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「大手企業×スタートアップ」日本の未来を創るシナジーとは

スタートアップ、大手企業

近年大手企業よるスタートアップへの投資が活発になってきている。その背景として少ない資本で設立されたスタートアップ企業が、日本経済において次々に新しい市場を開き、著しい変化をもたらす場面が増えてきているからだ。大手企業がこのようなスタートアップ企業に出資し、技術やサービスと連携をとり新しいシナジーを生み出そうとしているのだ。

2017年には大手企業のスタートアップへの投資が過去最高額の数字になった今「大手企業×スタートアップ」がもたらすシナジーについて、日本の事例を踏まえて解説していこう。

CVCとは?

コーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)とは、大手事業会社がスタートアップに出資や支援、買収などの投資活動るために持つ組織のことだ。

英語では「Corporate Venture Capital」と表記され、CVCと略される。

この説明をみてベンチャーキャピタル(以下、VC)と何が違うのだろうと疑問に思った人もいるだろう。ここでCVCとVCの仕組みの違いを解説する。

CVCとVCの違い

VCが設立・運営するファンドは、キャピタルゲインを目的としている。事業会社や金融機関、機関投資家等から資金を集め、有望なスタートアップ企業に投資し、その企業の「数年後の成長」を予想し、上場した際の売却益を狙う仕組みだ。

CVCは大手事業会社や、その子会社が自己資金を使って設立・運営することが基本である。

CVC,VC

CVCの活動パターン

CVCの活動には大きく分けて2パターンある。

ひとつは事業会社が自社の子会社としてジェネラルパートナー*1(以下、GP)を作り、自社本体がリミテッドパートナー*2(以下、LP)として出資するもの。もうひとつは第三者(VCなど)をGPとして指名し、自社はLPとして参画するものだ。

前者は自社の意向を投資判断に反映させ易いため、自社の取り込みたい技術や投資戦略が明確な場合に有効な手段だ。後者においては委託するVC等の情報や知見等を活用できるため、現状シナジーが見込めなくても第三者の視点から広く情報収集することができる。

*1:無限責任組合員。投資事業有限責任組合(*3)における業務執行組合員。 無限責任組合員は、組合の債務について出資額にとどまらず、弁済の義務を負う。
*2:有限責任組合員。投資事業有限責任組合などの出資者(投資家)。組合の債務について出資額を限度として、弁済の責任を負う。
*3:投資事業のみを目的とし、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく契約によって成立する、無限責任組合員および有限責任組合員から成る組合。

CVC設立の目的

最大の目的は何と言っても「オープン・イノベーション」である。オープンイノベーションとは2000年代の始め頃に米ハーバードビジネススールのヘンリー・チェスブロウ博士により提唱されたイノベーションに関する概念のひとつだ。

企業や大学・研究機関、起業家など、外部から新たな技術やアイデアを募集・集約し、革新的な新製品・サービス、またはビジネスモデルを開発するイノベーションのこと。社内資源に依存せず、あらゆる枠組みを超えることで、イノベーションを創出することが可能だ。

オープンイノベーションのメリットを具体的に羅列すると以下の項目になる。

1.有望スタートアップへの早期コンタクト
将来性のある新技術、製品、アイデアに対して早期に接点を持つことができる

2.新規事業への投資および、新市場への参入リスクの低減
新規事業の社内リソース不足をカバーし、スタートアップ企業が研究開発等を推進するため大手企業は低リスクでイノベーションに着手可能

3.情報収集が可能
投資資金を持つことでベンチャーコミュニティから情報が集まりやすくなる

スタートアップとオープンイノベーション

オープンイノベーション

CVCがもたらす1番のシナジーは、CVC設立の目的でも述べた「オープンイノベーション」だ。顧客の要求が多様化・高度化する中なか、大手企業は自社内で全ての開発を行うことが益々困難になってきている。一方で資金やリソースを、ニッチながらも自社技術やアイディア向上に特化しているスタートアップとの連携は、大手企業に製品開発期間の短縮化や新製品・新市場開拓をもたらす可能性がある。

オープンイノベーションで生み出されるシナジーで大手事業会社、スタートアップ双方にどのようなメリットがあるのかは以下であろう。

大手事業企業のメリット
1 . 企業文化の活性化
2 . 開発のスピードアップ
3 . 人材リソースの獲得

スタートアップのメリット
1 . 提携大手事業会社のブランドネーム活用
2 . 資金調達が可能
3 . 市場/顧客の拡大

国内主要CVCの投資先

CVCも設立し、海外有望スタートアップを狙っている大手事業会社が近年増えているが、ここでは国内スタートアップに積極的に投資を行なっている主要CVCを紹介する。

1 . グリー・ベンチャーズ

グリーベンチャーズ

https://www.greeventures.com/

<主な投資先>
KAKEHASHI、Candee、InstaVR、ウェルスナビ、Retty、スマートキャンプ、etc
 
<投資傾向>
シードからアーリーステージのベンチャーを主な投資対象とし、事業シナジーを意図したものではなく、純粋な投資事業として運営している。

2 . YJキャピタル

YJキャピタル

http://yj-capital.co.jp/

<主な投資先>
dely、ヤプリ、WHILL、Candee、ココン、ベルフェイス、etc
 
<投資傾向>
ステージを問わず、インターネット関連のスタートアップに幅広く投資を行っている。
既存産業、既存の市場に対して、ITを活用することで、新しいユーザー体験を創出するサービスに注力している。

3 . KDDI open innovation fund

KDDI open innovation fund,グローバルブレイン

http://www.kddi.com/ventures/koif/

KDDI open innovarion fund はLPをKDDI、GPをグローバル・ブレインとし、共同で設立している。資金搬出はKDDIが行なっているが、その資金をどのスタートアップに投資するかの判断はグローバル・ブレインが行なっている。

<主な投資先>
Origami、クリーマ、ジモティー、リッチメディア、Loco Partners、クラスター、etc
 
<投資傾向>
KDDI∞Laboというプログラムに力をいれており、KDDIとシナジーを見込むことができる通信系への投資が活発である。
例えば5G技術を活かした事業である。ロボティクス、XR、IoT、ビッグデータ、AI、ブロックチェーン、ドローンなどを主な投資領域としている。

4 . オプトベンチャーズ

オプトベンチャーズ

http://www.opt-ventures.co.jp/

<主な投資先>
Candee、One Tap BUY、スペースマーケット、Housmart、ルームクリップ、ENECHANGE、etc
 
<投資傾向>
最大の特徴はCVCとVCのハイブリット型であること。事業との関連性のあるスタートアップに投資するCVCとキャピタルゲインを狙ったVCの両方の側面をもつ。投資方針としてはシェアリングエコノミー、ダイレクトトレーディング、ディアスラプティブテクノロジーの3軸だ。その中でもシェアリングエコノミーが半分を占めている。しかし、最近力をいれているのは、巨大な産業とITをかけ合わせた領域に投資している。

5 . GMO Venture Partners

GMO Venture Partners

https://gmo-vp.com/

<主な投資先>
Sansan、C Channel、ChatWork、ランサーズ、bitFlyer、リノベる、etc
 
<投資傾向>
国内外の上場、未上場の IT 系スタートアップへの投資に注力している。投資先は事業拡大、企業価値向上のフェイズにある企業が目立つ。最近ではターゲット地域をアジアとアメリカに絞り、ターゲットステージをシリーズAとしている。

CVCの今後

未来

CVC投資は日本では2011年頃から活発化。その後、NTTドコモやKDDI、ヤフーなどの通信・IT分野を中心により活発化し、CVCによる投資件数は2013年の50件から2016年には134件に拡大した。CVC投資件数は4年で3倍弱に伸びている。2017年も増加し、2018年も投資情報が行き交っている。

しかし2017年に実施されたPwCの調査によると、「自社におけるCVCファンド運用は順調である」と答えた回答者の割合が設立直後は81%なのに対し、3年計画後は55%と大幅に減少している。

PwC

2017年に実施されたPWCの調査を参考に編集部が作成

今後グローバル競争に打ち勝つ上で、日本経済にとってのさらなる成長に欠かせないことは、イノベーションを起こし続けることだ。そのためには、優れた人材、革新的な技術をもつスタートアップとのオープンイノベーションが必要不可欠である。しかし、スタートアップとの取り組みは失敗がつきもので、新規事業創出することは容易なことではない。失敗から学び、自社流のオープンイノベーションのアプローチを確立することが、成功への近道なのではないだろうか。

そのためには、CVCファンドの成功事例の積み重ねと、運営ノウハウの蓄積・伝搬によるCVCに関する知見を深めていくことが必要だろう。

今後、中長期的な視点での成功を視野に大手事業会社とスタートアップがもたらすシナジーに理解を持ち、積極的に取り組む人材が1人でも多く出てくることを願っている。

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