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すべては日本のプレゼンス向上のために──BPOでスタートアップを支援するNTT東日本の「本気」

「持たざる経営」で本来注力すべき業務に集中したいが、思うようにアウトソーシングが進まない──こうした企業課題をICTの面でバックアップするサービスがある。東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本が展開するBPOソリューションだ。グループが持つアセット・リソース・ノウハウといったケイパビリティを余すところなく提供しながら事業を拡大、2020年にはスタートアップ支援を専門とした部署を立ち上げた。

大手、中堅などさまざまな企業が存在するなかで、NTT東日本がスタートアップに着目した理由や狙いはどこにあるのか。ビジネスイノベーション本部バリューパートナー部で業務にあたる小俣雅和氏(以下、小俣氏)、板垣佑弥氏(以下、板垣氏)にお話を伺った。

スタートアップには、NTT東日本にはない専門性や技術力、構想力がある

■小俣雅和(おまた・まさかず)
1998年NTT東日本に新卒入社。入社後3年間システムエンジニアとしてグローバルロジスティクスシステムの開発に従事。うち約1年はクライアント米国法人の要件定義・基本設計ため米国に滞在。その後、ソリューション営業、新卒採用・HR、法人市場における企画戦略、新規事業創出等を経験し、昨年ビジネスイノベーション本部にバリューパートナー部を立ち上げ、NTT東日本グループのアセット・ノウハウを活用したビジネス、とりわけスタートアップ支援事業の企画戦略を担っている。

本題に入る前に、情報通信業界のリーディングカンパニーであるNTT東日本が、BPOソリューションを始動させた経緯について紐解いておきたい。

バリューパートナー部で企画・支援グループ長を務める小俣氏は、こう説明する。

小俣「私たちが所属するビジネスイノベーション本部は、法人向けサービスを通じて地域・社会・経済に広く貢献することをミッションとしています。このミッションの実現を加速させられる事業とは何か。たどり着いた答えが、NTT東日本グループのアセット・リソース・ノウハウといったケイパビリティを有効活用するBPOソリューションだったのです。

今やBPOソリューションは、当社にとってなくてはならない事業に成長しつつあります。」

小俣氏は、BPOソリューションを基軸にスタートアップに特化したバリューパートナー部立ち上げに携わっている。あらためて、NTT東日本がスタートアップに着目した理由は何だったのだろうか。

小俣「スタートアップには、私たちにはない専門性や技術力、着眼点・構想力があります。一方、NTT東日本グループは、彼らが不足しがちなエンジニアリングリソースやICTにかかわる現場力、サービス展開におけるオンサイトエンジニアへのナレッジ浸透のノウハウ、長年培ってきた顧客基盤など豊富な資源や資産を持っています。

お互いを補完しながらシナジーを発揮し、ひとつでも多くのビジネスを成功へと導くことが、地域社会・経済への貢献につながり、ひいては日本のプレゼンスの加速度的な向上につながるのではないか。このような考えから、2020年に新たな部署を立ち上げる運びとなったのです」

150か所の保守・保全施設と6000人のエンジニアで、全国展開をサポート

『NTTにおけるB2B2BXモデルへの取組みについて』日本電信電話株式会社)より引用

では、バリューパートナー部では具体的に、どのような考えやプロセスのもとスタートアップ支援にあたっているのだろうか。

小俣「バリューパートナー部の基本的な立ち位置は、事業者さまの裏方となります。

営業スタイルとしては『B2B2X型』を採っており、Xはサービスの提供先、つまりエンドユーザーとしての企業さま、店舗さまなどを指します。中央のBがサービス提供主体としてのスタートアップ事業者さま、その裏側を支える左のBが私たちの立ち位置です。」

加えて、とりわけスタートアップに多い「持たざる経営」についても積極的にバックアップしていきたいと小俣氏は語る。

小俣NTT東日本グループでは、約150か所の保守・保全施設と約6,000人のエンジニアを有しています。日々全国規模で、多様なサービス・システムの開通、設置・設定、保全・保守などに向き合っているエンジニアの技術力、迅速性、および現地における臨機応変な対応とそれを支える統制力が私たちの強みとなっています。

また、30年以上にわたり運用してきたネットワーク・システムの監視・保守サポートデスクや各種コールセンター、調達・保管・配送と言った物流分野、さらにはデータ利活用の領域まで、私たちのケイパビリティには大きなポテンシャルがあると考えています。

このようなアセットやリソース、ノウハウといったケイパビリティを事業者さまとシェアリングしながら、私たちがBPOという形で事業者さまに成り代わって業務を実施する。そうすることで、スタートアップが本来注力すべきコア業務に経営資源をシフト・集中できる環境づくりをバックアップしていきたいと考えています。」

設備や人材を“持たざるを得ない”企業が、持たざる経営を補完していく。こうしたパートナーシップは「事業を拡大したいが、リソース不足であきらめざるを得ない」というスタートアップにとっても、追い風となることは間違いない。一方で、気になるのは費用の問題だ。

小俣「実作業に入る前に、事前調査をし、ベストな商流フローをコンサルティングさせていただくのが、私たちの基本プロセスです。『この作業で、どのくらいの効率化が見込めそうか』などを細かく協議したうえで、価格をご提示する……いわばオーダーメイドのようなイメージですね。各社からは費用対効果を鑑みたうえで、最終的に納得感をもって選定いただいています」

医療系スタートアップと協業。決め手は盤石なサポート体制とスピード感

■板垣佑弥(いたがき・ゆうや)
2013年NTT東日本に新卒入社。入社後6年間、toBへのコンサルティング営業に従事し、社長表彰も受賞。2019年には社外トレーニーとしてプライステックSaaSベンチャーに派遣。2020年にバリューパートナー部に帰任し、ベンチャー・スタートアップ支援事業の企画開発を担っている。その他兼業で、株式会社Naluにてベンチャー企業複数社のRPOを請け負う他、株式会社Ghostのグループ会社として2020年10月に株式会社antead(アンティード)を創業、代表取締役CEOを担っている。

ここで、数ある事業者からNTT東日本をパートナーとして選んだ企業を1社ご紹介したい。医療系スタートアップ、株式会社カケハシ(以下、カケハシ)だ。

同社は「日本の医療体験を、しなやかに。」をミッションに掲げ、医療業界のDXを推進。調剤薬局に勤務する薬剤師の負担軽減と服薬指導の質向上を実現する、クラウド型電子薬歴システム『Musubi』(ムスビ)を提供している。バリューパートナー部とはどのような経緯で協業をスタートさせたのだろうか。協業にあたる板垣氏が振り返る。

板垣Musubiは利用開始時に、必ず現地での導入設置作業が発生します。オンプレミスのローカルサーバー上で動く、薬局のレセプトコンピューターに接続させる必要があるからです。導入店舗が増えるにつれて、カケハシの悩みの種となっていったのが慢性的なオンサイトエンジニア不足でした」

『Musubiがリリースされたのは2017年8月。以来5名の社員が導入設置作業を行っていたものの、受注が月100件を超えることも珍しくなく、チーム全員が常に全国を飛び回っている状態だった。アウトソーシングを試みたこともあったというが、依頼した業者はカケハシが期待したレベルには達していなかったという。

板垣「薬局にはネットワークに詳しい人がほとんどおらず、『ルーターの場所が分からない』『ケーブルがスパゲティ状に絡みあって、どこにつながっているのか分からない』といったケースもしばしば。ですから、Musubiの導入設置作業をする際には、どんな状況にも臨機応変に対応できる知識や経験、技術力が求められます。

このような状況下で、当社を選んでいただいた理由は主に3つありました。

1,北海道から沖縄まで全国をカバーできる体制が整っていたこと。
2,作業のクオリティが高いこと。
3,スタートアップと同様レベルの迅速さがあること。

BPOの提案から導入までおよそ4カ月で完了し、初回の導入設置作業から4店舗同時でしたが、非常にご満足いただけたようでした」

2021年6月に東日本エリア、8月より西日本エリアでの運用を開始してから、現状は月全体の3割ほどの導入設置作業をアウトソースされている。今後は体制強化を進めながら、BPOを加速させていきたいと意気込む。

板垣「今後は、各種デバイスの調達やキッティング、保守対応などもアウトソースしたいという嬉しい声もいただいています。カケハシの強みであるソフトウェア開発によりフォーカスしていただけるよう、周辺業務を全力でサポートしていきたいですね」

※詳しいカケハシとの協業事例はこちらからご覧いただけます。

STARTUP DBで、共に日本を盛り上げる「真のパートナー」に出会いたい

「真のパートナーとして、パートナーに寄り添い、体験価値を提供し続ける」。これはバリューパートナー部が掲げているミッションだ。協業先を広げていくためにも、13,000社以上のデータを持つSTARTUP DBを積極的に活用していきたいと両氏は語る。

板垣「実は兼業で会社経営にも携わっていて、経営者や実業家とそれなりに付き合いがあると自負していたのですが……STARTUP DBを閲覧してみて、未知の企業や業務領域がたくさんあることに気づかされました。この情報の厚みには、運営するフォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)のナレッジやリテラシーが反映されているように感じます。

STARTUP DBでひとつでも多くのスタートアップと出会い、スケールに貢献していくのが当社の役目。私としては実践で身につけた経営視点を活かし、各社と円滑なコミュニケーションを図りながら、互いを高め合えるパートナーシップを築いていきたいですね」

小俣STARTUP DBを通じて、共感・共創・共成という『3つの共』を分かち合える同志と、数多く出会いたい。真のパートナーとして、共に日本のプレゼンスを高めていきたいというのが目標であり、願いです。

フォースタは、CXO人材を紹介や、資金支援など経営の本質にかかわるサポートを多角的に展開していますが、その点は私たちにはない強みであると同時に、共感を覚えます。私たちもエンジニアリングリソースを提供していますし、また、安心・安全を標榜する私たちがパートナーとなることで、スタートアップの信用力や資金調達面で多少なりともプラスになる部分があるのでは、と感じています。今後フォースタとさらに連携を強めていくことで、スタートアップへの支援も厚みがますと思いますので、NTT東日本フォースタ ・スタートアップでWIN-WIN-WINの関係性を築きながら、多くのスタートアップの成長をドライブしていきたいですね」

スタートアップ支援の領域では新参者だが“業務フローまで自身がしっかりと入り込み、一緒に汗をかく覚悟”で取り組んでいる──小俣氏のこの言葉を聞いたとき、事業に対する情熱と本気度がひしひしと伝わってきた。

インタビュー:福嶋聡美
撮影:加藤秀麻

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