユニットの訳。パソコンの頭脳にあたり、大部分の演算を処理するチップ。

ディープラーニングの世界を加速させる「DeLTA-Lite

リープマインドのもう一つの強みが、エッジコンピューティングを支えるための開発プラットフォーム「DeLTA-Lite」も提供していることだ。

DeLTA-Lite」は、リープマインドが独自に開発をしたアルゴリズムをチップに実装し、管理までを行えるプラットフォーム。「DeLTA-Lite」を用いる事によって、知識がそれほどない人にとっても簡単にデバイスにディープラーニングを実装する事が出来る。また、SaaSのモデルをとっているために、登録デバイスを一元で管理する機能も併せ持つ。

さらには、ディープラーニングモデルを公開し、他者が利用する事が出来るマーケットプレイスをつくる構想も進んでいる。DoTの世界を実現するために、より簡単に精度の高いディープラーニング使用できるようになるための土台づくりを行っているのだ。

あらゆるものが人工知能に繋がるDoTの世界

DoTの世界
編集部がポイントだと感じているのが、この学習モデルを全てデータとして溜め込んでいける事にある。

あらゆるものにFPGAチップを埋め込み、ディープラーニングさせていく。そしてそのデータは全て圧縮され、「DeLTA-Lite」上に溜め込まれていく。そして、溜め込まれた学習データを、独自のマーケットプレイスを通じてさまざまな企業に提供していく。これがリープマインドの描くシナリオだ。

企業側は、予め学習モデルがあり精度の高いディープラーニングを用いたいであろうから、世界中の自動車や電機メーカーからリープマインドは支持されるだろう。

少し、期待混じりの妄想かもしれないが、これは十分に可能な世界観だと編集部は考えている。

1970年代にパーソナルコンピューターが普及した時には、チップのIntelOSMicrosoft、マシンのIBMが協働する事で市場を一気に開拓をした。

同社はこれから必ず来るであろうIoTAIの世界で、ハードとOSを提供しており、世界のプラットフォーマーとなる可能性を十分に秘めている。人間が機械を意識しないDoTの世界を進める日本発、世界基準のスタートアップとして今後もリープマインドを応援したい。

 

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