1. HOME
  2. MEDIA
  3. 全ての家族の幸せのために。難易度の高い社会問題に挑むスタートアップとして、ユニファが考えたこと

全ての家族の幸せのために。難易度の高い社会問題に挑むスタートアップとして、ユニファが考えたこと

全ての家族の幸せのために。難易度の高い社会問題に挑むスタートアップとして、ユニファが考えたこと

日本経済新聞をはじめ、多くのメディアで連日取り上げられている通り、日本における保育業界や子育てには課題が多く、大きな社会問題の一つになっている。

例えば保育士は、手書きの事務業務が多いあまり、子どもたちと過ごす時間の確保が難しい。業務過多による残業も多く、そのうえ収入は決して恵まれたものではない。それもあってか、他業界と比較しても離職率は非常に高いのが現状だ。

また家庭でも子育てに関する課題は挙げられる。たとえば、共働きの家庭であるために、働いている時間は子どもの様子が把握できないことだ。子どものためと思いながら働きつつも、その傍らで子どもが育つ様子を目の前で見続ける時間が少ないことに不甲斐なさを覚える両親も多いだろう。

そんな社会問題に対して、真っ向から向き合うのが、ユニファ株式会社(以下、ユニファ)だ。子育てに関わるあらゆる問題をテクノロジーの力で解決することを掲げており、これまでも、グローバルで10,000社以上が参加した、スタートアップワールドカップでの優勝を含めた実績を持つ企業だ。

また直近では、シリーズCラウンドで約35億円の調達を行なっており、社会問題解決型スタートアップとして注目度も高い。

今回はユニファ代表取締役CEOの土岐氏と取締役CFOの氏に、ユニファの事業成長について詳しく話を伺った。

ユニファ代表取締役CEOの土岐氏
土岐泰之(とき・やすゆき)
ー2003年に、住友商事に入社。リテール・ネット領域におけるスタートアップへの投資及び事業開発支援に従事。その後、ローランドベルガーやデロイトトーマツにて、経営戦略・組織戦略の策定及び実行支援に関与。2013年にユニファを創業。全世界から1万社以上が参加したスタートアップ・ワールドカップにて優勝したことに加え、採用率が全世界で2.5%未満であるEndeavor起業家に満場一致で選出されるなど、国内外で高い評価を受ける社会起業家。
取締役CFOの星氏
星直人(ほし・なおと)
ー2007年に、モルガン・スタンレー証券の投資銀行本部に入社。東京・ニューヨークオフィスで約12年間勤務。テクノロジー・金融・コンシューマー領域を中心に、国内の経営統合案件や米国関連のクロスボーダーM&A案件を主導。一般的なM&A業務に加えて、アクティビスト対応や企業価値向上策に関するアドバイザリー業務にも従事。2019年にユニファへ参画し、CFOとして資金調達を含めた財務戦略や各種戦略的施策を主導。

信頼性は大手商社と共に、プロダクトは自らで。業界特性を捉えた上での戦い方を選択

信頼性は大手商社と共に、プロダクトは自らで。業界特性を捉えた上での戦い方を選択
保育業界はスタートアップとして参入するには障壁が多い。

主な理由は3点。業界のITリテラシーが高いとは言えない点、人材不足が深刻で新たな業務を行いづらい点、中小事業者が多い点だ。参入障壁が高いため、ビジネスとしてのグロースも、難易度の高い業界に見える。

土岐氏は、どのようにして、事業のビジョンとビジネスとのバランスを保ってきているのだろう。

土岐「僕らは最初、保育園での写真販売サービス『ルクミー フォト』の提供を始めました。そのときネックとなる課題は、大きく分けると4点。

・保育士の業務削減につながるかどうか
・写真を購入する保護者が利用しやすいサービスかどうか
・類似サービスとどう差別化するのか
・マネタイズできるかどうか

です。保育士の業務の削減は、それまでの手作業での写真販売を考えれば、販売サービスで実現できるだろうと考えました。加えて、類似サービスと比較した際の優位性を獲得するために、顔認識技術を業界では初採用。撮影した写真をスマートフォンでアップロードするだけで、保護者は自分の子どもの顔を探して購入できるようにと、システムを整えました。このユニファが開発した技術は、東京大学大学院松尾豊教授を審査委員に含む「ディープラーニングビジネス活用アワード」でも特別賞を頂いています。

一方で難しかったのが、事業をうまく回し、市場を拡大するためのバランス取りです。プロダクトを作ることは、営業やCSの確保を必要とすることに直結するからです。事業としての成長度を増すために、テクノロジーの力を取り入れながらサービスを育ててきました。

ただ保育業界は、歴史も長く新しいプロダクトが簡単に参入できる業界ではありません。良いプロダクトを創ることが必要条件であることは明白ですが、加えて、良い販売チャネルの戦略も必要。その両輪が回って初めて、事業としてもうまくいくのだろうなと、創業当時から思っていました。

先述の仮説の通り、創業初期は、なかなかサービスが受け入れられずに苦労していました。ただ、あるときに保育園を顧客とする大手商社『フレーベル館』の方が、僕らのプロダクトに興味を持ってくださったんです。

保育園を対象とする商社は、絵本や知育玩具などの卸業を行なったり、保育料の集金を行なったり、保育園でのイベント開催時にはスタッフとして参加したりと、業務幅が非常に広いんですね。その分、保育園の現場をよく理解しており、かつ、リアルな課題を目の当たりにしているからこそしっかりとした信頼関係を構築できています。保育業界の未来に対して危機感を抱いていたタイミングにユニファを知ってくださり、あらゆる保育園の園長先生とつないでいただくことができたんです。

僕らのようにスタートアップだけでは門前払いとなってしまうような環境でも、すでに信頼関係が構築されている方々とのご縁があると、一気に事業はグロースするのだなと実感しましたね」

良いプロダクトを、どう顧客に届けるかが、我々にとって非常に重要な論点

「スタートアップは良いプロダクトを作ることにのみ専念するべきという考え方もあります。もちろんその考え方は非常に重要ですが、今後スタートアップが生き残っていくには、良いものを作ることはもはや大前提の時代であると考えています。その上で、良いプロダクトをどう顧客に届けるかが、我々にとって非常に重要な論点でした。

せっかく良いものを作ったとしても、最適な販売チャネルを構築できないと望ましい結果につながらないものです。とくに、我々が向き合っている業界は『誰が売るのか』をすごく意識される業界。だからこそ、弊社のプロダクトに関する信頼性を担保してくださる人々のご支援と、プロダクトそのものの質も底上げの両面を重要視しました」

協力を得るために、利害関係者の共通の課題を認識する

協力を得るために、利害関係者の共通の課題を認識する
信頼性の高い企業や人々とのつながりはもちろん大切だ。ただ、それは運や縁のみで得られるものではないだろう。ステークホルダーをしっかりと巻き込んでいくために必要なこととして、土岐氏は「共通課題を認識すること」を挙げる。

土岐 「たとえば、僕らのサービスのひとつ『ルクミー 午睡チェック』は、まさにステークホルダーにとっての共通課題をプロダクトに落とし込んだものです。

保育園で最も大きな懸念事項として、園児のお昼寝中の突然死が挙げられます。お昼寝の際にうつぶせ寝を続けてしまうことで、息が止まってしまい、そのまま亡くなってしまうのです。事実、保育園における死亡事故の約9割はお昼寝中に起こっております。保育園の立場に立ってみると、突然死を防ぐためには、常に園児全員を見続けなければならず、保育士の負担が大変大きい業務です。

保護者にとっても、保育園に預けている間に子どもが不慮の事故にあってしまう危険性を考えるのはとても怖いこと。それなら、突然死を防ぎ、保育士の負担を増やさずに見守るためのサービスを作れないだろうかと考えました。

もちろん、突然死を確実に防ぐためにはソリューションとして十分なのかどうか、しっかりと検証しなければ実地での活用はできません。ただ業界の誰しもが抱えている、それも長年解決されていなかった課題を解決できるものなら、ステークホルダーはみんな納得して使ってくれます。

提供する価値そのものが社会に愛されるものであるかどうか、それを考え、突き詰めて作るプロダクトは、しっかりと届いていくと思います。

僕ら自身も、プロダクトの開発段階においては、幾多の失敗を経験しています。

スピードを重視しつつ開発していたので、とにかく試行錯誤の連続で。挑戦を続けたからこそ、データが積み重なり、結果として誰もなし得なかった領域にまでチャレンジできています。

あとは、熱量も重要な要素であると実感しています。もともとは『ルクミー フォト』を提供していた我々が、いきなり『突然死を解決したい!』と言い始めるのですから、心配されて当然なんです(笑)。でも、解決したいのは保育業界や子育てに関する社会問題すべてだから、なんら不思議なことではなくて」

土岐ユニファが数多くの方々からご支援頂けている大きな理由の一つは、土岐のテーマに懸ける情熱が人一倍強いこと。『家族というテーマは自分の人生のテーマ。だから、事業ドメインを変える予定は一切ないし、シリアルアントレプレナーにならず、この事業に人生を掲げる』ときっぱり言い切れるのは、土岐の特徴であり、最大の強みであると感じています。土岐がこの社会問題を解決することに命をかける強い想いを、日々感じながら働いています。スタートアップの経営は、当然ながら困難の連続です。それでも土岐は真摯かつ誠実な姿勢を崩さす、強い情熱をもって、この社会問題に立ち向っています。その情熱が、ステークホルダーのみなさんにも伝わっているのだなと思わざるをえません」
土岐 「僕は自分の人生のテーマを見つけられずに、モヤモヤしていた期間が長いんです。でも、結婚して、子どもができた後の妻の転勤をきっかけに、家族と仕事のどちらを取るかの選択を迫られました。結果的に、僕は外資系コンサルティングファームでのキャリアを捨てて、家族を選びました。もちろん、男のプライドみたいなものが全くなかったかというとそういうわけではありませんが、そういったある種古い価値観を全て捨てて、自分にとって一番大事なものは、家族だというのが僕の結論でした。そういった経験を踏まえつつ、育児をする中で、保育業界や保育園に預ける家族の課題が大きなことにだんだんと気がついて。紆余曲折ありましたが、心から解決したい人生のテーマに出会えたからこそ、命を懸けて、徹底的に立ち向かおうと覚悟を決められるのです」

「スマート保育園」の加速と、中国・インドネシアなどを含めた海外展開を見据えて

「スマート保育園」の加速と、中国・インドネシアなどを含めた海外展開を見据えて
2019年9月末、シリーズCラウンドでの調達を完了したユニファ。これからさらに遠くまで走り出そうとしている今、彼らの描く青写真を語ってもらった。

土岐 「直近は、プロダクトへの投資、人への投資、新規事業への投資を中心に、事業を拡大していきたいと考えています。その上で目の前では、我々が推進する『スマート保育園』を全国に広めていくことが最優先です。同時に、toBのみならずtoCプロダクトを開発したり、グローバルに展開する準備も着々と進めていく予定です。

保育業界は、若手の離職率が約18%と非常に高い業界です。その上、平均年収も330-40万円ほどと決して高くないのが現状。ただ、子育てという社会にとって非常に重要なインフラともいえる重責を担ってくださっているからこそ、今後は社会的なステータスの向上にも目を向けていきたいなと思っています。たとえば、スウェーデンでは、保育士は大学教授と同等のステータスを得ており、幼児教育に高く貢献しているとされる仕事なんです。

海外では、保育のプロフェッショナルの在籍する保育園を選んで預ける流れが浸透していますが、日本では制度的に価格も質も競争が起きにくく、底上げの概念がなかなか広まりません。

ただ、僕らのサービスでは、いずれ保育園の現場の様子や雰囲気のデータも取れるようになる。だからこそ、保護者の方にも安心して保育園を選んでもらい、ブラック保育園と呼ばれるところは改善を促すような流れを作れたらと思っています。

その上で、医療の世界で看護師がバイタルチェックを元に健康管理を行うように、保育の世界でも様々なデータを有効に活用する『スマート保育園』がスタンダードになってほしいですね。

また海外でも、保育業界は手書き書類が多い、健康管理のデータ化が行われていないなど、日本と同様の課題が見られています。とくに、アジア圏の中国、インドネシアなどは、今後爆発的に子どもの数が増えるでしょう。来るそのときのために、国内で地盤を固めていきたいなと感じています」

「課題設定を的確に行うのが、海外市場に参入する上での大きなキーとなります。当たり前のことではありますが、海外における課題感が日本国内と異なっているのであれば、日本国内で成功した事業モデルも海外では全く通用しません。

その点、ユニファは『家族の安心・安全』のテーマにフォーカスしているので、国籍を越えた人類共通のテーマとしてグローバルに挑戦できる可能性はあると感じております。だからこそ、全世界から10,000以上の企業が参加した、スタートアップワールドカップでも優勝できたし、エンデバーというグローバルのアクセラレータープログラムにも採択されているのだと思います。今後も、強い想いを持って、着実に事業を成長へと導き、社会問題の解決を目指していきたいです」

執筆:鈴木詩乃
編集:BrightLogg,inc.
撮影:河合信幸

シェアする