1. HOME
  2. MEDIA
  3. 金融機関向けクラウド基幹システムを手がけるFinatextホールディングスのIPOサマリー

金融機関向けクラウド基幹システムを手がけるFinatextホールディングスのIPOサマリー

次世代クラウド基幹システムの開発・提供やフィンテックソリューションを手がける株式会社Finatextホールディングス(以下、Finatextホールディングス)が東京証券取引所マザーズに上場承認された。承認日は2021年11月16日で、同年12月22日に上場を果たす。

Finatextホールディングスは、“金融をサービスとして再発明する”を企業ミッションに掲げ、金融サービスを展開するためのクラウドインフラとデータ解析基盤を、パートナー事業者に提供している。2013年12月の創業からおよそ8年での上場となる。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書の部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

売上高は3年間で3.3倍の増加、持株会社体制移行後も順調な成長

上図は過去6年の売上高と営業利益の推移である。売上高は2016年11月期から2018年11月期のおよそ3年間で、約3.3倍に成長。2018年12月3日付で持株会社体制へ移行したことに伴い、2019年11月の売上高は減少している。

持株会社体制への移行を経て、2019年11月期から2021年3月期にかけては、売上高が2.2倍となっている。当年度内で同社は新規事業の立上げや既存サービスにおける機能拡充のためのシステム開発を積極的に行い、継続的な事業成長を実現した。

次世代クラウド基幹システムを提供する金融インフラストラクチャ事業では、スマートプラス少額短期保険やそのほか新たに2社に対して導入が決定したため、初期導入収益が増加し、売上高の拡大に寄与している。

また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、マクロ経済や個別企業の即時性の高い動向変化に注目が集まった結果、オルタナティブデータへの関心が高まり、同社のビッグデータ解析事業が数多くのメディアで取り上げられることで、契約件数が伸長した。

一方でフィンテックソリューション事業では、オンライン外貨両替などを英国で提供するオーダーフローシェアビジネスを展開していた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外旅行の需要が著しく減少し、取引高が大幅に減少した。同社は2020年11月をもって当事業からは撤退している。当該会計期間の経営成績は、売上高3億3,770万円、営業損失2,626万円となった。

金融機関向けのクラウド基幹システムを主軸に、3つの事業を展開

金融業界は歴史ある産業である一方、技術進歩と技術的負債に伴う課題に直面しており、特に顧客体験の向上が重要な課題とされている。この課題に対して同社は金融機関に向けたサービスを軸に添えた3つの事業を手がけている。

(1)金融インフラストラクチャ事業
金融サービス提供者向けの次世代クラウド基幹システムの提供を行うサービス。従来型のパッケージ型のシステムと比較し、同社グループの次世代クラウド基幹システムには、安価な初期導入費や短い導入期間など、メリットが数多く存在する。現在は証券ビジネスおよび保険ビジネス向けに展開している。

①証券インフラストラクチャビジネス
証券インストラクチャ「BaaS」の運営およびパートナー企業への提供を行う。証券サービスの構築に必要となる多様な外部連携を全てクラウド上で管理することが可能。
②保険インフラストラクチャビジネス
保険インフラストラクチャ「Inspire」の開発および保守を行う。新規保険商品の導入を短期間で実現でき、保険商品の購入から保険金支払いまでの全てのプロセスをオンライン上で行うことができる点が特徴。

(2)フィンテックソリューション事業
金融機関向けにデジタルトランスフォーメーションおよびデジタルマーケティングの支援を行うサービス。大きくソリューションビジネスとマーケティングビジネスに分かれている。

①ソリューションビジネス
金融機関に対するデジタルトランスフォーメーションの支援。ビジネス企画から開発、マーケティングまでEnd-to-Endのソリューションを提供している。
②マーケティングビジネス
潜在層ユーザーにアクセスしたい金融機関の販促活動支援。様々な金融関連サービスに関心を有する潜在層ユーザー向けに、サービス比較ができるウェブサイトやスマートフォンアプリを提供し、集客を行っている。

(3)ビッグデータ解析事業
ビッグデータを保有する企業のデータ利活用の促進を支援するサービス。データライセンスビジネスとデータ解析支援ビジネスで構成されている。

①データライセンスビジネス
ビッグデータを保有する企業のデータを解析し、解析結果をライセンスとして外部に販売している。現在はPOSデータやクレジットカードデータ等のデータを中心に扱っている。
②データ解析支援ビジネス
金融機関や事業会社に対して、保有するビッグデータを活用したマーケティングやサービス改善、業務効率向上の支援を行っている。

水平統合的な産業構造への転換を目指す

日本銀行の「証券市場の動向調査(2021)」によると、国内の証券業の市場規模は2020年12月末の家計が保有する上場株式および投資信託の資産残高が192兆円、過去10年間の年平均成長率は4.5%となっている。

また、日本損害保険協会及び日本少額短期保険協会の「2020年度 少額短期保険業界の決算概況について」によると、国内の損害保険業および少額短期保険業の市場規模は2020年度の年間保険料収入が、損害保険は8兆6,927億円で過去10年間の年平均成長率は2.2%、少額短期保険は1,178億円で過去10年間の年平均成長率は9.6%となっている。日本の損害保険業の市場規模は、世界と比較しても4番目に大きい市場となっている(出所:sigma No 3/2021)。

今後、金融サービスの顧客体験を改善し競争力を高めるためには、事業のデジタルトランスフォーメーションと蓄積されるビッグデータの利活用が求められ、金融業界の専門知識と高度なテクノロジーの融合が必要となっている。

2021年の国内金融業界におけるIT投資の市場規模の予測27兆9,730億円のうち、銀行・証券向けが5兆22億円、保険向けが1兆5,063億円となっており、金融業界向けは国内IT支出の中でトップクラスの規模となっている。(出所:ガートナー社、2021年)。

モバイルテクノロジーの普及やデータ利活用などの技術進歩により、エンドユーザーはより質の高いサービスを求める傾向が高まっている。特に顧客体験の向上が重要な課題である。ここにおいて既存金融機関は投資を実行しているものの、長期的には外部のソリューションを活用した効率的な変革が期待されると同社は考えている。

2020年6月には「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立するなど金融事業への新規参入を支援する 法環境の整備が進められた。この動きを受け、多数の金融商品とエンドユーザーへの販売を一旦に担うという垂直統合的な産業構造であった金融業界を、同社が1つのプラットフォームでつなぐことで、水平統合的な産業構造への転換を目指して行くとしている。

サービスの機能拡充とパートナー数の拡大が今後の成長の鍵

同社は具体的な経営戦略として以下の3つを挙げている。

①金融インフラストラクチャの機能拡充とパートナー数の拡大
②データ解析にかかる技術力の向上
③事業領域・地域の拡大

近年個人向けサービスを展開して大規模な顧客基盤を有する企業の金融事業参入が増えている。同社は金融インフラストラクチャの機能拡充を図るとともに、大企業向けの事業開発チームを確立し、パートナー数の拡充にむけて取り組んでいる。

現在同社はテクノロジーの先進性やコスト競争力によって差別化を図っているが、今後競合他社が現れる可能性を考え、インフラストラクチャに蓄積されるデータを活用したサービス改善やマーケティングの最適化を行うことにより、持続的な競争優位性を生み出すことが重要と考えている。そのために中長期的な視点に立ち、データ解析の知見と技術力の向上に努めるとしている。

また、現在提供している証券インフラストラクチャ「BaaS」や保険インフラストラクチ ャ「Inspire」の更なる成長に向け、短期的にはレンディング、中長期的には送金/決済に参入することや海外での事業展開も視野に事業拡大を進めるとのこと。

同社は売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、金融インフラストラクチャ事業のパートナー数をKPIとして位置付けている。

2022年3月期第二四半期時点のパートナー数は6件となっており、数を伸ばしていることがわかる。

デジタルトランスフォーメーションの必要性が高まる中で、少額短期保険会社や損害保険会社からのオンライン販売用の基幹システムの導入に関する需要が旺盛となったと同社は分析している。

新たなパートナー企業獲得による売上高の拡大が今後の成長の課題

同社は優先的に対処すべき事業上の課題として以下の4つを掲げている。

①金融インフラストラクチャ事業の収益拡大
②売上の拡大並びに利益およびキャッシュ・フローの定常的な創出
③優秀な人材の採用および育成
④情報管理体制の継続的な強化

「BaaS」や「Inspire」などの金融インフラストラクチャを導入する企業を拡大するために、大手金融機関や金融サービスに関心を有する大企業とのネットワークを構築し、事業開発チームがビジネスプランニングから受注まで一貫して支援する体制を構築している。

また、同社の事業モデルはパートナー数が増加するほど1社あたりの費用負担は低減する傾向にあるため、新たなパートナー企業の獲得やエンドユーザー増加に伴うトランザクションの増加による売上高の拡大が重要である。今後も開発投資や採用などの先行投資を進めつつ、中長期的な利益とキャッシュ・フローの最大化を目指す方針だ。

その他、優秀な人材の採用・育成や社内研修の実施をはじめ、社内体制や管理方法の強化も行うとしている。

累計資金調達金額は759,700万円、VCが多く資本参画

同社は東京大学エッジキャピタルジャフコグループスパークス・グループなどのVCから出資を受けている。他にも、KDDI大和証券グループ本社が参画しており、KDDIとは増資を機に業務提携契約も締結し、同社の持つUI/UXデザインやサービス構築力をスマートフォンアプリのライフデザインに生かしている。

なお、累計資金調達金額は75億9,700万円にのぼる。

上場時主要株主と想定時価総額

上場日は2021年12月22日を予定しており、上場する市場は東証マザーズとしている。また、大和証券松井証券が共同で主幹事を務める。

今回の想定価格は、1,290円である。調達金額(吸収金額)は229.5億円(想定発行価格:1,290円 × OA含む公募・売出し株式数:17,796,900株)、想定時価総額は、628.9億円(想定発行価格:1,290円 × 上場時発行済株式総数:48,754,628株)となっている。

筆頭株主は同社の共同創業者で代表取締役CEOの林良太氏で、全体の38.12%の株式を保有する。次いでauフィナンシャルホールディングスが12.78%、東京エッジキャピタルパートナーズが運営するUTEC3号投資事業有限責任組合が11.56%を保有している。

ジャフコグループが運営するジャフコSV5共有投資事業有限責任組合やジャフコSV5スター投資事業有限責任組合が資本参加している他、同社取締役CFOの伊藤祐一氏や創業者・技術顧問の渡辺努氏、共同創業・取締役の戸田真史氏な同社役員が多数名を連ねていることが特徴である。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書の部を参考

 

■STARTUP DB ENTERPRISE 参画パートナー企業申し込み受付中■

ENTRERPRISEとは?

スタートアップエコシステムにおける事業会社や投資家などのエコシステムビルダーの皆様と、国内スタートアップに対して、それぞれが信頼できるパートナーとのアライアンス機会の創造をサポートする法人向けプラン。また、成長産業に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」内のさまざまな機能をアップグレードしてご利用頂けます。

 

シェアする

Scroll to Top
Copyright © for Startups, Inc. All rights Reserved.