創業して間もないスタートアップ企業が必ずと言ってもいいほど抱える悩みの1つが資金調達だろう。実際に資金を調達する手段としては金融機関からの融資等様々あるが、その中でも欠かせないのがベンチャーキャピタル(以下VC)からの調達だ。特にスタートアップにおいて、その後の成長に向けた並走者となるVCは単なる資金調達先を超えた非常に重要な存在となる。
ここで簡単にVCについておさらいをしたい。VCは主に上場前のベンチャー企業から株式を引き受け、資金を提供する。その後、投資先会社が上場等のEXITをした際に保有株式を売却して収益を得る。また、投資先会社に対してはVCのノウハウを活かした育成支援を行うこともある。
今回は新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)に掲載されている株主の所有株式総数と、新規上場時の初値に基づき計算し作成した。各VCが2018年1月~6月のあいだに得たキャピタルゲイン(値上がり益)を合計してランキングにしたものであり、あくまで目安としてご覧いただきたい。
キャピタルゲインを多く稼いだVCランキング

2018年上半期において、100億円以上の収益を上げたベンチャーキャピタル6社をランキング形式で紹介する。
1位 グローバル・ブレイン 430億円
1998年に創業した独立系VC(親会社が存在せず、資本独立したVC)であるグローバル・ブレインが1位に輝いた。シードからレイターまで幅広い企業を支援している。これまで50社以上をEXITに導いた経験を持つ、非常に実績のあるVCのひとつである。
2位 インテグラル 307億円
インテグラルは非上場・上場企業へのエクイティ投資を行っている企業。投資先企業を特にスタートアップやベンチャー企業に絞ってはいないが、今回は投資先から3社がIPOを果たしたため、ランクイン。
3位 グロービス・キャピタル・パートナーズ 297億円
1996年に創業したグローバル・ブレイン同様の独立系VC。日本初のハンズオンVC(投資だけでなく、経営支援も行うVC)でもある。メルカリへの投資で大きな利益を得た一方で、ビープラッツへの投資も行っていた。
4位 イーストベンチャーズ 272億円
日本だけでなくアジアや米国のスタートアップ企業に投資を行っている独立系VC。SNSサービスである「mixi」の提案・開発を行った衛藤バタラ氏が代表取締役を務めている。メルカリ1社のみだが、保有株数が多かったことで大きな収益を得た。
5位 モバイル・インターネットキャピタル 193億円
NTTドコモ、インターネット総合研究所、みずほ証券が30%ずつ出資しているVC。主にIT系のベンチャー企業に投資をしている。上記のように他のVCとは異なる投資先がIPOを果たした。
6位 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 160億円
伊藤忠商事のグループ会社である同社が6位にランクイン。ファイナンス面だけでなく伊藤忠グループ全体で投資先をサポートできる点が強み。投資対象はIT関連としているが、投資ステージはシードからレイターまで幅広く行っている。
ベンチャーキャピタルが、スタートアップを成長させる

2018年上半期におけるランキングは以上のようになった。グローバル・ブレインやグロービス・キャピタル・パートナーズなど歴史のあるVCがしっかりと収益を上げていた。一方で、100億円以上稼いだVC6社のうち4社がメルカリの出資元であり、6月に上場を果たした同社のキャピタルゲインへの影響はやはり大きかった。
スタートアップを勝たせていく役割を担うのが、ベンチャーキャピタルだ。スタートアップにとっては、どこのVCから資金を調達するのかも、事業の成長の鍵となりうるだろう。
もちろんEXITの方法はIPOだけではないので、そのことを踏まえたうえでVCやスタートアップ企業を見る際の参考にしていただきたい。