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ドローンはこれからの社会インフラに。DroneFundが目指す、社会変革の形

ドローンはこれから社会のインフラに!インターネット同様に社会を変える大きな波になっていく

ドローン、そしてエアモビリティへの投資に特化したVC「Drone Fund(ドローンファンド)」。法の規制によってビジネスになるのはまだ何年も先だというイメージが拭えない「ドローン」。しかし、ドローンによる配送や空飛ぶクルマなど、私たちの生活を一変させてくれるかもしれないという期待があるのも事実だ。

いったい今、ドローンの世界はどれほど進んでいて、今後どのように発展していくのかDrone Fund代表の千葉功太郎氏と大前創希氏に話を伺った。VCでありながら、2人の姿勢はスタートアップ起業家そのもの。経営者にも見習うことは多いはずだ。

2022年までにドローンの商業利用が可能に

インタビューの初めに千葉氏が見せてくれたのは、取材当日(2019年8月21日)の日本経済新聞の一面だ。ドローンの商用ルールが整備される記事が掲載されたのだ。

インタビューの初めに千葉氏が見せてくれたのは、取材当日(2019年8月21日)の日本経済新聞の一面だ。ドローンの商用ルールが整備される記事が掲載されたのだ。

千葉「これは2022年までに、政府が東京の空で無人のドローンを飛ばすための法律を通常国会に通すことを発表した記事です。これはすごいニュースなんですよ」

大前「世界的に見てもすごいニュースです。まだ世界でも、都市部でドローンを飛ばすことを政府が発表した国はありません。イメージするならトランプ大統領がいきなり『ニューヨークの空でドローン飛ばす』っていうくらい、衝撃的な発表なんです」

徐々にどれくらい大きなニュースなのかが理解できてきた。しかし、気になるのは、なぜそれほど先進的な取り組みを日本が行えているかだ。そこにDrone Fundがどのように関係しているのだろうか。

千葉「私たちが行っているのは、単なるドローン領域への投資ではありません。ドローンやエアモビリティという領域は、まだ市場もなければ、法律もなく、社会的な許容もない、スタートアップ的にいえば死の谷しかない世界です。既に市場があって、サービスを作ってユーザーが増えればビジネスになるという単純な話ではありません。
 
ビジネスが生まれてないところに私たちはファンドという形で存在していて、スタートアップたちがファミリーです。それは、『投資はするからあとは頑張って』と言える状況ではありません。政府に一緒に産業を作りましょうと掛け合い、日本を代表する大企業にLPとなって出資してもらってきたのです。まさに国と大企業とスタートアップが融合して、『新しい産業を作る』と旗を立て振り続けてきたからこそ今朝の発表につながったのではないかと考えています。
 
こんなことをしているVCは世界を見ても他にありません。伴走してくれるVCはいても、政府にかけあって法律を作るような動きをしているVCは見たことないですね。私たちが法律作りまで行っている証拠として、Drone Fundにはパートナー(取締役)が4人いて、私たち代表2人の他にCFO、そして最高公共政策責任者、CPPO(Chief Public Policy Officer)を置いていることが挙げられます。4人しか居ないパートナーのひとりに、国の各省庁と話し合い、公共政策を立案する役割を専門で担う役職を置いているのです。アメリカでは既にパブリックポリシーの専門家は決して珍しくなく、時には国と戦い、時には協力しながら公共政策を立案しています。
 
ドローン商用ルールの整備についての発表自体は6月21日の閣議決定で、安部内閣の大臣全員の署名つきで決められたことです。成長戦略の閣議決定では、IT分野に関する様々なことの目標が決められました。ドローン分野に関して発表された目標は次のふたつです。
 
①2022年までにレベル4(有人地帯での目視外飛行)の実施
②2023年までに空飛ぶクルマの商業利用の実施
 
日本の輸送システムとしては陸海空がありますが、発表の中で空が最初に掲載されているのは、空の移動革命を起こす政府の意思を感じますね。
 
ただ面白いのは、日本のメディアは『日本=動きが遅い、リスクを取らない』というイメージをもちがちで、そのイメージに反する政府の動きは、なかなか取り上げてもらえません。この発表に関しても6月に決まったことが、今日(8月21日)記事化されました。2ヶ月遅れであっても、日経新聞の一面に載るのはインパクトが大きいので嬉しいですけどね」

日本は産業を作るのにイケてる国

■千葉 功太郎(ちば こうたろう) Drone Fund創業者 / 代表パートナー 慶應義塾大学SFC特別招聘教授 個人投資家 慶應義塾大学環境情報学部卒業後、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。株式会社サイバード、株式会社ケイ・ラボラトリーを経て、2009年株式会社コロプラに参画、同年12月に取締役副社長に就任。採用や人材育成などの人事領域を管掌し、2012年東証マザーズIPO、2014年東証一部上場後、2016年7月退任。国内外のインターネットやリアルテック業界のエンジェル投資家(スタートアップ60社以上、ベンチャーキャピタル40ファンド以上に個人で投資)でありながら、2017年6月よりDrone Fund 創業者/代表パートナーを務める。 2019年4月より慶應義塾大学SFC招聘教授に就任。最近では、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の顧客第1号として話題に。
千葉 功太郎(ちば こうたろう)
Drone Fund創業者 / 代表パートナー、慶應義塾大学SFC特別招聘教授、個人投資家。
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。株式会社サイバード、株式会社ケイ・ラボラトリーを経て、2009年株式会社コロプラに参画、同年12月に取締役副社長に就任。採用や人材育成などの人事領域を管掌し、2012年東証マザーズIPO、2014年東証一部上場後、2016年7月退任。国内外のインターネットやリアルテック業界のエンジェル投資家(スタートアップ60社以上、ベンチャーキャピタル40ファンド以上に個人で投資)でありながら、2017年6月よりDrone Fund 創業者/代表パートナーを務める。 2019年4月より慶應義塾大学SFC招聘教授に就任。最近では、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の顧客第1号として話題に。

スタートアップの醍醐味である「新しい産業を作る」ことを、ファンドとしてまさに体現している真っ最中のDrone Fund。新しい産業を作るのに、スタートアップ関係者が気をつけるべきことはどのようなことだろうか。

千葉「一番伝えたいのは『日本という国はイケてるから、国とうまくやれ』ということです。みんな日本がイケてないというイメージが好きで、それが定着してしまっているがゆえに、スタートアップをしようとする人たちでさえ『政府に何か協力してもらおうと思ってないよ』と斜に構えている人たちが多いんです。
 
しかし、新しい産業に踏み込めば踏み込むほど、既存の規制を変えたり、何もないところにルールを作って行かなければなりません。そうでなければ、既存の規制とコンフリクトを起こしてしまいます。なぜなら既存の規制を作った時にはいま出てきている産業は想定されていなかったためです。
 
いい例が空飛ぶクルマ(エアモビリティ)です。道路の上を空飛ぶクルマが走っていいかなんて、道路交通法には明記されていません。それは道路交通法を作ったころに、クルマが空を飛ぶなんて想定されていなかったから。そのため、私たちの投資先でホバーバイクを開発しているA.L.I. Technologiesとは、今後どのような法律が必要で、どのように規制がされていく必要があるのか議論を繰り返しています」

今の法律に縛られるのではなく、これからの法律を政府と一緒に作っていくDrone Fund。それはスタートアップの戦略としても重要なことだという。

千葉「これは他の分野のスタートアップやVCにもいえることですが、まだ規制がない分野やこれから法律が作られている分野に飛び込んだ方がいいといえますね。大きな市場がとれる上に強い戦い方ができますから。
 
更に日本という国が素晴らしいのは、IT分野においてかなり先進的でリスクをとった判断をしていることです。経済産業大臣やIT大臣、あとは官房長官や安倍首相もロボットやIT分野に対して、とても前向きに取り組んでくれています。我々が気付いていないだけで、国はIT技術にレバレッジをかけて、日本を世界で戦える国にしようとしているのです。ですので、経営陣や投資陣営がきちっとした公共政策の提言をして、『ここを緩和すれば、もしくはここにルールを作れば日本に新しい市場を作れて、それが世界で戦うための基盤になります』というストーリーを作れれば、既存のレギュレーションを変える姿勢が政府にはあるのです。
 
しかし現状に目を向けると、国が『J-Startup』や『始動』という形でスタートアップを応援しようとしているのに、スタートアップが「国に応援されても……」と斜に構えて噛み合っていないように感じます。そこをDrone Fundは2年前から国と一緒に動いていた。結果が今朝の発表になったのだと考えています」

■大前 創希(おおまえ そうき) 共同創業者 / 代表パートナー ビジネス・ブレークスルー大学/大学院 教授(デジタルマーケティング) (株)クリエイティブホープ代表取締役会長 Dronegrapher® 2002年に(株)クリエイティブホープを創業し戦略面を重視したWeb/ITコンサルティングを展開。マーケティング戦略、ブランディング戦略、データ解析に基づく科学的Web分析などを元に、コンサルタントとして数々の国内外の企業・団体のプロジェクトを成功に導く。2014年よりドローングラファ®として活動。2016年3月ドローンムービーコンテスト2016 準グランプリを受賞。2016年5月(株)ドローン・エモーションに投資家として参画。2017年5月DroneFundアドバイザリーボードに就任。2018年3月〜8月に放送された読売テレビ・ドローン絶景紀行の総合監修を担当。2018年9月よりDroneFund 共同代表パートナーに就任。ビジネス・ブレークスルー大学/大学院 教授(専門はデジタルマーケティング)
大前 創希(おおまえ そうき)
共同創業者 / 代表パートナー、ビジネス・ブレークスルー大学/大学院 教授(デジタルマーケティング)、(株)クリエイティブホープ代表取締役会長、Dronegrapher®。
2002年に(株)クリエイティブホープを創業し戦略面を重視したWeb/ITコンサルティングを展開。マーケティング戦略、ブランディング戦略、データ解析に基づく科学的Web分析などを元に、コンサルタントとして数々の国内外の企業・団体のプロジェクトを成功に導く。2014年よりドローングラファ®として活動。2016年3月ドローンムービーコンテスト2016 準グランプリを受賞。2016年5月(株)ドローン・エモーションに投資家として参画。2017年5月DroneFundアドバイザリーボードに就任。2018年3月〜8月に放送された読売テレビ・ドローン絶景紀行の総合監修を担当。2018年9月よりDroneFund 共同代表パートナーに就任。ビジネス・ブレークスルー大学/大学院 教授(専門はデジタルマーケティング)

大前「今回の発表で斬新だったのは、目標を決めるのに安全性の議論が盛り込まれていないことです。これはどういうことかというと、一旦、安全性を横に置いておいて目標を設定してくれたのです。安全性の話から入ってしまうとそこから動けなくなってしまって、これまでと変わりません。代わりに安全性に関しては、2022年から逆算して安全性を担保するという宿題をもらっています。
 
また、目標設定がなぜ大事かというと、いろんな分野の会社が動きやすさに繋がるからです。目標が設定されることで、ドローン界隈だけでなく、保険や金融など別業界の会社が、チャンスを感じ動いてくれます。特に保険業界は顕著で、これからどんな保険を作れば、ドローン業界を助けられるかという問い合わせが殺到しています。それらの問い合わせの受け皿にもDrone Fundがなっているので、すぐに議論を始められています」

新しい産業の受け皿はVC、スタートアップどちらが担うか?

新しい産業ができれば、既存の産業にもビジネスチャンスが増える。ドローン領域ではドローンファンドがその受け皿となっているが、その役割はVCが行うべきだろうか。もしくはスタートアップがやるべきだろうか。

新しい産業ができれば、既存の産業にもビジネスチャンスが増える。ドローン領域ではDrone Fundがその受け皿となっているが、その役割はVCが行うべきだろうか。もしくはスタートアップがやるべきだろうか。

千葉「受け皿をVCが担うか、スタートアップが担うかは両方があると思っています。私達の取り組みはVCの中では新しいものですが、他の産業でも私達のような取り組みをするVCが増えればいいと思っています。
 
スタートアップが担う場合は、『国は一社だけの意見を聞くのは難しい』ことを留意しなければいけません。ユニバーサルサービスのためには、一社を優遇することはできません。ではどうすればいいかというと、業界団体や社団法人を作ればいいのです。一社のいうことを聞くのは難しくても、業界全体の声であれば、国は耳を傾けてくれます。
 
スタートアップ領域でこういう動きが一番うまくできているのはシェアリングエコノミーですね。彼らはスタートアップの人たちで集まって勉強会をしたり、まめに政府との折衝も行ったりしています。
 
逆にもっとうまくやれたと思うのは、ゲームと仮想通貨です。私もその渦中にいたので自戒も込めてそう思います。以前の私は『国にビジネスの邪魔をされないようになんとかうまくやろう』と思っていました。競合と呼ばれる会社も嫌いだったので、国や競合とはあまり付き合いたくないというつまらない考えを持っていたのです。オンリーワンになるという考えが強く働いて、自分たちだけが勝てばいいと考えていました。
 
その結果、国から注意や勧告を受け、業界全体が冷え込むこともありました。仮想通貨に至っては競合同士が敬遠しすぎて、業界団体を作ったのはいいものの、2つできてまた国に怒られることもありましたね。そのような反省を込めて、もっとうまくやれたと思います」

過去の経験を活かして、ドローン領域では国とうまく付き合っている千葉氏。では、シェアリングエコノミーはどのような点がうまくできている点なのだろうか。

千葉「シェアリングエコノミーがうまいと思うのは、抽象度を一段上げたキーワードで集まっていること。これがもし『空き家ビジネス』のような粒度のキーワードだったら、狭い領域の競合同士が集まってしまって、業界団体自体が敬遠されていたかもしれません。
 
そうではなく、抽象度を上げ、観光や空き家の分野で課題があって、今こんな法律とコンフリクトしている、という情報を整理しているのです。すると国も動きやすいんですよ。国は全体のメリットを考えていますし、国力を上げるために動いています。それを理解して、国との付き合いをしなければなりません。
 
どうしてもスタートアップもVCもオンリーワンを目指してしまいます。確かにそれでも勝てるかもしれませんが、どこかのフェーズ、特に『産業』と呼ばれるまでの規模になり、新しいことをやるほど、既存の法律とコンフリクトを起こしてしまいます。もっと国のトーン&マナーに合わせて公共政策を提言していく必要があると思いますね」

規制があるからこそ、具体的なビジネスに繋がる

大前「ドローン領域に詳しくない方からは、『ドローンは規制だらけだけど、ビジネスになるんですか』とよく言われます。最近も国土交通省が新たなレギュレーションを出して、飛行プランの提出を求めてきました。こういったことも、外からみえると規制が強くビジネスがやりづらく見えるのだと思います。 しかし、それは全く逆。レギュレーションが明確で具体的な方がビジネスはしやすいのです。むしろ、レギュレーションが曖昧だと、政府の意向でいつNGになってしまうか分からないため投資もしづらいもの。レギュレーションを明確にして、問題が起きてもすぐに解決できるようにすることで、投資マネーも集まりやすくなります」

大前「ドローン領域に詳しくない方からは、『ドローンは規制だらけだけど、ビジネスになるんですか』とよくいわれます。最近も国土交通省が新たなレギュレーションを出して、飛行プランの提出を求めてきました。こういったことも、外からみると規制が強くビジネスがやりづらくみえるのだと思います。
 
しかし、それは全く逆。レギュレーションが明確で具体的な方がビジネスはしやすいのです。むしろ、レギュレーションが曖昧だと、政府の意向でいつNGになってしまうか分からないため投資もしづらいもの。レギュレーションを明確にして、問題が起きてもすぐに解決できるようにすることで、投資マネーも集まりやすくなります」

千葉「私も大前も元々ネット業界の人間です。ネット業界の人間はオープンソースで縛りのないネットの世界に魅力を感じるものです。しかし、社会は真逆ですよね。政府にしたって大企業にしたって金融機関にしたって、法律がちゃんと定まっているところに投資をしたいと思っています。政府の気の迷いで消えるような産業に投資するのは怖いものです。その最たるものが仮想通貨で、いつ政府によって取り潰しがあるのか不安なので、みんな怖がっているのです。
 
例えば海外でビジネスをやる時も、一番のリスクは国から規制が入ることです。レギュレーションが明確になることは、国から自由にビジネスをする免罪符をもらえることとイコールです」

大前「車の自動運転などもそうですね。国がレギュレーションを作るには、その業界で最先端を走ってる企業や団体と一緒に、どんな危険性があるのか共有しなければなりません。課題がないところにレギュレーションは作れないのです。業界としてどんな課題があるのか、どんな苦労があるのか国と共有することで、お互いに動きやすくなっていきます」

千葉「それをうまくやっているのが楽天ですね。数ヶ月前に、小さな宅配ロボットが公道を走る実証実験が行われました。それは楽天がうまく公共政策として立ち回ったおかげだと思います。少し前でいえばオンラインでは売ることができなかった薬を薬事法を改正し、売れるようにしたのもそうです。
 
スタートアップ全体を見渡すと、ビジネスを考えた後に、法規制があるからと諦めてるケースって多いんじゃないでしょうか。しかし、逆に今は法律でNGなことを研究しているスタートアップもいます。例えば私たちが投資しているスタートアップに、ドローンの航空管制システムを作っている企業があります。航空管制システムは今後ドローンのレベル4での運行が可能になった時に必要になってくるシステムです。しかしそれは、レベル4が許容されなければビジネスになりません。
 
そんなことに本気になっている起業家もすごいですが、それを本気で支援している私達もおかしいですよね(笑)。ただ、2022年にレベル4が認められれば、これほど成長できる市場はありません。その時は既に5年も研究していることになるので、他の会社では太刀打ちできないはずです。スタートアップは隙間産業を狙うケースが多いですが、これくらいエッジのきいてるビジネスの方が面白いですよね」

スタートアップはまずは国内での成功を目指せ

事業を成長させるために、国と組んでいく重要性を説く千葉氏。しかし、最近ではスタートアップは、はじめから海外を視野にいれなければいけないという風潮も強い。その点に関してはどのように考えているのだろうか。

事業を成長させるために、国と組んでいく重要性を説く千葉氏。しかし、最近ではスタートアップは、はじめから海外を視野にいれなければいけないという風潮も強い。その点に関してはどのように考えているのだろうか。

千葉「『千葉道場』でも世界を見ろとはよくいっていますが、一方で日本はとてもいい市場だとも思っています。国内だけでも上場できるほど大きな市場がある上に、日本語という固有の言語により黒船が入ってきづらい環境です。さらに東京証券取引所があって、マザーズがあって、世界を見てもこんなIPOがしやすい国はありません。
 
これがロンドンやニューヨークだとそうはいきません。それこそユニコーンにでもならなければ上場は難しいですが、日本では数百億円の企業価値でも上場している企業がたくさんありますよね。日本にしっかり根ざして、レギュレーションを作って、まずは国内市場で上場、もしくはユニコーンを目指すのも日本の起業家にとってはいいと思います。
 
私は起業家はシリアルアントレプレナーになるべきだと思っているので、一社目でドメスティックな会社で成功して、2社目以降でグローバルで戦えばといいと思っています。これがシンガポールのように国土も市場も小さな国だと、始めからグローバルで戦わなければなりません。それはメリットもありますが、最初から厳しい戦いをしなければいけないということでもあります」

日本という類まれな環境を活かして、世界で戦う準備をするというのが千葉氏の勧める戦略のようだ。ではいったい、どのような市場を狙えばいいのだろうか。

千葉「既に多くの方がいっていますが、不動産業界はレギュレーションでがんじ絡めで、既存の企業が強く、大きい市場です。テックをまだまだ活かせる余地がありますし、実際にここ数年で不動産スタートアップは増えています。しかし、それでもスタートアップがとっているシェアは業界全体からみれば僅かなものです。
 
20年前でいえばOTA(オンライントラベルエージェント)もそうですね。楽天やじゃらん、一休のようなサービスです。今では大きな産業になっていますが、それでもスタートアップ全てを合わせても旅行市場全体の5~10%しかシェアをとれていない時期が長く続きました。それでも市場全体が大きいので、どのサービスも大きく化けました。
 
巨大産業に踏み込むことは、スタートアップにとってうまみがあるのです。例えば私が投資した旅行サービスの『Relux(リラックス)』は、スタートアップとしてはかなりの規模でKDDIにM&Aされました。しかし、OTAの中で1位をとっていたわけではありません。巨大な産業に参入するということは、シェアがとれなくてもそのように評価してもらえる可能性があります。
 
スタートアップはここであえて原点回帰をする必要があると思います。規制が強くて、巨大な市場を持つアナログな産業はいっぱいあると思うんです。不動産以外でもお金を貸すレンディングもそうです。最近はその領域のスタートアップが増えていますが、それでもスタートアップ全てを合わせて業界の1%しか市場をとれていません。
 
私個人の千葉道場ファミリーにもウェルスナビという会社がありますが、日本の個人の現金資産全体の0.00何%しかとれていないのです。それでも預かり資産は1,800億円を超えているからすごいものです。もし全体の1%をとれるだけでも10兆円を超える規模になりますからね。それが巨大市場にテックで挑む醍醐味ですし、そのような起業家がもっと増えればいいなと思います」

不動産、旅行、レンディングの例が上がったが、ドローン領域はどうなのだろうか。

不動産、旅行、レンディングの例が上がったが、ドローン領域はどうなのだろうか。

千葉「私たちが挑むドローンだってそうです。可能性はとても大きく、私たちはインターネットと同じ匂いを感じています。つまりインフラの話です。インターネットは出始めの93年頃は、HPを作るサービスが流行っていました。ドメインをとったり、サーバーを構築するビジネスですね。
 
しかし、その時代の何人かはインターネットの本質に気付いて、インターネットがインフラになることを予想していたのです。ガスや水道のように普するもので、その上にサービスがどんどん作られていくと思ったわけですね。
 
90年代にそれに気付いた人々が、インターネットで起業しました。もしかしたら今ごろFacebookやGoogleのような会社が日本で作られた可能性もあるわけですよね。なぜなら日本にはmixiがあって、和製検索エンジンだってあったのですから。ちょっとサービスが日本的すぎて、世界で戦えなかっただけの差です。
 
そしてドローンもインターネットと同様、これから社会のインフラになると思っています。単にラジコンが飛んでいるという話ではなく、自律運転のドローンがこれから数百万台単位で日本の空を飛び回るのです。それはインターネットのパケットと同じようなものだと思っています。インターネットはパケットを使ってバラバラの情報を送り、再び組み立てるという仕組みです。ドローンはまさに物理的なパケットで、ドローンに荷物を乗せて送る際も、荷物が大きければいくつかのパーツにわけて複数のドローンで運べるようになります。
 
もうひとつ注目したいのがリモートセンシングです。上空から画像や映像を撮ることで不審人物を探せるようにもなります。これはスマホやスパコンに羽が生えて飛んでいるようなものですね。
 
そして、ドローンを使えば空を有効活用することができるようになります。今は航空法で飛行機は250メートル以上の上空を飛ばなければいけません。つまり地面から上空250メールとまでは、鳥と電波ぐらいしか飛んでいないのです。都市機能のことを考えると、これまではビルを高く作るか地下鉄を掘るしかありませんでしたが、ドローンによって空の新しい活用ができるようになります。
 
今は航空法で飛行機は1キロも距離を置いて飛ばなければなりません。自律的に動くドローンなら数メートル間隔で飛ばすことができるので、空の空間密度を上げることができます。全て人が管理しなければならない飛行機はアナログの世界で、自律運転のドローンはデジタルの世界への転換のようなものです。これは3Gによって通信革命が起きたことと同じで、3G以前は送れる情報量が少なかったのが、3Gによってパケットの密度が上がって大量の情報が送れるようになり、一気にサービスや生活が向上しましたよね。それほど革命的なことなのです」

ドローンはインターネットようなインフラへ

大前「ドローンがインフラ化することは、日本が抱える様々な課題の解決にも合致しています。日本は世界的にみて課題先進国ですが、それに対して人口は減っていくので、人じゃない何かが課題を解決しなければなりません。外国人労働者という選択肢もありますが、日本は文化的に外国人を受け入れる素地がなく、なかなか難しい状況です。そこを技術で対応していかなければならないのです。 例えば、道路や橋などインフラの老朽化も日本の抱える課題の一つです。これまでは橋などを検査するのに打音検査をすることが法律で定められていました。しかし、ドローンを使ってセンサーで検査することを認めるように法律を変える方向性もまとまって来ました。これから数十年で、老朽化によって使えなくなる橋が大量に出てきますが、今の労働力で全ての橋を人の目視と打音検査していては間に合いません。そこでドローンを使って検査することが国内で広がっているのです」

大前「ドローンがインフラ化することは、日本が抱える様々な課題の解決にも合致しています。日本は世界的にみて課題先進国ですが、それに対して人口は減っていくので、人じゃない何かが課題を解決しなければなりません。外国人労働者という選択肢もありますが、日本は文化的に外国人を受け入れる素地がなく、なかなか難しい状況です。そこを技術で対応していかなければならないのです。
 
例えば、道路や橋などインフラの老朽化も日本の抱える課題のひとつです。これまでは橋などを検査するのに打音検査をすることが法律で定められていました。しかし、ドローンを使ってセンサーで検査することを認めるように法律を変える方向性もまとまって来ました。これから数十年で、老朽化によって使えなくなる橋が大量に出てきますが、今の労働力で全ての橋を人の目視と打音検査していては間に合いません。そこでドローンを使って検査することが国内で広がっているのです」

千葉「数年前からAIが人の仕事を奪うことの是非が議論に上がりますが、日本だけは適用外です。日本だけはAIやロボットで人の仕事を代替してもらうほどいいのです。大前も話していたように、海外では移民という選択肢もありますが、日本は文化が特殊すぎて移民政策が当てはまりません。
 
ここ10年くらいは、政府も移民政策に対して煮詰まらない議論をしてきましたが、ここ2年でやっとテクノロジーで解決する道に割り切れたと思います。それはスタートアップにとって大きなチャンスです。課題先進国である日本に対して、真正面から解決できると提言できるのであれば、レギュレーションも変えてくれると言っているのが今の日本なのです」

大前「その中で私たちVCに求められているのが情報発信です。私も千葉も自分たちのことをキャピタリストだとは正直あまり思っていませんが、ベンチャー企業経営的なVC運営手法として、いかに業界を活性化させる情報発信をし続けるか? ということを、とても重要視しています。
 
私達は奇しくもこの活動を始めたときから情報発信を繰り返して来ましたが、それはVCとしてというよりは、ドローン産業を作る起業家のような立ち位置によるものです。これからもドローン業界の情報を発信して行かなければいけません」

Drone Fundは先日2号ファンドを立ち上げたが、そのLPとして名を連ねているのは日本の各業界を代表する大企業たちだ。金融業界や運送業界はもちろん、エンタメ業界からも注目を集めている。それこそ、Drone Fundがまめに業界の情報を発信してきた賜物だといってもいいだろう。

約20年前にインターネットが世界に普及したことと同じことが起きるのであれば、これからドローン業界にさまざまなサービス、職業が現れるのだろう。インターネットの時も市場が出来上がる前に参入した人たちが、今の時代を作っていることを考えれば、ドローン業界に参入するタイミングは今なのかもしれない。

執筆:鈴木光平
取材・編集:BrightLogg,inc.
撮影:戸谷信博

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