コラム

「誰でもネットショップを作れる」BASEのIPOを分析

2019-10-25
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部
誰でもネットショップを作れるBASEのIPO分析

「ネットショップを作りたいが、難しくてよくわからない」ーBASE株式会社(以下、BASE)は代表取締役社長の鶴岡氏の母の一言がきっかけで始まったスタートアップだ。その背景から「お母さんも使える」をコンセプトにサービスを立ち上げた。専門的なWebサイト構築やWebデザインの技術を使わず、 同社が提供するデザインテンプレートを選択するだけで、誰でも簡単にデザイン性の高いネットショップを作成することができるネットショップ作成プラットフォームが「BASE」だ。『Payment to the People, Power to the People. 』をミッションとして掲げる同社は2019年10月25日東証マザーズに上場する。本記事では、同社のこれまでと今後の動向を紐解いていく。

商売の機会を人々に広げるBASEの事業内容

BASEはネットショップ作成サービス事業「BASE」の他には連結子会社であるPAY株式会社(以下、PAY)においてオンライン決済サービス「PAY.JP」とID決済サービス「PAY ID」、BASE BANK株式会社(以下、BASE BANK)においてBASE上ネットショップオーナーのための資金調達サービス事業「YELL BANK」を運営している。主軸の「BASE」はネットショップの初期導入費用、月額運営費用を無料で提供しており、ネットショップの作成から運用までコストゼロで行うことができる。また、現在500万ユーザーがファッション・エンタメ・家電・コスメ・食品など幅広いジャンルの商品を購入している。同社独自のネットショップにおける決済システム「BASEかんたん決済」はクレジットカード、コンビニ・Pay-easy、銀行振込、後払い、キャリア決済の5つの決済方法を提供している。最短翌営業日からという短い時間でネットショップに導入することができる。決済手数料は取引金額に対して、3.6%+40円だ。エスクロー決済(*1)により、同社が購入者とショップの仲介を行い、取引の安全性を担保している。また「BASE」でネットショップを開設しているユーザーに対し、リアル店舗出店も支援している。百貨店などと連携し、販売や接客ノウハウのサポート、ブランド認知度の向上や新規顧客の獲得など、ユーザーが運営しているネットショップを、ブランドとして拡大するサービスを実施している。

*1:取引を行う際に、売り手と買い手の間に、第三者を介在させることで取引の信頼性を担保する決済

ネットショップオーナーの商売の可能性を広げるBASEのビジネスモデル

ネットショップオーナーの商売の可能性を広げるBASEのビジネスモデル

BASEとしての収益源はふたつある。ひとつ目は決済手数料として取引金額の3.6%+40円。ふたつめ目はサービス手数料として取引金額の3%を購入者は支払うといった仕組みとなっている。

手軽にオリジナル商品を販売したい需要に着目した「BASE」が成長

手軽にオリジナル商品を販売したい需要に着目した「BASE」が成長

「BASE」でのネットショップ開設数は年々増えており、2019年8月時点で80万ショップを突破している。有価証券報告書によると、全体の9割以上が4名以下で運営を行い、個人オーナーが73%、法人オーナーが27%である。また全体ユーザーの75%がオリジナル商品を展開している。経済産業省発表の「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備に関する報告書」によると、国内BtoC-EC市場規模は、2018年時点で約17.9兆円であり、2022年には26兆円まで拡大すると予想されている。これは、ネット上での販売商品の多様化、市場参加者の増加、物流事業者による配達時間の大幅な短縮化、スマートフォンの普及、SNSによる情報流通量の増加等の要因によるものだ。

市場の拡大とともに、年々BASEを通じた流通金額は増加している。個人でオリジナルを販売するショップオーナーが多く、開設ショップも増加していることから、商品流通が促進されると考えられる。

市場の拡大とともに、年々「BASE」を通じた流通金額は増加している。個人でオリジナルを販売するショップオーナーが多く、開設ショップも増加していることから、商品流通が促進されると考えられる。しかし、現在ネットショップ作成サービスやショッピングアプリの開発・提供、決済代行サービスのいずれの分野においても競合が存在しており、機能や価格競争が活発化している。また資本やブランド・技術力で長ける大手の参入や、競合の成長拡大も懸念されるため、「BASE」は今後も機能を充実させると共に、引き続きプロモーションを行い、顧客を増やす必要があるだろう。

BASEが順調に拡大している、その理由は?

「BASE」の強みはやはり基本機能が無料である点だ。加えて、ネットショップオーナー向けの資金調達サービスや、リアル店舗販売を販促支援するサービスなど、オーナーのブランド作りを支える仕組みが充実している点が挙げられる。競合のストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社が運営する「STORES.jp」との違いとして、独自ドメインへの変更が無料である点、また「BASE」のアプリユーザーに対し商品や店をライブ配信で紹介できる「BASEライブ」機能が無料である点は競合優勢性といえる。「BASE BANK」によるショップオーナーへの資金調達サービス「YELL BANK」と提携し、製品の製造を行うハードルを下げることができるのも強みだろう。他には、ネットショップオーナーに対して、リアル店舗出店スペース及びポップアップスペースの提供にも力を入れている。2019年8月末現在、東京都渋谷区の渋谷マルイにおいて、丸井グループと提携し、「SHIBUYA BASE」を提供している。「BASE」の出店ショップがリアル店舗を開設し、商品販売を行える取り組みだ。他にも横浜、難波、博多のマルイにおいて「OIOI BASE MARKET」を開催し、リアルの場でのブランド認知を高め、ネットショップオーナーの商機拡大を支える仕組み作りに力を入れていることがわかる。これまでの成長戦略に目を向けると、BASEはプロモーションやインターネットを活用したWebマーケティングにより、サービスの認知向上やユーザー獲得に務めてきたことがわかる。その一環として、リアル店舗での商品販売の機会提供や、ヤマト運輸との「かんたん配送App」により手頃に発送を行える仕組み作りを行なってきたのだろう。今後の拡大戦略として、新規顧客の獲得と共に、「BASE」のネットショップオーナーが開設後に退会せず、継続的に利用していくための施策も必要だろう。引き続きプロモーションに力を入れ認知度の向上に務めるとともに、行動履歴や取引などのデータを分析・活用する学習技術の開発を進め、ネットショップオーナーへ最適なアドバイスを行い、ショップの稼働率や売上の向上に寄与していくだろう。

成長率172%を遂げたBASEの売上高と当期純利益の推移

「BASE」における売上高は年々順調に伸びている。毎年当期純損失を計上しているものの、利用者の拡大に伴い第15期の2018年12月決算で約20億円と、前年比172%の成長を遂げている。また主力となるBASE事業の売上高総計は13億円、PAY事業の売上高総計は2.9億円、ネットショップオーナーに対する資金調達事業の売上高総計は1.3百万円となっている。

BASEにおける売上高は年々順調に伸びている。毎年当期純損失を計上しているものの、利用者の拡大に伴い第15期の2018年12月決算で約20億円と、前年比172%の成長を遂げている。また主力となる「BASE」事業の売上高総計は13億円、「PAY」事業の売上高総計は2.9億円、ネットショップオーナーに対する資金調達事業の売上高総計は1.3百万円となっている。

短期的な支払能力が高い「BASE」のB/S

短期的な支払能力が高いBASEのB/S

貸借対照表と主要な財務指標は上図となる。安全性の指標として、流動比率が127%、自己資本比率が34%となっている。流動比率を見ると短期的な支払い能力は比較的高い。自己資本比率において目安が30%とされている。それと比較すると、同社は34%であり、負債が少なく安全性が担保されていることは伺える。

参照:自己資本比率 : 東京商工リサーチ

しかし事業の効率性を示す総資本回転率に目を移すと0.38回であり、経済産業省調査による平均数値である1.17回と比較すると、低い数値となっている。しかし、同社のビジネスモデルは、サービスの認知度向上や顧客拡大のために、プロモーションや開発人材などに先行投資をし、プラットフォーム上の流通高の拡大に伴い収益の増加と投資回収を図るものだ。そのため今後も売上をこのまま伸ばし、更なる顧客獲得ができれば、総資本回転率は上がっていくものと見込まれる。

参照:平成29年中小企業実態基本調査速報(要旨)

想定時価総額と主要株主

今回の想定発行価格は想定仮条件(1,150〜1,300円)で、平均価格は1,225円である。調達金額(吸収金額)は108億円(想定発行価格:1,225円 × (公募:522600株+OA含む売出し株式数:7788900株))、想定時価総額は230.57億円(想定発行価格:1,225円 × 上場時発行済み株式総数:18,822,000株)となっている。

今回の想定発行価格は想定仮条件(1,150〜1,300円)で、平均価格は1,225円である。調達金額(吸収金額)は108億円(想定発行価格:1,225円 × (公募:522600株+OA含む売出し株式数:7788900株))、想定時価総額は230.57億円(想定発行価格:1,225円 × 上場時発行済み株式総数:18,822,000株)となっている。

株式所有比率は以上のようになっており、1位はBASEのCEO鶴岡氏の21.13%であり、続いてグローバルブレインが17.02%、サイバーエージェントが8.74%の所有となっている。VCのリターン予測はグローバルブレインが5号と6号の投資事業有限責任組合を合わせ46億円、SBI Ventures Twoが22億円、Fin Techビジネスイノベーションが16億円、イーストベンチャーズが15億円と見込まれる。国内のBtoC-EC市場はスマートフォンの普及や、オンラインビジネスの多形態化により、2018年時点で約17.9兆円だったものが2022年には約26.0兆円まで市場拡大が見込まれている。ネットショップを各自で簡単に開けるという革新性を持ったビジネスではあるが、現在競合も多数いるのが実情だ。BASEが展開する、顧客に寄り添うビジネスモデルやサービスを武器に、どうIPO後も市場で勝ち残っていくのかに注目が集まる。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考にSTARTUP DB編集部にて作成

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