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中古・リノベーションマンションの売買サービス「cowcomo」運営、ツクルバのIPO分析

「人と人、人と情報が交錯する『場』をつくりたい」という想いから生まれた株式会社ツクルバ(以下、ツクルバ)。ツクルバはtoB向けにサブスクリプション型のワークプレイスを提供しており、toC向けにリノベーション住宅に特化したプラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を展開している。同社は2019年6月28日に新規上場申請が正式承認された。

当記事では、2011年にクリエイターのためのシェアオフィスがあったらいいのにと創業者の村上氏と中村氏が考え、「co-ba shibuya」プロジェクトが原点で創業されたツクルバの情報を紐解いていく。

場をつくる、ツクルバが手がける2つの不動産事業

ツクルバの行っている、住空間を提供・デザインするcowcamo事業とサブスクリプション型のシェアードワークプレイス事業、2種類の事業を詳しく紹介していく。

「cowcamo」は『一点もの』の住まいに出会おう、というミッションを掲げているリノベーション住宅に特化したITプラットフォームだ。ツクルバ独自の基準によって選ばれた東京の中古・リノベーション住宅のみをWebページに掲載し、ユーザーは物件の検討ができるようになっている。cowcamo事業はメディア・エージェント・売主向け支援のみっつのサービスを提供しており、メインの収益は不動産仲介を行うエージェントサービスが生んでいる。「cowcamo」の特徴は、日本では独立していた不動産ポータル、仲介業、不動産事業者支援サービスを統合することで、顧客エンゲージメントを高めていることだ。この垂直統合により、同サービスはユーザーの比較的安価で、住みたいと思える物件に住むという希望を叶えることを可能にした。

「cowcamo」の事業環境は明るい。これはふたつのマクロトレンドから導き出せる。ひとつ目は、中古戸建て住宅流通の築年数平均が19.61年(2013年)から21.26年(2018年)と物件の老朽化が進んでいることだ。ふたつ目は、中古マンションで築年数25年以上の物件の割合が31.5%(2015年)から49.5%(2025年)に達すると見込まれていることだ。一般的に、築年数の古い物件ではリノベーションが行われる割合が高いことから今後も「cowcamo」が対象とする市場の伸びが期待される。

では、シェアードワークプレイス事業に移ろう。シェアードワークプレイス事業の配下にも大きく分けてみっつの事業がある。そのうち法人を対象にした事業はふたつあり、物件探しからオフィスデザインまで手がける移転コンサルティング事業と、スタートアップに家具やWi-Fiなどの基本インフラを兼ね備えたオフィスを提供する「HEYSHA」事業がそうだ。クライアントとしてメルカリ、アカツキ、xenodataなどを抱えている。残るひとつの事業はコワーキングスペース「co-ba」を様々な地域に展開する事業。展開場所によってコンセプトを自由に掲げながら「働く場」を提供するサービスだ。

東京23区のオフィス空室率は年々下がっており、2019年6月は1.21%とされている。オフィス空室率のダウントレンドと合わせて、新ビルの建設が減っていることから、シェアードワークプレイス事業に関しても、働く場をプロデュースするツクルバにビジネスチャンスがあるように思われる。

ツクルバの創業事業は2011年に誕生した「co-ba」であるが、2018年通期以降の業績ではcowcamo事業が占める売上割合は8割を超えており、現在では「cowcamo」が同社の主事業といっても過言ではないだろう。

ビジネスモデル分析


新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考


新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

「cowcamo」の収益源はリノベーション・中古マンションの売買において発生する仲介手数料がメインである。それらは3種類に区分され、契約が成立した際の手数料、物件価格に応じた手数料とその他取引に付随する手数料である。また、一部、ツクルバがその物件の仕入・販売をする再販取引を行うことがある。しかし、通常の「cowcamo」における販売が仲介手数料の割合の多くを占める。(p.4

シェアードワークプレイス事業のビジネスモデルは、サブスクリプションモデルである。収益源は物件オーナーからの手数料や企画料、個人・法人ユーザーからの賃料やメンバーフィーだ。物件オーナーはワークスペースとなる元の物件をツクルバへ賃貸、ツクルバは賃料を支払いうが、代わりに仲介手数料と企画料を得ている。この「場」に対し、個人ユーザーはメンバーフィーを、法人ユーザーはメンバーフィーに加えて仲介手数料、設計料と賃料などをツクルバに支払う。

伸びるユーザー数、期待のかかる業績


新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

この図は、各期の平均月次アクティブユーザー数を表しており、需要から成り立つ「cowcamo」に置いて重要なKPIである。2017年度と2018年度を通期で比較するとアクティブユーザー数が約2.9倍に増えている。さらに、2019年度の各四半期におけるアクティブユーザー数の増加は著しい。2019年度の第3四半期は第2四半期と比較して伸びは少ないものの、全年度末と比べて約1.8倍アクティブユーザー数が増えている。


新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

また、上図はcowcamoにおける取引成約数(プラットフォームを通した物件販売の成約数)を表しており、各期で増えていることがこちらでも見受けられる。特に2019年度に関しては現段階で268件の成約を記録しており、すでに2018年度の2倍近くの成約数を記録、2019年度決算では再び前期の大幅更新が期待される。一件あたりの流通金額は2017年度と2018年度では約5000万円弱であったが、2019年度の第1四半期では約4000万円に落ち込んだ。第3四半期は5100万円まで一件あたりの流通金額を戻しており、取引件数も伸びている。これらのことからツクルバの事業は好環境にある、と考えられる。

FY2018年の赤字は回収できるのか…


新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

ツクルバの売上高は堅調に推移している。FY2016からFY2018にかけて2期連続で50%超の売上高成長率を記録しており、2年間で約2.2億円から約5.3億円に売上高が伸びている。こちらは年間比較なのでグラフに載せていないが、ツクルバは2019年度の第3四半期時点で売上高が10億8000万円に達しており、急激な成長を遂げている。これらはcowcamo事業が堅調に推移したことによる。

その一方で、FY2018には販売費および一般管理費がFY2017より152.9%増えたことで大きな営業損失を計上している。この主原因は2点ある。ひとつ目は事業拡大に伴う人員増加による給与などの支払い額の増化。ふたつ目は「cowcamo」のWebマーケティングを中心とした広告宣伝などの先行投資を行なったことである。売上高と同様に年間比較なのでグラフに載せていないが、FY2019の第3四半期時点では当期純利益が631万円と黒字転換しているが、今年も販売費及び一般管理費が響いた年とされている。そのため、企業として投資を行っているにも関わらず、黒字に転換していることから、今後は概ね堅調に黒字での推移することが期待される。

BSと主要財務指標の概観

新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

FY2018において当期純損失が大きく発生しており、FY2019がまだ第三四半期時点のため、収益性の指標はまだ未知数ということで掲載していない。安全性の指標は、流動比率が244.3%で自己資本比率が24.8%となっている。そのため、短期的な支払い能力は高いことが明らかであり、すぐに財務的困難に陥ることはないと思われる。一般的に不動産業界の自己資本比率は他業界と比べて低いが、ツクルバの自己資本比率はそれでも19%と低いので、改善の余地はある。

総資本回転率は0.54回と一見低いように見えるが、不動産業界の中ではかなり高い水準を誇っている。不動産業界の総資本回転率は平成19年から28年にかけて一度も0.30回を超えたことはない。その中でツクルバの総資本回転率は2018年度において0.54回を記録している。

ツクルバのIPO、堅実に資本市場に飛び込む

新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考

上位株主は以上のとおりである。代表取締役の村上氏と中村氏で同社の約半分となる45.7%の株式数を現在保有している。ツクルバの上位株式所有者数の中にはアカツキやEast Venturesなどが名を連ねており、注目のスタートアップやVCからも調達していることがわかる。有価証券報告書によると、アカツキは2億円を、East Venturesは1億円を投資しているため、現在、それぞれ約10.8億円と約10.3億円のリターンが見込まれる。決して保有量は多くないが、他24名の投資家・機関投資家の中にはメルカリの小泉文明社長、元メルペイの取締役CPOの松本龍祐氏、Gunosy創業者の福島良典氏、エンジェル投資家の中川綾太郎氏、VCのANRIが含まれ、日本のスタートアップ界、注目の顔ぶれが揃っている。

今後のツクルバは…?

ツクルバの業績は、しばらくは現在の強い事業を元に今後も業績を伸ばすことが予想される。要因はみっつで、ユーザー数の伸び、明るい将来の業界環境、有力な投資家による見立てがあげられる。足元では、すでにツクルバの業績はIPO直前期でも目を見張るものと認知されていよう。しかし、まだcowcamoでの不動産成約件数は2018年度だと137件、と決して多いとは言えず、成長の余地は十分ある。今後の成長はIPOによる知名度の拡大と成長を後押しする業界環境にかかっている。

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