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【ドローン業界日本初IPO】自律制御システム研究所のIPO分析

drone

ドローン業界における大きな一歩となるだろうか。千葉大学で誕生した日本発ドローンスタートアップ、株式会社自律制御システム研究所(以下、ACSL)が21日にマザーズ上場を果たす。国内ではドローン業界において初となる上場企業の誕生である。2013年11月に設立されてからわずか5年でのスピード上場となった。今回はそんな同社の事業内容や実績、これまでの業績について紹介したい。

ACSLとは

ACSLはドローン業界において最重要人物の一人でもある野波健蔵氏によって設立された会社である。野波氏は千葉大学にて長年研究を積み重ね、現在は一般社団法人日本ドローンコンソーシアムの会長も務めている。同社は「ドローンは、空の産業革命をもたらす」という企業ビジョンを掲げ、点検、物流、防災、空撮、測量、農業といった幅広い分野でインダストリアル向けのシステム構築サービスを提供している。また、同社は機体「ACSL-PF1」も開発しており、システムインテグレーターと製造メーカー両方の面を併せ持っている点が最大の特徴である。

ACSLの社名にも含まれている自律制御システムとは一体どんなものなのだろうか。同社は自律制御システムを搭載したドローンに対して「自ら考えて飛ぶ」と表現している。すなわち自律制御システムとは、人体で言うところの脳に相当し、姿勢制御や飛行動作制御、画像処理による自己位置推定、環境認識までも担い、ドローンの非GPS環境下での完全自律飛行を実現している技術となる。ACSLはこの技術を中核技術と捉え、これまで研究開発を行ってきた。そして国内屈指の技術力と機体のハード、アプリケーションやソフト等の新技術を組み合わせたのが同社が開発している機体、「ACSL-PF1」である。

acsl-pf1

※株式会社自律制御システム研究所HPより引用

一気通貫で取り組む独自のビジネスモデル

同社の最大の特徴は、ドローンによる課題解決の概念検証やそれを踏まえた特注システム開発、量産機体の販売までを一気通貫で行っていることである。また機体販売後も運用サポートを行っており手厚いサービスを提供している。ACSLはこのフローの中で段階ごとに収益を獲得している。まとめると以下の画像のようになる。機体を含めたドローンによるソリューションを一気通貫で提供できるのが最大の強みである。

dronesystem

※新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)より編集部作成

またACSLのビジネスモデルを図にしてみると以下のようになる。

acsl-businessmodel

※新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)より編集部作成

右に表示されている顧客企業は主に大企業が中心である。大企業等に対し顧客に合わせた概念検証からソリューション提供までを一括で行い、収益を上げている。またNEDO等の国立の研究開発法人から委託を受け研究を行い、補助金や助成金を得ている。

これまでの実績

もうひとつのACSLの特徴は国家プロジェクト含め数多くの実績を誇っている点である。Ⅰの部に掲載されている取り組み中のプロジェクトも6つあり、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や内閣府から委託を受けている。その中で、無人航空機の運航管理システムやAIシステムの開発等を行っている。

また他所との共同での実績も多くある。代表的なものに楽天株式会社と共同開発したマルチコプター型ドローンの「天空」がある。完全自律飛行による配達が可能で同機体を用いて、ゴルフ場や南相馬市、福岡市の集合住宅にてこれまで配送実験を行っている。また株式会社NJSとは下水道等の閉鎖空間の点検に特化した「Air Slider」も開発している。

rakuten-drone, air-slider

※新株式発行並びに株式売出届出目論見書より抜粋

売上高は大きく成長

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※新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)より編集部作成

2013年の設立から直近までの業績推移は以上のようになっている。第1期と第4期はそれぞれ設立直後、決算期変更により3か月間と2か月間の業績となっている。設立から一貫して売上高は増加傾向にあり第6期(2018年3月決算)には3億7000万円を記録した。一方で当期純利益に関しては、継続してマイナスが続いている。同社はこの要因として、これまで体制強化や開発に係る先行投資に注力してきた点と国家プロジェクトに参画した際の補助金・助成金収入が翌年度に入金される点をあげている。2018年度の国家プロジェクトにかかる研究開発費用が2億円以上を計上しているので、与える影響は大きいことがわかる。また直近の第7期第2四半期(2018年4月1日から9月30日まで)では前年度を上回るペースで売上高を伸ばすことが出来ている。

また直近の現金及び現金同等物の期末残高を見てみると、約18億円近い額を保有している。営業・投資・財務に係るキャッシュフローは直近いずれもマイナスを記録しているが、売上高の規模と比較しても大きく余裕のある数字といえそうだ。この要因として、2018年1月にスパークス・グループやみずほキャピタルを引受先とする第三者割当による21億円以上の資金調達に成功していることがある。

人気分野の大規模IPO

同社の上位株式保有者は以下のとおりである。創業者であり取締役会長を務める野波氏や代表取締役社長の太田氏などを含めた取締役が多く入る中で、ベンチャーキャピタルや事業会社も確認できる。

stockholder

※新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)より編集部作成

今回の上場における想定発行価格は3380円とされている。上場時発行済み株式総数10,152,105株、公募・売出し2,971,200株(オーバーアロットメント含む)を基に計算すると想定時価総額が約343.1億円、吸収金額が約100.4億円と計算できる。吸収金額100億円以上はマザーズの中では比較的大規模な案件である。また想定価格と保有株式数をかけると、UTECは約71億円、楽天は約45億円の資産を得る計算となる。

またドローンやAIは将来が期待されている分野でもあるので、今回のIPOには注目が集まりそうだ。

※新株式発行並びに株式売出届出目論見書を参照して計算

日本発ドローンカンパニーが踏み出す大きな一歩

インプレス総合研究所が出している「ドローンビジネス調査報告書2018」によると、2017年度の国内におけるドローンの市場規模は503億円と推測されている。驚くべきは今後の成長スピードで、この値が2018年には860億円、2024年には3,711億円と2017年の約7倍にまで成長すると予測している。

また世界に眼を向けると「Mavic」や「Phantom」といった民間用機体を開発する世界最大手、中国のDJI社は2017年の売上高が27億ドルにも到達したともいわれている。同時にAmazon も配達にドローンを取り入れようと数年前より繰り返し実験を行っている。

まさに世界中が注目し力を注いでいるドローン分野において、ACSLの上場は日本にとっても大きな一歩である。国内では圧倒的な実績を誇る同社は物流の分野においては、日本郵便と共同で2018年11月より、福島県にて約9km間の荷物輸送の実験を開始しており、そう遠くない未来でドローンによる物流を実現させるかもしれない。また物流に限らず空撮や点検、災害支援などドローンが活躍できる舞台は数多くある。ドローンによる先進的で豊かな未来をACSLが切り拓いていく。

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