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フィンテック×インシュアテック経営者対談、信用の可視化で新たな「お金と人の関係性」をつくる。

フィンテック×インシュアテック経営者対談、信用の可視化で新たな「お金と人の関係性」をつくる。

正直な話、ファイナンスや保険はユーザー目線では分かりづらい。関わるルールは幅広く、規約は長く、商品は星の数ほど提供されている。普段から情報を集め、触れていなければ扱いづらい「大人」のテーマと言えるだろう。

しかしながら、その複雑さを理解してうまく活用することができれば、リスクを軽減できたり、不要な支出を減らすなど、資金繰りの厳しい中小企業を救う「仏の手」に変わることもある。

より良い金融との関係性を築くために、ユーザー目線に立ったサービスを提供するスタートアップがある。クラウドファクタリングを活用して資金調達の新しい選択肢を提供するOLTA株式会社と、「わりかん保険」と銘打ちP2P保険を開発する株式会社justInCaseだ。

新規事業参入の壁が高く、古くからのしきたりも多い「ファイナンス」と「保険」。しかし、ふたつのサービスは、従来の商材とは異なる簡潔明瞭な「新しい金融」サービスを実現した。両社はいかにして障壁に打ち勝ったのか。それぞれの代表に話を聞いた。

■澤岻 優紀(たくし・ゆうき) OLTA株式会社 代表取締役CEO 1987年生まれ。神戸大学経営学部卒業。新卒で2012年4月に野村證券株式会社に入社。投資銀行部門にて、主に上場事業会社の資金調達業務に従事。社債、株式及びハイブリッド・ファイナンス等の案件提案及び案件執行に関与。2016年10月、起業準備のため退職。2017年4月にOLTA株式会社を創業
澤岻 優紀(たくし・ゆうき)
OLTA株式会社 代表取締役CEO
1987年生まれ。神戸大学経営学部卒業。新卒で2012年4月に野村證券株式会社に入社。投資銀行部門にて、主に上場事業会社の資金調達業務に従事。社債、株式及びハイブリッド・ファイナンス等の案件提案及び案件執行に関与。2016年10月、起業準備のため退職。2017年4月にOLTA株式会社を創業
■畑 加寿也(はた・かずや) 株式会社justInCase 代表取締役 保険数理コンサルティング会社Millimanで保険数理に関するコンサルティングに従事後、JPモルガン証券・野村證券・ミュンヘン再保険において、商品開発・リスク管理・ALM等のサービスを保険会社向けに提供。2016年justInCaseを共同創業。 プログラミング: VBA / Swift / Python / Ruby. 日本アクチュアリー会正会員。 米国アクチュアリー会準会員。ワインエキスパート。フィンテック協会理事。京都大学理学部卒(2004)
畑 加寿也(はた・かずや)
株式会社justInCase 代表取締役
保険数理コンサルティング会社Millimanで保険数理に関するコンサルティングに従事後、JPモルガン証券・野村證券・ミュンヘン再保険において、商品開発・リスク管理・ALM等のサービスを保険会社向けに提供。2016年justInCaseを共同創業。 プログラミング: VBA / Swift / Python / Ruby. 日本アクチュアリー会正会員。 米国アクチュアリー会準会員。ワインエキスパート。フィンテック協会理事。京都大学理学部卒(2004)

OLTAとjustInCaseのビジネスモデル

インタビューに入る前に、両社のビジネスモデルについて解説しておきたい。こちらを読み進めていただければ、よりスムーズに対話が理解できるはずだ。

OLTAのビジネスモデルはファクタリング。これは、ユーザーが持つ「入金待ちの請求書」(売掛金)を買い取り、その際に発生する手数料を利益とする金融サービスだ。一般的にファクタリングは「ユーザー」「ユーザーの取引先」「ファクタリングの提供会社」の三者間で行われるが、OLTAの場合は「ユーザー」と「OLTA」の間で取引が完結する(二者間ファクタリング)。これにより「ユーザーの取引先」に知られることなく資金調達ができる。

OLTAのビジネスモデルはファクタリング。これは、ユーザーが持つ「入金待ちの請求書」(売掛金)を買い取り、その際に発生する手数料を利益とする金融サービスだ。一般的にファクタリングは「ユーザー」「ユーザーの取引先」「ファクタリングの提供会社」の三者間で行われるが、OLTAの場合は「ユーザー」と「OLTA」の間で取引が完結する(二者間ファクタリング)。これにより「ユーザーの取引先」に知られることなく資金調達ができる。

justInCaseでは、スマホの故障・レジャーに対応する保険を提供。また、兄弟会社であるjustInCaseTechnologiesは、保険・事業会社向けの保険・金融に関連するITサービスを開発・提供している。今後は、サンドボックス制度を適用し、一般的な保険と異なるP2P(ピアツーピア)と呼ばれる方式を採用した保険も開発予定。P2P保険では、ひとつの保険をグループ購入することで、保険料を抑えることができる。

justInCaseでは、スマホの故障・レジャーに対応する保険を提供。また、兄弟会社であるjustInCaseTechnologiesは、保険・事業会社向けの保険・金融に関連するITサービスを開発・提供している。今後は、サンドボックス制度を適用し、一般的な保険と異なるP2P(ピアツーピア)と呼ばれる方式を採用した保険も開発予定。P2P保険では、ひとつの保険をグループ購入することで、保険料を抑えることができる。

両社ともに共通しているのは、AIによる業務の最適化を行なっていること。OLTAは約20万社のデータに基づくスコアリングモデルを開発し、従来当たり前だった面談や書類提出などの手間を解消し、日本初となるオンライン完結型の「クラウドファクタリング」を全国の中小企業に提供している。justInCaseではAI アルゴリズムを利用してユーザーの行動パターンを解析し、ユーザーごとにリスク評価することで最適な保険料のサービスを提供。これによりコストが削減でき、ユーザーメリットを増やすことに成功している。

金融業と保険業の心根にあるのは、手を差し伸べる助け合いの精神

金融業と保険業の心根にあるのは、手を差し伸べる助け合いの精神

──まず、おふたりが現在の事業を構想するに至った経緯をお教えください。

澤岻 「僕の人生を振り返ると、『人とお金』というテーマが浮かびます。奨学金を活用して大学に入ったり、ファイナンスのゼミに入ったり、投資銀行に入ったりと要所要所でファイナンスとの接点がありました。『知らなければ人生が違うものになっていた』と思う金融との接点や機会が多くあったのです。

私は会社の代表をしていますが、事業も人生と一緒で「お金の知識がないことで、社運を左右すること」が数限りなくあるだろうと考えています。しかしながら、いまだにお金と人の距離は遠いのが現実です。それは、供給者の論理が今なお強いということであり、ただでさえ分かりにくいものが分かりにくいまま放置されている現状があるからでしょう。金融業界の今後の可能性を考え、銀行の守備範囲外になりがちな中小企業の資金調達のニーズに応えるため、『ファクタリング(ユーザーが有する売掛金を買い取る金融サービス)』サービスをオンラインで始めることを決めました」

「僕の出身地は三重県ですが、地元で言うところの『みそ』、すなわち頼母子講(たのもしこう)のような相互扶助の関係が保険でも実現できないだろうかと考えていました。僕の田舎では、『味噌が無いから隣のおばちゃんとこから借りてきて』といった、小さな助け合いが今でも続いています。首都圏や大都市域に近づくほど『リアルな助け合い』は希薄になりがちです。しかし、オンラインのITサービスなどではこうした関係性が今なお息づいてると感じることがあり、そのありかたを保険のフレームに当てはめることができないだろうか、というところが出発点ですね」

──澤岻さんのご出身である沖縄でも「ゆいまーる」、「もあい」といった相互扶助のあり方が色濃く残っていますよね。そうした助け合いの精神をそれぞれのサービスに落とし込んだと見受けていますが、それだけではなく、デザインやユーザビリティの視点から「かつてないほど分かりやすい」ことが双方のプロダクトの特徴のように思います。

──澤岻さんのご出身である沖縄でも「ゆいまーる」、「もあい」といった相互扶助のあり方が色濃く残っていますよね。そうした助け合いの精神をそれぞれのサービスに落とし込んだと見受けていますが、それだけではなく、デザインやユーザビリティの視点から「かつてないほど分かりやすい」ことが双方のプロダクトの特徴のように思います。

澤岻「弊社では事業を始める際に従来のファクタリングについてユーザーインタビューを行いました。そこから見えてきたこととして、ファクタリングは今後高いニーズが見込まれるにも関わらず、手続きに時間がかかる上に高い手数料がかかること。また、サービス利用側からすると、利用するにあたって実態の分からない怖さを感じていることが見えてきました。
 
また、2016年からマイナス金利政策が導入されたことも影響し、銀行側にはより大きな金額を貸したいというインセンティブが働いています。今後の予想では、社会の収益構造が大きく変化しても、数10万円から数100万円単位の少額短期の融資供給は縮小するのではないかと考えました。
 
このような状況下において、銀行の守備範囲外となってしまう中小企業にこそ金融ニーズがある。我々が提供する、早くて簡単で手頃なファクタリングはその受け皿になれるでしょう。そうした意味で、資金繰りの悩みを解消するラテラルな選択肢でありたいと考えています」

「なるほど。ニーズがあるのに供給者目線になりがちで、ユーザーにきちんと届いていない現状は保険も同じです。例えば、どんなに学歴が高いベンチャーキャピタリストの方でも、(保険業以外の)金融機関の方でも、『保険料』(ユーザーが保険会社に支払う)と『保険金』(保険会社がユーザーに支払う)がごっちゃになってしまうことが多いです。その原因は、主語がユーザーではなく供給者側にあること。一般的なITサービスであれば、ユーザーが主語になることは当たり前かもしれませんが、保険業界にはまだその意識が浸透していない。
 
わたしたちはスマホ保険を提供していますが、一般的な紙面より一回り以上小さいディスプレイで、約款や重要事項説明などの必要情報を読んでいただかなくてはいけません。だからこそ、読みやすく分かりやすい、直感的なデザインと説明であることに注力しました」

澤岻「金融や保険には、古くからの慣習や法律による縛りがありますよね。それはどのように解消されたんですか」

畑:「前例の無い」ことですけれども、金融当局が心配することは全て織り込み済みであることを書類に残し、綿密な議論と質疑応答を行いました。「ペーパーレス」や「スマホ保険が3ヶ月の契約期間での自動更新であること」などの内容そのものは決してルールで禁じられたものではありませんから。

「『前例の無い』ことですけれども、金融当局が心配することは全て織り込み済みであることを書類に残し、綿密な議論と質疑応答を行いました。『ペーパーレス』や『スマホ保険が3ヶ月の契約期間での自動更新であること』などの内容そのものは決してルールで禁じられたものではありませんから」

──省庁との的確なコミュニケーションが肝なのですね。

「その通りです。保険代理店の保険募集のパンフレットなどは、商品説明のたった一文でも保険会社の確認無くして変更することは許可されません。その結果、募集文章は非常に細かく難解になることが散見されます。膨大な情報量を全てのユーザーが理解できるわけではないことは金融当局も当然理解していると思います。『誰も読まないかもしれないけれども、あとで苦情になるから書く』という慣習も存在していますが、僕らからすると『理解されなくては意味がない』んです。規制はあれど、ITサービスの当たり前として、テコ入れするべきところにテコを入れているというのが僕らのサービスデザインです」

簡潔明瞭に整理された情報を届けるために、ふたりが「ユーザー目線」に注目した原点とは

簡潔明瞭に整理された情報を届けるために、二人が「ユーザー目線」に注目した原点とは

──ともすればおふたりとも業界経験があるからこそ、「供給者目線」に立ってしまいがちだと思われますが、なぜ「ユーザー目線」に視点を切り替えてプロダクトを開発することができたのでしょうか。

澤岻「僕は金融といっても、銀行ではなく証券業界にいましたから、純粋に融資と向き合えたのかもしれません。『三者間ファクタリングばかりだけれど、どうして二者間は無いのだろう?』という業界の常識を不思議に思うところから始まりましたから。さんはどうですか?」

「たまたま新卒の時に、保険の算出方法書の作成に携わったことが大きいと思います。事業会社ではなくコンサルとして、トップシェアを占める複数の保険会社の保険設計の裏側を見ることができたわけです。その時に、僕も「保険の原価は実のところ無駄も多い」と驚いて。よく見てみると安くできる要素もたくさん発見できるわけです。保険の原価を知ってる人が、全然保険を買わないというのは本当ですよ」

澤岻justInCaseでは、どの部分に手を入れているんですか」

「原価については統計データから算出する数字なのでいじれないですね。工夫して価格を抑えているのは、リスクバッファ(ワーストケースシナリオのリスクを想定した上乗せ)とエクスペンス(運営経費)の部分です。リスクバッファはユーザーが払う保険料を確定しないことで抑え、エクスペンス、すなわち経費部分はペーパーフリーで用紙代を浮かせ、保険情報をITで一括管理することでコストを抑えています。価格を抑えた保険商材を出すと『本当に保険金を払ってもらえるの?』と心配する声も届くんですが、安い理由を説明すると納得してもらえますね」

──ユーザーにITサービスとして使っていただき、さらに利用を続けてもらうためには「実利がある」ことが求められます。それぞれユーザーにとってのメリットを教えていただけますか。

──ユーザーにITサービスとして使っていただき、さらに利用を続けてもらうためには「実利がある」ことが求められます。それぞれユーザーにとってのメリットを教えていただけますか。

澤岻「中小企業の資金繰りを考えた時にバランスシートの中で、『借金をする』か『資産を売る』という選択肢が浮かびます。ファクタリングは後者の『資産を売る』扱いになるので、後々のデメリットとなる借金扱いにならず、企業の利点になります」

「ユーザーに対する弊プロダクトのメリットを挙げるならば、個人に最適化した商品サイズと価格で提供できる点でしょうか。提供しているスマホ保険では端末の故障を補償していますが、弊社が開発したAIが人別に保険料を算出しています。それはスマホをよく壊す人と、そうでない人とのリスクが違うからです。さらに、アプリ上で保証の上限を自由に設定できることから、加入窓口との対面やりとりなどのコミュニケーションコストも抑えることができます。我々のビジネスモデルは比較的新しい方式をとっているので、大企業さんからタイアップしようとお声がけいただくこともありますよ」

変わりゆく業界、「選ぶ」立場から「選ばれる」立場へ

変わりゆく業界、「選ぶ」立場から「選ばれる」立場へ

──現在ではフィンテックなど、テクノロジーによる各業界のテコ入れが行われています。おふたりは今後金融・保険業界はどのように変化していくと考えていますか?

澤岻「一般的にはお金に悩んだ時にすぐに想起するのは、銀行からの借り入れです。お金を貸す以上、銀行側としてもしっかり審査する必要があるので、今まではどうしても無意識の上下関係が生まれがちでしたが、現在では立場が逆転しつつあることを金融機関も認識すべきです。貸し手と借り手がフェアなファイナンスを我々も思索していますが、銀行にしても、保険会社にしてもユーザビリティーやユーザー体験について本気で考えるフェーズが到来していると思います」

「スタートアップとVCの関係にも似ていますね。新規参入や新しい分野の人が入って新しいものがどんどん生まれつつあると。この後の日本社会では人も少なくなりますし、伝えるために何ができるかを考えたサービスのあり方が求められると思います」

──そのうえで、どのようなサービスを提供していきたいと考えていますか?

「これは商品そのものではなく、もう少し大きなビジョンの話ですが、保険の無駄を可視化して減らしていきたいです。今って自分がどの保険に入っていて、どこが補償されるのか分かりづらいですよね。海外旅行の際の保険を例にすると明らかです。クレジットカードにも旅行保険が付帯していることが多いのですが、条件も様々ですし、補償金額もバラついています。結局、クレジットカードの保険で事足りるのか、別途保険に加入したほうが良いのかが分からない。それを、たとえばクレジットカードを撮影するだけでどの保険が付いているかを自動で判別してくれるようなシステムを開発してみたい
 
もっと言えば、保険はもともと沖縄の『もあい』と同じ、相互扶助のシステムだったわけです。でも供給者の論理が働いて複雑化したことで『払ったお金が、別の誰かのために使われている」ことが分かりづらくなってしまった。僕はそこにメスを入れて、『あなたが払ったお金が遠くに住んでいるAさんの助けになりましたよ』を可視化してみたい。実現すればクラウドファンデイングのように、「誰かのためになるなら』と保険にお金を払いたくなる人が増えていくと思います」

(編集注記:実際に本インタビュー後にそのような機能を発表されました。 https://justincase.jp/news/20190918creditcardinsurancebenefits/

澤岻「お金の流れが分かりやすく可視化されると保険に対する理解も深まるので、加入者のベネフィットになりますね。
 
我々の今後の動きですが、ファクタリングを利用される方は資金繰り以外の悩みも同時に抱えていることが多いので、その課題に対するプロダクトを作っていきたいと考えています。たとえば、多くのスタートアップではCFOがいて当たり前とされていますが、中小企業ではコスト面から採用が難しい場合もあると思います。経営者がすべきことは事業に集中することなので、そうした悩みを支援するような機能は外に求めても良いと思うのです。私たちは与信を目的に様々なデータを取得しています。将来的には経営者の持つ悩みに寄り添って解決するための最適な手段を提案する、などのアプローチも可能になるでしょう。
 
我々が行なっているのは、あらゆる情報を信用に変え、あたらしい価値を創出することです。今は資金繰りの支援をコアバリューに事業を進めていますが、信用を価値に変えられるフィールドは数限りなくある。目標は高く、経営者のみなさんが『ひとりでスケールできる世の中』を作り出せたらと考えています」

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お金とは、突き詰めると信用を担保するための媒介だ。紙切れや金属片とサービスや商品を交換できるのは人々がそこに価値と信用を感じているから。複雑になりすぎていたお金と人の関係性は、今後テクノロジーのテコ入れによって、分かりやすく親しみやすいものになっていくかもしれない。少し抽象的な話になってしまうが、誰もがお金に対して苦手意識を持つことなく活用していける世の中ができれば、世の中の幸せの総量も増えていくはず。両社の今後の活躍に期待したい。

取材・デスク:BrightLogg,inc.
執筆:小泉悠莉亜
編集:鈴木雅矩
撮影:小池大介

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