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HR領域のCEOが語る。企業の「採用成功」と求職者の「転職成功」とは?

HR領域のCEOが語る。企業の「採用成功」と求職者の「転職成功」とは?

都内某日、HR業界を牽引するキープレーヤーズのCEO高野氏と、for StartupsCEOの志水による対談が行われた。ふたりはインテリジェンス(現、パーソルキャリア)出身という共通点をもち、在籍期間も重なっているため、普段からも親交があるようだ。

今回はそんなふたりにHR業界の変遷と、いかにしてスタートアップが優秀な幹部を採用すればいいのか、そのエッセンスについて語ってもらった。

HR業界とスタートアップが交わり始めた

HR業界とスタートアップが交わり始めた
■高野秀敏(たかの・ひでとし)※右
ー新卒で株式会社インテリジェンスへ入社。その後、株式会社キープレイヤーズを設立し、人材エージェントとして、30社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。1万名の方のキャリアカウンセリングと面談対策。マネージャーとして、キャリアコンサルタントチームを運営・教育。人事部採用担当として、数百人の学生、社会人と面談。学校や学生団体での講演回数100回以上。
志水雄一郎(しみず・ゆういちろう)※左
フォースタートアップス株式会社代表取締役社長CEO。慶應SFC卒業、インテリジェンス(現パーソルキャリア)にて『DODA』立ち上げなどを経て、2016年に東証1部上場企業グループ戦略子会社として成長産業支援に特化したタレントエージェンシー『NET jinzai bank』を創業、Co-Founder & CEOに就任。2018年3月に『フォースタートアップス株式会社』に社名変更。2015-16年『Japan Headhunter Awards』にて『Headhunter of The Year』2年連続受賞。2017年 国内初『殿堂』入りHeadhunter認定。

2005年に起業した高野氏と、2012年に転職、2016年カーブアウト、2017年にMBOした志水。ふたりが挑戦したタイミングは離れているが、それぞれから見てHR業界はどのように変遷してきたのだろうか。

高野「実は志水さんがインテリジェンスから転職した頃『今のHR業界ってどうなの?』と相談されました。私は『今は厳しいですよ』と返したのを覚えています。当時は大手メガベンチャーによる大量採用がちょうどストップした時期で、紹介会社などは絞られることが予想された時期でした。
しかし、結果的に見ると志水さんが挑戦する前と後では、スタートアップ界隈の様子がガラッと変わったように思います。スタートアップに投下される資本というのは、その前に比べて圧倒的に増え、大手企業による大量採用は下火になったものの、どこも人材が不足している状況です。その前であれば紹介料が高いという反応ばかりでしたが、今同じようなことを言われることはありません。あの時期に新たな挑戦をスタートし、ここまで会社を成長させた志水さんのインサイトは正しかったと言わざるを得ません」

志水「米国や中国では成長産業セクターにお金や人というキャピタルを集中させて、国際競争力を持つメガベンチャーを新たに多数創出し、国家の成長に繋げている中、日本ではある意味リビングデッドしているような一部の大企業にもお金と人を投下し、結果、国としても競争力を落としている感があります。
高野さんに相談した頃に、世界 及び 日本が置かれている現状をリサーチした上で、日本の成長産業セクターの進化をヒューマンキャピタルから創出し、日本の成長にコミットする事業・サービスを立ち上げようと動きました。その活動に対する起業家・投資家のみなさんの応援もあって、for Startupsの設立に繋がっています」

市場に寄り添う志水と個に寄り添う高野氏

経営者に寄り添う志水と求職者に寄り添う高野氏

結果的にも企業も転職者も満足させるサービスを提供しているふたりだが、そのプロセスには違いがあるようだ。for Startupsの志水は経営者に寄り添い、課題を解決するための人材を紹介している。

それに対し、キープレーヤーズの高野氏は求職者に寄り添い、悩みを解決するための企業を紹介しているのだ。ふたりの異なる姿勢にはどのようにして身についたのだろうか。

志水「私は、シンプルに日本を成長させるためにしかビジネスを行っていません。そのためには、スタートアップを始めとした国内成長産業セクターの進化が必要だと思っていますし、逆に言えばそれ以外への支援は劣後させるようにしています。日本を成長させようと思い、日本の成長に寄与できる競争力のある会社から順に、競争力のある人材を掛け合わせているのです」

高野「実は志水さんのやり方っていうのは、それまでの紹介会社のやり方と一線を画すんですよね。勝てる会社を見分ける嗅覚が素晴らしいし、そこに注力しています。他の会社もマネしたいと思っていると思いますが、それがなかなかマネできないのです。
私のお話をさせてもらうと、本来紹介会社は企業からお金をもらっているので、本当は企業起点でものごとを考える必要があると思っています。しかし、私が前職で求職者に会う部署に長くいたので、つい求職者に寄ってしまうのです。意識してこのスタイルになったというよりは、最初に身に着けたスタイルで、かつ得意なやり方だったというだけですね。以前『この業界で法人営業タイプじゃなくて初めて成功したタイプ』と言われたこともあります。私の感覚としては求職者だけでなく、結果的に企業の役にも立っているつもりですけどね」

企業の課題を解決する志水と転職者の課題を解決する高野氏。それぞれどのように課題解決のサポートをしているのだろうか。

企業の課題を解決する志水と転職者の課題を解決する高野氏。それぞれどのように課題解決のサポートをしているのだろうか。

志水「経営者の方によくお伝えしているのは、良いヒューマンキャピタリスト(エージェント)を見つけたらともかく事業課題、組織課題を壁打ちすること。ひとりで課題解決方法を考えているより、ヒューマンキャピタリストに話してフィードバックをもらった方がいいです。だからこそ、優秀なヒューマンキャピタリストを増やしていきたいと思っています。
ただし、その一方で課題解決のためだけの紹介にならないようにしています。紹介によって企業の課題を解決するのも大事なのですが、枠に当てはめるような紹介だけでは、HRの仕事は面白くありません。課題がなかったとしても『こんな人がこの会社に入ったら面白くなりそう』とイメージして紹介ができるようになります。そして、そういったクリエイティブな紹介が重要だと思っていますね」

高野「確かに課題ありきではない紹介というのは重要ですね。紹介業はよく右から左に、と揶揄されることも多いですが、本当に良い方を紹介するにはエージェントの高いスキルが必要です。しかし、そういった成果はすぐに出るものではないので、成果が出る前にやめていくエージェントも多いです。
私が経営者や求職者と話すときは、できるだけ本音のコミュニケーションをしてもらえるように努力しています。しかし、最初から本音でコミュニケーションをとってくれる方はそう多くないので、できるだけ自分から腹を割って話すようにしていますね。本音で話せているのであれば、仮に自分から紹介した以外の企業で決まっても満足できます。逆にちゃんと本音で話せていないと、私が紹介した企業で採用が決まってもストレスを感じますね」

会社を成長させるための採用とは

会社を成長させるための採用とは

採用のプロであるふたりに、外部から幹部人材を採用するときの注意点も聞いてみた。

高野「採用には経験値が必要だと思います。採用を初めた頃というのは、自社にどんな人が合うかも分からないため、履歴書を見てピカピカの経歴の人を採用してしまいます。それでうまくいく場合もありますが、スキルだけで選んでしまうと失敗する可能性の方が高いです。しかし、そういった失敗も採用を続けていく上では、決して悪いことではありません。失敗を重ねることで、自社にどんな人材が合うのか分かってくるため、採用における失敗も減ると思います」

志水「IPO直前での必然的な幹部採用など、期限に追われて急いで採用すると失敗する可能性は高くなります。とくに役員クラスのポストに就けるのであれば、入社してから一定の時間が必要だと思います。いきなりポジションに就けるのではなく、お互いの信頼を醸成する時間をとったほうがいいと思います」

では、会社の成長を考えたときに、採用についてどのように考えればいいのだろうか。高野氏はこう語る。

高野「創業当初というのはどの社長も自分より優秀な社員を採用しようとします。しかし、ポジションが一通り埋まってくると、採用が停滞しだすのです。それは、社内の人を差し置いて、外部から幹部人材を採用するのに大きな決断がいるからです。
以前、イベントで一緒になったエス・エム・エスの諸藤さんが『幹部を外部から採用するのに全く悩まなかった』と言っていたのを覚えています。普通なら既存の社員に気を使ってしまいますが、それが全く無かったというのですね。組織の成長に対して1ミリもブレがないからこそ、あれだけ会社を成長させられたんだと思いましたね」

転職を成功させるには

転職を成功させるには

話題は企業の採用だけでなく、求職者にとっての転職活動に移る。転職を成功させるためのコツとはなんなのだろうか。

志水「転職をする際にも、企業のリサーチとデューデリが必要だと思います。しかし、企業を調べる方法なんて誰も教えてくれません。エージェントに頼んだとしても、わざわざデューデリしてくれるわけではないのです。
だからこそfor Startupsでは、キャリアデューデリをシステマティックにできる仕組みを作ろうとしているのです。IPOをしている企業であれば情報を公開していますが、IPO前の企業となると情報を集めるだけでも大変です。だからこそ、for StartupsではプレIPOの情報も集めて、情報を集約し始めているのです。
もうひとつ、転職を考えている人にいえるのは、勝っている会社にみんな集えばいいのかという問題ですね。キャリアにおいては負けた方が、結果的に勝ちという場合だってあります。極端な事例かもしれませんが、業界一番手の会社でマネージャーになるよりも、二番手・三番手の会社でCxOを目指した方がいい場合だってあると思います」

高野「確かに求職者の方に話を聞いていると、成長している企業に惹かれますし、みんながいいと言っている企業に行きたがりますね。もちろんそれも一つの考え方なのでいいのですが、成長している会社に行くよりも、入社してから活躍できるかの方が重要です。
そのためには自分がどうなりたいのかっていうビジョンが必要ですが、ほとんどの人がそういったビジョンを持っていません。ビジネスの場ではゴールを決めて、そこから逆算するのに、それを個人でやっている人は極端に少ないのです。そしてそういった方に必要なのは、今までやってこなかった『どうなりたいか』を決めるよりも『どうなりたくないか』を考えることだと思います。例えば優秀な人がいっぱいいる中に入ってしまえば、ほとんどの人がワンオブゼムになってしまいます。そうなりたくない方は、どの会社を選ぶかもう一度考えた方がいいですね」

志水「将来起業するためにと、コンサル会社に行く方もいますが、コンサル会社に行っても起業のために必要なスキルが得られる訳ではないことは覚えておいた方がいいですね。エージェントに「起業したい」と伝えると、コンサル会社への転職を勧めてくるケースも多いですが、それは起業に有利になる支援をしているわけじゃなくて、エージェントにとって目先の成約となるからだと思います。確かにコンサル出身の起業家は多いですが、それはコンサルに行って起業するスキルを得たわけではなくて、もともと優秀な人がコンサルに行った後に起業したケースが多いだけだと思います」

高野「やりたいことや学びたいことが決まっていて、それがコンサルでなければいけないのであれば、選択肢のひとつとしてコンサルに行くのもいいと思います。ただし『キャリアの可能性を広げたい』という目的ではおすすめしません。起業というのはむしろ、可能性を狭めてフォーカスすることだからです。若い人が行くのであればいいですが、歳を重ねて給料も上がってくると、辞める決断もしづらくなってくるので、むしろ起業が遠ざかる場合だってあります」

最後に起業を考えている人についてもこう語ってくれた。

高野「よく求職者の方に話を聞いていると、起業するか転職するか迷っているという人がいますが、そういう方は起業しない方がいいですね。そのふたつは同じように見えますが、実は全然違います。起業で悩んでいてうまくいく人は、Aの分野で起業するか、Bの分野で起業するか悩んでいるタイプの人です」

志水「確かに起業と転職を並列で考えている人はいますが、起業はそんな簡単なことではないですね。誰かが作った会社で働くか、自分が作った会社で誰かを働かせるのかはパラダイムが大きく違いますから」

執筆:鈴木光平
取材・編集:BrightLogg,inc.
撮影:小池大介

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