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日本最大級クラウドソーシングを手掛けるランサーズIPOサマリー

昨今、働き方改革が話題となっている。政府としても、2019年6月に閣議決定された成長戦略実行計画案の内容として、「柔軟で多様な働き方の拡充」、「兼業・副業の拡大」が盛り込まれた。こうした流れを受けて、多くの企業が在宅勤務や副業支援の制度を導入する動きが活発化している。

2008年に設立したランサーズ株式会社(以下、ランサーズ)は、「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」をビジョンに掲げ、仕事を依頼したいユーザー(クライアント)と仕事を受けたいユーザー(ランサー)をオンライン上でマッチングさせるプラットフォーム「Lancers」の運営を行う。同社は2019年11月13日に東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が承認され、同年12月16日に上場を果たした。

本記事では、ランサーズの事業や財務状況から、同社の成長戦略を紐解いていく。

近年の副業に関する考え方とは?

日本政府による国策としての働き方改革、個人の働き方に対する価値観の変化など、「働き方」に対して様々な変化が起こっている。こうした流れを受けて、企業においても全社的な在宅勤務や副業支援制度を導入するなど、従来はなかった新しい働き方を推進する企業が年々増加している。

日本経済新聞が2019年に実施したアンケートによれば、副業を認めている企業が全体の約50%に達している。また、フリーランス白書2018年によると個人においても、現在副業をしていない会社員のうち、約40%が「副業に意欲的である」と回答をしている。

このような、高まりを見せる副業の需要を取り込んでいるのがランサーズである。

「働き方の改革」を目指す同社の事業内容

同社は、インターネットの可能性を最大限に活かして、雇用形態に依存しない「働き方の改革」を実現するべく事業活動を行っている。

同社が運営するサービスは、クライアントからの仕事依頼(発注)フローの違いによって、オンラインスタッフィングプラットフォーム領域とクラウドソーシング領域の2つに分けられる。前者では、クライアントがフリーランスの持つスキルや実績をもとに、特定のフリーランスを選択して依頼を行う。一方で、後者はクライアントが不特定多数のフリーランスに対して公募を行う。このように、特定のフリーランスに依頼するのか、不特定のフリーランスに依頼するのかで、領域が異なる。

(1)オンラインスタッフィングプラットフォーム領域
依頼する仕事の内容の専門性が高く、依頼単価が高いことが特徴。クラウドソーシング領域と比較すると依頼単価は約4倍。主な仕事依頼内容としては、システム開発・運用、デザイン、クリエイティブ制作、記事作成などが挙げられる。続いて、この領域に属する同社の3つのサービスについて見ていく。

①「Lancers(プロジェクト方式)」
オンライン上で、企業と個人が直接マッチングするサービスで、あらゆるクライアントのニーズに対応している。クライアントの依頼に対して、ランサーから見積もりが提案され、クライアントは見積もりや評価・実績から1名を決定して、案件を開始する。プロジェクト方式では、報酬を「固定報酬」と「時間報酬」から選択することが出来る。
②「Lancers Agent」
クライアントのニーズに対して、フリーランス人材を紹介するサービス。クライアントとランサーとの間に同社のエージェントが介在し、マッチングを成立させる。
③「Lancers Outsourcing」
依頼内容の要件定義ができない、適切なランサーの見つけ方がわからないなどの理由で、直接依頼が困難なクライアントに対して、同社が直接依頼を引き受ける法人向けのサービス。
④その他
・「Lancers Pro」
「Lancers」での直接依頼が困難な場合に、外注体制構築のアドバイスやプロフェッショナル人材の紹介を専属アドバイザーが行うサービス。
・「Lancers Assistant」
クライアントによるBPOニーズ、もしくは定額での業務委託ニーズに対応して、秘書・営業・Web制作・広報といった業務をフリーランスに一括して依頼することができるサービス。このサービスは3ヶ月〜12ヶ月の定額月額利用料制となっている。
・「Lancers Enterprise」
多数のフリーランスを自社独自の要件にあわせて発注管理したいという大企業のニーズに対応して、2019年5月に新規リリースしたサービス。担当者ベースではなく、会社ベースでサービスを活用することが出来て、さらにフリーランスの評価や実績を会社内で共有することができる。
(2)クラウドソーシング領域
クラウドソーシング領域は、不特定多数のランサーに仕事を依頼する方式のサービスであり、納品物を元に仕事の受発注を行う形態。具体的な仕事依頼内容としては、データ入力や記事作成、デザイン制作など、比較的依頼単価が低い案件が主体となっている。
「Lancers(コンペ・タスク方式)」
コンペ方式は、クライアントが複数の提案の中から意向に沿ったものを選ぶ方式。最終完成物に近い形でランサーからクライアントへの提案が行われること、採用された場合の報酬額が予め決められていることなどがプロジェクト方式との主な違い。タスク方式は、多数のランサーが同時に一つの依頼作業を行う仕事方式。一人あたりが行うべき仕事量が少なく、専門性が高くない仕事に向いている。

他のクラウドソーシングにはない強みとは?

クラウドソーシングを担う企業のなかで、同社が選ばれるのはなぜだろうか?他社との差別化ポイントは大きく3つある。

①信頼を可視化するテクノロジー
実名、顔写真の入力が推奨されているため、信頼性の高いランサーが多数在籍している。プロジェクトの完了率や評価などを含めた基準をクリアした、スコアの高い「信頼ランサー」から順にクライアントに表示される仕組みになっている。
②信頼を活かすマッチングアルゴリズム
AIによって依頼内容と金額を過去の類似案件データの成約率や市場データなどから、適正な価格の案件を識別できる仕組みになっている。ランサーに関してもクライアントのニーズに応じて信頼度の高い順番に表示される仕組みになっている。そのため、効率的に仕事を探すことが出来る。
③信頼できるランサーを増加・定着させる仕組み
フリーランスを続ける際に弊害となる、福利厚生の提供や、法務や経理などの管理業務のサポートなどを行うサービスがある。また、フリーランス同士のコミニュティの活性化や教育機会の提供、チーム単位でのクライアントから依頼を受ける仕組みなどの提供を行うことで、フリーランスが継続的に利用できるような環境づくりを行っている。

ビジネスモデル

ビジネスモデルは上図のようになる。クライアントとランサーとの依頼が成立した際の手数料が主なマネタイズとなっている。10万円以下は20%。10万円から20万円は10%。20万円以上は5%となっている。また、仕事が成立しない場合には、手数料は発生しない仕組みになっている。

成長を続ける流通総額と売上高

上図は、同社グループのサービス経由で取引される金額の総額である流通総額の推移である。図からわかるように流通総額は5年間で約300%成長している。流通総額を構成するクライアント数とクライアント単価に関しても直近5年間では急速な成長を続けているため、単価と会員数の両面からの相乗効果によって、流通総額が成長していると考えられる。

直近5年間の売上高と当期純利益が上図だ。売上高は直近3年間では上下しているものの、4年前と比べると約3.5倍と大きく成長していることがわかる。また、当期純利益に関しては、広告宣伝費や一般管理費が高いことから、毎期純損失は計上しているものの、グラフから分かるように損失額は年々改善されている。

安全性指標が高い、BS概観

貸借対照表からわかる主要指標が上図となる。広告宣伝費や人件費などの費用の増加から、収益性の指標はマイナスとなっているが、安全性指標での流動比率や自己資本比率に関しては安定している。自己資本比率の目安は30%とされているため、負債にたよらない経営が出来ていると考えられる。

参照:自己資本比率:東京商工リサーチ

想定時価総額と主要株主

上場時の想定発行価格は900円である。調達金額(吸収金額)は約75.9億円(想定発行価格:900円×OA含む公募・売出し株式数:8,438,000株)、想定時価総額は約145.5億円(想定発行価格:900円×上場時発行済株式総数:16,175,100株)

2019年12月16日、IPO初日の初値は842円、時価総額初値は約136.2億円となった。

上位株主は上図の通りである。代表取締役の秋好陽介氏が筆頭株主であり、全体の57%以上の株式を保有する。また、グロービス4号ファンド投資事業有限責任組合以下、4つのVCファンドが株式を保有しており、VCの保有株式割合は約18%である。

働き方改革が声高に叫ばれる現在、副業の需要は今後も上昇していくであろう。大企業へのサービス導入も進めている同社が、上場後にどのように成長していくかに期待したい。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考に作成

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