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自動運転スタートアップ「ティアフォー」が、稀代のオールラウンダーとして創造したい未来、破壊したい今

自動運転スタートアップ「ティアフォー」が、稀代のオールラウンダーとして創造したい未来、破壊したい今

2019年夏、シリーズAラウンドでの累計資金調達額が120億円を突破したことで注目を集めたスタートアップがある。自動運転システム用のオープンソースソフトウェア「Autoware」を開発する、株式会社ティアフォー(以下、ティアフォー)だ。

スタートアップながら、ビッグチャレンジャーがひしめく自動運転領域への挑戦を始めた彼らは、どのように成功へのロードマップを描いてきたのか。そして、あえてオープンソース化を選んでビジネス戦略を築いたのはなぜなのか。ティアフォー創業者である、加藤真平氏(以下、加藤氏)に尋ねた。

■加藤真平(かとう・しんぺい) ー株式会社ティアフォー創業者 最高技術責任者(CTO) 1982年生まれ。2008年、慶應義塾大学で博士(工学)の学位を取得後、渡米。カーネギーメロン大学とカリフォルニア大学にて研究員を務める。2012年に帰国し、30歳の若さで名古屋大学の准教授に着任。国際的なコンピュータサイエンスの研究者として知られ、数々の著名論文を発表。それらの研究成果を応用した自動運転ソフトウェア「Autoware」を開発し、オープンソースとして全世界に公開したことで注目を集める。2015年12月1日にティアフォーを創業。10か国以上で自動運転システムのビジネスを展開し、一躍業界の中心的存在となる。2016年、東京大学の准教授に着任。2018年には国際業界団体The Autoware Foundationを設立、理事長に就任。現在、Autowareの導入企業は200社を超える。

■加藤真平(かとう・しんぺい)
ー株式会社ティアフォー創業者 最高技術責任者(CTO)
1982年生まれ。2008年、慶應義塾大学で博士(工学)の学位を取得後、渡米。カーネギーメロン大学とカリフォルニア大学にて研究員を務める。2012年に帰国し、30歳の若さで名古屋大学の准教授に着任。国際的なコンピュータサイエンスの研究者として知られ、数々の著名論文を発表。それらの研究成果を応用した自動運転ソフトウェア「Autoware」を開発し、オープンソースとして全世界に公開したことで注目を集める。2015年12月1日にティアフォーを創業。10か国以上で自動運転システムのビジネスを展開し、一躍業界の中心的存在となる。2016年、東京大学の准教授に着任。2018年には国際業界団体The Autoware Foundationを設立、理事長に就任。現在、Autowareの導入企業は200社を超える。

便利の代償に「破壊」されるものへの責任を負う

便利の代償に「破壊」されるものへの責任を負う

まず、加藤氏に尋ねてみたいことがあった。それは、スタートアップが新産業に取り組む上で意識するべきことはなにか、だ。スタートアップは、小回りが効いたり、挑戦的なマインドを維持しながら事業を推進させられるため、新産業にも足を踏み入れやすい。

ただ、その反面、未知なる領域で成功例を残すのはそう容易ではない。なぜなら、すでに築かれたロードマップがないからだ。自ら、道を切り開き橋をかけ、流されないように歩み続けるのは難度が高い。加藤氏は、創業者として、なにを考え、ティアフォーと歩んでいるのか。

加藤「事業性にフォーカスするのではなく、自社が掲げているビジョンやミッションに基づいて判断することを常に意識しています。たとえば、ティアフォーは『創造と破壊』をミッションに掲げています。そのミッションに反する事業でなければ、極端な話、自動運転だけに縛られる必要はないのです」

古いものを破壊し、新しいものを創造する。ただし、そのとき、破壊する責任を負うことを忘れてはならない。加藤氏は、そうきっぱりと断言する。

加藤「たとえば、自動運転によるモビリティの無人化という我々の創造は、考察や配慮を欠くと、誰かの職を奪ってしまう可能性があります。ですから、その破壊について、しっかりと考え抜かねばなりません。ロボットタクシーを都心に導入すれば便利かもしれませんが、今すぐ必要なものとは思えないですし、既存のモビリティサービスとの共存に時間がかかります。むしろ、運転手が不足している、いわゆる“便利”以外の目的で自動運転が必要とされている地域であれば、僕たちが創造に勤しむ意味がある。闇雲に事業を生むのではなく、テクノロジーが必要な地域のために、開発する。それが、新産業のあるべき姿だと思っています」

ティアフォーは、自動運転ソフトウェアをオープンソース化したことでも知られている。自社開発ではなく、オープンソースを選んだのはなぜだろう。

加藤「自動運転の民主化というビジョンを抱いているためです。自動運転が当たり前になる世の中を作り出すためには、自社開発だけではクオリティもスピードも大手企業には敵わないんです。

とくに、自動運転の領域では、競合にシリコンバレーのテック企業がいる。彼らよりも優れたプロダクトを生み出すためには、世界中のあらゆる個人や組織との連携が必要だと考えました」

日本は、ソフトウェア開発の点で、まだまだグローバルでの競争力が弱い部分がある、と加藤氏は言う。それなら、目指すべき未来に向けて、世界中の人々の手を借りてプロダクトを強くする。それが、ティアフォーの戦略だ。

加藤「Microsoftも、今やオープンソースのLinuxをベースにWindows OSを開発すると発表するほどです。自社開発では、リソースも、能力もキャップが出てきてしまう。それなら、オープンソース化し、世界中の人々と開発していくほうがよっぽど効率的だと思うんですよね。その品質確保や周辺機能のサービスをティアフォーが提供する。そうしていずれ、今日は競合している企業とも最終的に協業できる世界を目指しています。戦うとか超えるとかではなく、共に歩めたら、世の中に生み出せるメリットは多いのではと考えているんです」

自動運転領域のLinuxを目指して

自動運転領域のLinuxを目指して

ティアフォーは、多くのスタートアップとは異なる、独自の地位を築こうとしている。それは「オールラウンダースタートアップ」だ。規模の小さなスタートアップは、普通、一点突破を目指して事業を作る。ところが、ティアフォーが選んだのはその真逆と言っても過言ではない。

加藤「ティアフォーは、ソフト・ハード・コンテンツのすべてでマネタイズすることを目指したスタートアップです。最近のトレンドや界隈の傾向として、ひとつの事業に特化して圧倒的な成長を目指すのが一般的です。ただ、僕らの事業は、それでは生き残ることすら難しいですし、本当に世界一を狙うには多様な軸をもつビジネスモデルが必要です」

いわゆるポートフォリオ経営の考え方に近い経営手法だ。企業としては大きなエコシステムを回しており、その中身に注目すると、いくつもの事業の集合体であること。それが、ティアフォーの目指す事業の形だ。多くのコア事業を作ることで、ひとつの事業が倒れたとしても、企業としての存続は可能になる。

現在はソフトウェア開発が主な事業だが、自動運転領域でのハードやコンテンツ開発にも注力している。すでに水面下では事業として動き出しつつあるものや、10年後を見据えて動き出そうとしている事業もあるという。これらをティアフォー単独で行うのではなく、オープンソースの強みを生かした世界連合を形成して進める点がティアフォーの強さの秘訣ともいえる。スパンはそれぞれだが、じわじわと事業を増やすことで、自動運転領域のデファクトスタンダードとリファレンスデザインを築き上げる、すなわちLinuxのような存在を目指している。

加藤「『Autoware』は現在、国内外の200社以上に導入していただいています。海外でも、導入実績が10カ国を超えているんです。グーグルが、未だネバダ州とカリフォルニア州のみの導入と考えると、陣取り合戦ではティアフォーが優勢だと思っています。都心での活用はまだまだ課題が多いですが、中山間部や過疎地では、すでにニーズがあるとわかっていますし、活用事例もどんどん増えていますしね。
 
また、自動車関連企業の皆様も、製品開発やベンチマーク評価の用途で『Autoware』を導入してくださっています。世界中で利用されていることで、各社の性能比較の基準として用いられたり。実際、経済産業省が主導する事業でも『Autoware』を安全性評価の標準として採用していただく見通しにもなっていますので、今後さらに導入事例は増えていくだろうと予想しています。
 
Microsoftでさえ自社開発にLinuxを導入したことは大きな衝撃でした。自動運転領域では僕らがLinuxになりたい。費用対効果の側面でも、自動運転を民主化する意味でも、より『Autoware』が広く知られ、使われる場面が増えたらなと。
 
今後は、国際業界団体が『Autoware』を開発し、ティアフォーがその品質保証を提供する状態にしたいんです。センサーやコンピュータの構成、各種パラメーターの調整、細かいチューニングなど、とくにシステムインテグレーションの面で『Autoware』なら安心だと思える要素を、さらに積み重ねたいですね」

コンピュータサイエンスのプロフェッショナルとしてスタートアップを創業する覚悟

コンピュータサイエンスのプロフェッショナルとしてスタートアップを創業する覚悟

准教授の肩書きを持ちながらスタートアップを創業した加藤氏。大学発スタートアップとして、相当の覚悟を持って事業と向き合い続けている。

加藤「東大のコンピュータサイエンス分野の准教授が創業したスタートアップ。それはつまり、日本でもっともコンピュータサイエンスに詳しい人間が創業したスタートアップであることに他なりません。僕らが成功できなければ、日本の技術力なんてこんなものかと思われてしまうかもしれません。国の威信もかかっているという意味で、僕らは勝たなければいけない宿命にあります。
 
最先端技術を開発するだけでは満足できません。大学の立場から、法規制や倫理に関する課題提案も責任のひとつだと思っています。自動運転の真の実用化に向けて、地域がどうあるべきか、街そのものを変えていかないといけないのではないか、そうすると法案の作成などにも関わっていくことになるわけです。
 
ロボットやAIは、いずれ必ず未来で人間と共存する。だから、掛け合わせてプラスになるような環境を作りながらも、事業も事業で成長させなければなりません。
 
そのプレッシャーは非常に大きなものですが、同時にやりがいも大きい。だから、自分たちがやらなければならないと、強い意思を持ち続けられているのだと思います」

これからの未来、モビリティ領域は必ず進化を遂げ、自動運転もまた広く認知され活用される技術となるだろう。今後、ティアフォーがより多くの人々を幸せにできる未来を創造するためには、技術開発のほかに3つのキーファクターがあるという。

加藤「ひとつめは、規制。日本では、グレーゾーンの状態で国が事業を推進することはないからです。ただ、実は、日本って規制緩和に対する意識がすごく高い国なんですね。しっかりと事例を作って主張さえすれば、納得感も生まれ、未来に向けてポジティブな選択をしてくれる。まずは、自動運転に適した規制を作っていけるように、国のサポートを得ることがすべての始まりです。
 
次に、お金が循環する構造、つまりビジネスモデルです。過疎地で自動運転を実現したくても単純なBtoC、BtoBでは事業が成り立ちません。現在、そういった地域でも道路工事や社会保障などは国が一部負担してくれていますが、自動運転を普及させるには類似した交付金や補助金が必要になってくると思います。地域事業として国が一部負担するほどの価値が自動運転にあるかどうかがポイントになります。事業が立ち上がってお金が循環するようになれば、徐々にBtoCやBtoBのビジネスとしてもスムーズに展開していくのではないかなと。
 
最後に、リスクマネジメント。技術だけでは、100%の安全は保証できません。100%の安全を目指して技術開発をしても、エラーは必ず起こります。だからリスクとどう向き合うかが重要です。まず、技術を理解すること。その技術を用いるとどういう環境でどういうリスクが起こり得るのか、シナリオを作れないといけません。
 
次にそれら膨大なシナリオに対するシミュレーション検証とフィールド試験を徹底的に行うこと。そうして限定した条件のもとで運用することでリスクを最小化できます。残る極小のリスクについては、運用中の見守り体制であったり、事故発生時の保険整備であったり、いかにして保障を備え、社会受容性を得るかが大事になります。このようにリスクに対する予防と備えのガイドラインをしっかりと作っていけば、自動運転が日常化される未来もそう遠くないのではと思っています」

執筆:鈴木詩乃
取材・編集:BrightLogg,inc.
撮影:戸谷信博

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