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よりそう代表の芦沢氏は、なぜレガシーな業界に足を踏み込んだのか

人々のエンディングをより豊かなものへ。レガシーな業界に一石を投じた経営者の話

大切な人を見送るとき、せめて、安らかに眠ってほしいと私たちは願う。葬儀、散骨、法事など、数多く存在する葬祭の数々は、残された人々が旅立った人に向けて込めた願いを形にしたものだ。

そんな人の死に寄り添うために、誕生しているスタートアップがある。「お別れの悲しみを感謝に変える」をミッションに掲げる、株式会社よりそう(以下、よりそう)だ。

葬祭に関連するサービスを複数展開し、これまではなかった葬儀のスタートアップとして注目を集めている。代表の芦沢氏は、学生時代からあらゆる分野のレビューサイトを運営していた経歴を持つ。

芦沢氏が今、人々のエンディングに寄り添いたいと感じる理由とは。そして、よりそう立ち上げの背景とはいったいどのようなものだったのだろうか。詳しく話を聞いた。

何者にもなれない僕は、海外に行けば何者かになれると思った

■ 芦沢雅治(あしざわ・まさはる) ー1985年、岐阜県出身。高校卒業後、カナダへの語学留学後アメリカの大学在学中に起業する。2009年、よりそうの前身となる株式会社みんれびを創業。現在は葬儀に関わるサービスを包括的に展開している。
■ 芦沢雅治(あしざわ・まさはる)
ー1985年、岐阜県出身。高校卒業後、カナダへの語学留学後アメリカの大学在学中に起業する。2009年、よりそうの前身となる株式会社みんれびを創業。現在は葬儀に関わるサービスを包括的に展開している。
芦沢氏のキャリアは、NPO法人の設立、アフィリエイトサイトの運営など、現在の事業からはかけ離れているように感じられる。しかし、実は一貫した、芦沢氏が幼い頃から感じていた情報格差に対する違和感があった。

芦沢 「小さな頃から、なぜ世界には情報格差が存在するのか疑問に思っていました。情報は平等であるべきなのに、なぜか情報の平等性は失われているし、貧困や飢餓に悩む人もいるしで。ただ、なんとかしたいと思っても、当時の僕ではどうしようもありませんでした」

ーー感受性の強い子どもだったため、周囲の気がつかない変化にも気がついていた。

芦沢氏はそう語る。そうはいっても、何者でもない自分が世界を変えるためには、何か行動を起こさなければならなかった。選んだのは、海外留学だった。

芦沢 「はじめにカナダへ、その後、アメリカの大学に進学しました。学生生活の後半で専攻を選べるアメリカでの教育環境なら、なにかヒントが見つかると思ったのです」

留学中、小資本でできるビジネスをと考えてインターネットメディアを通じたアフィリエイトに挑戦。インターネットの仕組みを自ら学ぶことで、収益を上げることに成功した。

芦沢 「人を助けたいと思っても、お金がなければなにも始まりません。まずはビジネスを作ることからと考えて、インターネットの知識を付けました。多数のWebサイトを立ち上げて、コツコツ運営していきましたね」

何者でもない自分から、ビジネスを作れる自分になった芦沢氏。学生生活に自ら終止符を打ち、事業立ち上げに向けて動き始めた。

立ち上げた100以上のサイトの中から「葬儀」領域にビジネスチャンスを見出した

アメリカから帰国後、芦沢氏は個人事業主として数多くのWebサイトを運営。レビューサイトや比較サイトの広告によりマネタイズを図った。立ち上げたサイトの数は100を優に超える。あらゆる領域・分野に詳しくなるうちに、葬儀領域の課題を知るようになる。

アメリカから帰国後、芦沢氏は個人事業主として数多くのWebサイトを運営。レビューサイトや比較サイトの広告によりマネタイズを図った。立ち上げたサイトの数は100を優に超える。あらゆる領域・分野に詳しくなるうちに、葬儀領域の課題を知るようになる。

芦沢 「事業が軌道に乗ってきたタイミングを見計らって、前身の『みんれび』を創業しました。老人ホームを始めとした介護施設、歯医者さん、結婚式場など、人々のライフステージに関わる複数のレビューサイトを運営し、その中で葬儀の領域におけるビジネスチャンスを見つけました」

葬祭に関わるサービスを提供する企業が少ないため、競合が限られること。閉鎖的な業界だったために、長い間イノベーションが起きていないこと。そして、葬儀サービスは1回限りのショットのビジネスに見えるが、終活・葬儀・初七日・四十九日・一周忌と長期にわたり利用するものであること。これらが、芦沢氏の頭をよぎった。

芦沢 「葬儀業界に属する企業の多くは地方の中小企業なので、競合という競合がいません。また、インターネットの浸透率がほとんどゼロに近いため、これからの時代はITと絡めたビジネスが必要だと感じました。そしてなにより、終活、葬儀、供養などを一気通貫で構築できるサービスはないなと。葬祭に関わるサービスはお客様からも反響が大きかったこともあり、ビジネスとしての勝ち筋を見出しました」

時代の流れや業界特有の課題を見つけた瞬間、ビジネスとして展開することを決めた。数多くのサイト運営に携わったからこそ、見えた道だったと芦沢氏は振り返っている。

批判もされる。だが、必要性を見極めるのはユーザーだ

葬祭分野の課題は、上記で挙げただけには止まらない。中小企業が限定された商圏で事業を行うため、市場で価格競争が起きにくいのだ。150万円と300万円の葬儀があったとしても、価格の違いを明確な根拠を元にして消費者に提示するのは難しい。

葬祭分野の課題は、上記で挙げただけには止まらない。中小企業が限定された商圏で事業を行うため、市場で価格競争が起きにくいのだ。150万円と300万円の葬儀があったとしても、価格の違いを明確な根拠を元にして消費者に提示するのは難しい。

芦沢 「人の死は、時として突然訪れます。前もって準備ができるものでもないから、そのときにたまたま知った葬儀屋さんに頼むしかないんですよね。時間がないですから、比較という考え方もありません」

ここにも情報の非対称性があった。適正な価格で、適切なサービスを届けることが、よりそうが求めたあるべき姿だ。ただ、そうは言ってもレガシーな業界。参入する上での苦労も、少なからずあったという。

芦沢 「初期の頃は、葬祭分野でインターネットは流行らないなんて言われることが多かったですよ。批判されることもありました。でも、本当にサービスを必要としているのかどうか、判断するのは業界人ではなくユーザーなんです。僕は絶対に必要だと思っていたし、実際にユーザーも必要としてくれた。それがすべてだと思います」

適正な価格を追い求めた結果、市場価格の1/3程度でサービスを提供することに成功した。また、終活、葬儀、供養のワンストップサービスに踏み切ったのも、同様の理由だ。ひとつのスナップショットにとどまるのではなく、葬祭に関する情報がすべて集まった場所を作りたい。芦沢氏は、そう考えていたのだ。

人の負に寄り添うからこそ、サポートには手を抜かなかった

もうひとつ、よりそうのビジネスを語る上で、忘れてはならないことがある。葬儀の問い合わせに24時間365日対応するコールセンターの設置だ。人件費や教育コストのかかりやすい自社コールセンターの設置に踏み切った背景には、葬祭分野でビジネスを起こす芦沢氏なりの覚悟が見られる。

もうひとつ、よりそうのビジネスを語る上で、忘れてはならないことがある。葬儀の問い合わせに24時間365日対応するコールセンターの設置だ。人件費や教育コストのかかりやすい自社コールセンターの設置に踏み切った背景には、葬祭分野でビジネスを起こす芦沢氏なりの覚悟が見られる。

芦沢 「突然の不幸を目の当たりにした人々を支えるための場所が必要だと感じたことが、コールセンターの設置に至った一番の理由です。センシティブな状態でご連絡をくださるお客様に対して、適切なご案内を届けるため、コールスタッフの教育には力を入れています」

また、最近では、終活を意識して早期から問い合わせを行うユーザーも増えている。心安らかに自身の最期を考えられるようにするため、コールスタッフには人への思いやりや安心感などが求められている。

芦沢 「従来の問い合わせに対応するだけのコールスタッフではなく、適切な提案もできるスタッフを育成しています。適切な提案をするために、社内でしっかりと体制を構築する必要がありました」

スタートアップの資金繰りのなかで、24時間365日稼働するコールセンターの設置は決して容易ではない。教育においては、資金も時間も必要とする。それでも設置する決断に至ったのは、よりそうのビジネスにおいて、なくてはならないものだったからだ。

ミッションに掲げた「お別れの悲しみを感謝に変える」というフレーズは、その覚悟を表したものなのかもしれない。

とにかくやってみる。チャンスの数は行動量に比例する

前例のない挑戦、批判を受ける可能性。尻込みしてしまうような要因は、いくつもあったはずだ。それでも、芦沢氏はよりそうを立ち上げた。同様のビジネスモデルで市場参入を図った企業が次々に撤退する中でも、生き残り続けている。

前例のない挑戦、批判を受ける可能性。尻込みしてしまうような要因は、いくつもあったはずだ。それでも、芦沢氏はよりそうを立ち上げた。同様のビジネスモデルで市場参入を図った企業が次々に撤退する中でも、生き残り続けている。

決して少なくない苦悩の中でも芦沢氏が常に走り続けられたのは、よりそうのビジネスが社会にとって必ず必要だと感じたからだ。そして、ビジネスの可能性を少しでも確かなものにするために、手足を動かし続けたからだ。

芦沢 「学生時代から数々のサイト運営を経験してきたからこそ、今のビジネスチャンスを見つけました。よりそうを立ち上げてからも、トライアンドエラーを繰り返しながら、とにかく行動を続けてきた。成功しているかどうかは結果論でしかありませんが、過去の行動が実を結んだことは事実だと思います」

人間の最大の負と捉えられる死、そして、孤独。そういった数々の不安に寄り添って、ほんの少しでも幸せを感じられる世の中を作ることが、よりそうの、そして芦沢氏の目指す世界だ。そのために、葬祭分野で幅広いビジネスを展開する。

創業から10年。長い時間をかけて積み上げてきた。最後に、芦沢氏が考える未来の起業家に向けたメッセージを聞いてみた。

芦沢 「やりたいならやってみたらいい、と伝えたいですね。大企業で活躍できていた社員でも、スタートアップでは活躍できない、なんてこともよくある話です。誰が優秀なのかなんてわからない。だから、もしも興味があるのなら、勇気を出して飛び込んでみること。あとは、行動量を増やすことで、成功確率が必ず上がっていくはずですから」

起業を視野に入れても、ビジネスチャンスがわからずに右往左往する起業家は多い。かつての芦沢氏も、もしかしたらそうだったのかもしれない。

ただ、彼は圧倒的な行動量でその課題を乗り越えた。市場とビジネスを正確に見極めて、走り続けている。

起業は決して楽ではないが、行動を続けた者にこそ見える景色がある。芦沢氏の話からは、そんなメッセージを受け取ったようだった。

執筆:鈴木しの
取材・編集:BrightLogg,inc.
撮影:戸谷信博

※現在よりそうでは、採用強化をしています。

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