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「誰一人取り残さないデジタル社会」の実現。平井卓也大臣に聞くデジタル庁のビジョン

デジタル化の潮流は止められない。2020年にはDX化が注目され、SaaSビジネスがシェアを伸ばした。今後、AIやIoTなど先端技術もますます普及していくだろう。 最近ではスマートシティ構想が地方自治体でも取り上げられている。社会全体がデジタル化に向かうなかで、いよいよ日本でもデジタル庁の発足が発表された。 同庁は総理大臣直轄の組織で、各省庁の全システムを統括する役割を担う。デジタル庁はどのようなビジョンを掲げ、いかに実現しようとしているのだろうか? 本記事では、平井卓也デジタル改革担当相から、デジタル庁が目指す未来や求める人材について伺った。 各省庁のデジタル権限を集束し、あらゆる人がアクセスできるシステムをつくる

デジタル化の潮流は止められない。2020年にはDX化が注目され、SaaSビジネスがシェアを伸ばした。今後、AIやIoTなど先端技術もますます普及していくだろう。

最近ではスマートシティ構想が地方自治体でも取り上げられている。社会全体がデジタル化に向かうなかで、いよいよ日本でもデジタル庁の発足が発表された。

同庁は総理大臣直轄の組織で、各省庁の全システムを統括する役割を担う。デジタル庁はどのようなビジョンを掲げ、いかに実現しようとしているのだろうか?本記事では、平井卓也デジタル改革担当相(以下、平井大臣)から、デジタル庁が目指す未来や求める人材について伺った。

各省庁のデジタル権限を集束し、あらゆる人がアクセスできるシステムをつくる

最初の質問は、デジタル庁の目指す未来だ。平井大臣はスローガンに「No one left behind(誰一人取り残さない)」を掲げ、誰もがアクセスしやすいシステムを目指すという。 「高齢者や障がいを持っている方にも扱えるUI・UXを目指し、誰も取り残さないこと。徹底的に、あらゆる人がアクセスできる省庁システムをつくる。これが最も重視するビジョンです。 それでもシステムにアクセスできない人は出てしまうでしょう。カバーできない人々を一人でも減らしたい。そのため、デジタルだけに注力せず、アナログ空間でもサポートを行っていきます」 続けて、平井大臣は「デジタル庁の行動基準は、国民のみなさんのメリットを最大化すること」と話す。この方針を実現するため、具体的にはどのような施策を行なっていくのだろうか? 「発足にあたり、押印の廃止など約50本の規制改革を行ないます。併せて、すべての省庁からデジタル関連の執行権限を集める予定です。権限は予算を通した間接的なものですが、デジタル庁は前例のない『各省庁への権限を持つ組織』になる。私も横断的に意見を述べられる立場になりますし、今までの縦割り行政を打ち破っていく省庁になるでしょう。デジタル庁が進める施策が成長戦略の柱になっていくと思います」 他国の反省点を参考に、“デジタル後発国”のメリットを活かす

最初の質問は、デジタル庁の目指す未来だ。平井大臣はスローガンに「No one left behind(誰一人取り残さない)」を掲げ、誰もがアクセスしやすいシステムを目指すという。

平井大臣「高齢者や障がいを持っている方にも扱えるUI・UXを目指し、誰も取り残さないこと。徹底的に、あらゆる人がアクセスできる省庁システムをつくる。これが最も重視するビジョンです。

それでもシステムにアクセスできない人は出てしまうでしょう。カバーできない人々を一人でも減らしたい。そのため、デジタルだけに注力せず、アナログ空間でもサポートを行っていきます」

続けて、平井大臣は「デジタル庁の行動基準は、国民のみなさんのメリットを最大化すること」と話す。この方針を実現するため、具体的にはどのような施策を行なっていくのだろうか?

平井大臣「発足にあたり、押印の廃止など約50本の規制改革を行ないます。併せて、すべての省庁からデジタル関連の執行権限を集める予定です。権限は予算を通した間接的なものですが、デジタル庁は前例のない『各省庁への権限を持つ組織』になる。私も横断的に意見を述べられる立場になりますし、今までの縦割り行政を打ち破っていく省庁になるでしょう。デジタル庁が進める施策が成長戦略の柱になっていくと思います」

他国の反省点を参考に、“デジタル後発国”のメリットを活かす

霞ヶ関のなかでも、デジタル庁は革新的な組織になりそうだ。一方で、政府のデジタル化は他国に比べて遅れている、と言われる。この差を、平井大臣はどのように詰めようとしているのだろうか。 「たしかに、他国の政府に比べて日本のデジタル化は遅れています。しかし、我々は先行事例からリスクや注意点を学べますから、逆にアドバンテージだと捉えているんです。 たとえば、アメリカや中国のデジタル施策は格差を生んでいます。経済を牽引する一部の企業は動きやすくなりましたが、一方で置き去りにされている方が増えている。日本では前例を参考に、もっとインクルーシブに、多様性を尊重して施策を進めたい。構想の段階から、高齢者や障がい者への配慮をシステムに組み込んでいきます」 平井大臣は『誰一人取り残さない』システムを強調する。実現にあたり、今までの反省点を伺うこともできた。 「今までの政府システムは、部分的にデジタル化が進行してしまいました。政府の担当者と国民の皆さんをエンドツーエンドでつなぐ、新しいシステムを作りきれていなかったと思います。デジタル庁発足にあたってはこの点を大いに反省していきたい。 幸い、日本のインターネットインフラは他国と比べても高い基準にあります。光ファイバー網や4G・LTEなどはアメリカや中国と比べてもクオリティ、スピードやカバーエリアは負けていません。アセットを活かし、デジタル庁発足後は速やかにシステムを改修していきたいと考えています」 デジタル庁の発足は2021年9月に予定されている。残る期間は1年未満で、迅速な展開が必要だ。スピード感を保つために、平井大臣はスタートアップの組織運営を参考にしているという。 「デジタル庁はスタートアップのように、小さく産んで大きく育てる組織にしていきたい。想定外の事態も起こるでしょうから、柔軟なガバナンスを掲げ、アジャイルな組織を目指します。また、日本デジタル社会の旗振り役として、目指す方向性は明確に法律で打ち出します」 さらに、プロセスを透明化するため、ロードマップも用意しているそうだ。 「全てのプロジェクトは、いつまでに何をやるかを公言したうえで、プロセスを公開する予定です。 プロジェクトには多くの人から意見を募りたい。そのために、アイデアボックスを設け、たくさんの要望をいただいています。多数のご意見をいただいたものは、間違いなく実行する予定です。さらにデジタル庁発足後もアイデアボックスは設けていきたいと思っています。 とはいえ、現実的にはできることから優先順位をつけて進める形になるでしょう。格差を気にしない国ではスピード感を持って進められますが、日本では誰も取り残さない形を目指したい。国民が起点となり、メリットが最大になるよう優先順位をつけて実装していきます」 重職への民間登用を進め、「徹底的に使い勝手がいい」システムをつくる

霞ヶ関のなかでも、デジタル庁は革新的な組織になりそうだ。一方で、政府のデジタル化は他国に比べて遅れている、と言われる。この差を、平井大臣はどのように詰めようとしているのだろうか。

平井大臣「たしかに、他国の政府に比べて日本のデジタル化は遅れています。しかし、我々は先行事例からリスクや注意点を学べますから、逆にアドバンテージだと捉えているんです。

たとえば、アメリカや中国のデジタル施策は格差を生んでいます。経済を牽引する一部の企業は動きやすくなりましたが、一方で置き去りにされている方が増えている。日本では前例を参考に、もっとインクルーシブに、多様性を尊重して施策を進めたい。構想の段階から、高齢者や障がい者への配慮をシステムに組み込んでいきます」

平井大臣は『誰一人取り残さない』システムを強調する。実現にあたり、今までの反省点を伺うこともできた。

平井大臣「今までの政府システムは、部分的にデジタル化が進行してしまいました。政府の担当者と国民の皆さんをエンドツーエンドでつなぐ、新しいシステムを作りきれていなかったと思います。デジタル庁発足にあたってはこの点を大いに反省していきたい。

幸い、日本のインターネットインフラは他国と比べても高い基準にあります。光ファイバー網や4G・LTEなどはアメリカや中国と比べてもクオリティ、スピードやカバーエリアは負けていません。アセットを活かし、デジタル庁発足後は速やかにシステムを改修していきたいと考えています」

デジタル庁の発足は20219月に予定されている。残る期間は1年未満で、迅速な展開が必要だ。スピード感を保つために、平井大臣はスタートアップの組織運営を参考にしているという。

平井大臣「デジタル庁はスタートアップのように、小さく産んで大きく育てる組織にしていきたい。想定外の事態も起こるでしょうから、柔軟なガバナンスを掲げ、アジャイルな組織を目指します。また、日本デジタル社会の旗振り役として、目指す方向性は明確に法律で打ち出します」

さらに、プロセスを透明化するため、ロードマップも用意しているそうだ。

平井大臣「全てのプロジェクトは、いつまでに何をやるかを公言したうえで、プロセスを公開する予定です。

プロジェクトには多くの人から意見を募りたい。そのために、アイデアボックスを設け、たくさんの要望をいただいています。多数のご意見をいただいたものは、間違いなく実行する予定です。さらにデジタル庁発足後もアイデアボックスは設けていきたいと思っています。

とはいえ、現実的にはできることから優先順位をつけて進める形になるでしょう。格差を気にしない国ではスピード感を持って進められますが、日本では誰も取り残さない形を目指したい。国民が起点となり、メリットが最大になるよう優先順位をつけて実装していきます」

重職への民間登用を進め、「徹底的に使い勝手がいい」システムをつくる

デジタル庁では、規制改革やデジタル関係の権限集束など、新しい取り組みが行なわれる。民間登用が行われることも報道され、門戸が開かれることが話題になった。平井大臣はなぜ民間登用を進めるのだろうか。 「すでに省庁にデジタルの専門家はいますが、我々だけではできないことも多い。そのため、非常勤職員としてエンジニアなどのIT人材を募集することにしました。置かれるポストはチーフテクニカルオフィサー、チーフデータオフィサー、チーフセキュリティオフィサーなど。状況に応じた柔軟な采配ができるようにします。いずれはスタートアップ企業の方々にもご協力いただけるよう、委託の機会も設けたいですね」 今回募集する民間人材はリモートワークや兼業も可能。迅速なデジタル化を進めるため、今後は、局長・審議官・課長級の重職も民間から募集する。また、服装規定も柔軟だそうだ。 「デジタル庁は比較的自由な制度にします。兼業やリモートワークも許可します。服装も自由で、必ずしもスーツである必要はなく、TPOに合わせてTシャツの着用も可能です。また、社会のグローバル化に対応するため、プロジェクトベースでは外国籍の方に参加していただいても問題ありません。 デジタル庁は常勤・非常勤を合わせて約500名から発足します。しかし、この人数では、年間約8000億円の予算規模のある日本のシステム全体を最適化できるとは考えていません。いずれ最適なサイズも分かってくるでしょう。1000名なのか、2000名なのか、必要に応じて人員を拡充していく予定です」 現場ではどのような人材を求めているだろうか。国のシステムを担当する優秀な人材が求められそうだが、平井大臣は「トップエンジニアだけではない」と話す。 「デジタル庁が実現したいのは、『誰一人取り残さない』システムです。だから、システム構築力だけでなく、アクセシビリティが求められます。必要な技術は、UI・UX、セキュリティ、マルチクラウドへの最適化など。それぞれ異なる領域ですが、幅広く全てを実現していきたい。今後、自治体でもアプリケーションを作りたいですし、SaaS的なソフトウェアが求められるケースもあるでしょう。日本社会全体のデジタル化を進める上で重要な事柄ですので、セキュリティを担保しながら、徹底的に使い勝手がいいものを開発できる人材を求めています」 最後に、発足にあたり意気込みを伺った。 「霞ヶ関において、新しい省庁の発足は数少ない事例です。滅多にないチャンスですので、今までとは違う組織文化を作りたい。 2020年にはコロナ禍が起き、世の中は大きく変わっていきました。おそらく、これから成長する企業のみなさんがアフターコロナのプレイヤーになっていくでしょうし、デジタル庁は新しいプレイヤーにもメリットを提供したい。何十年かに一度起こる大きなゲームチェンジの時を、国民の皆さんと共に乗り越えられたらと考えています」

デジタル庁では、規制改革やデジタル関係の権限集束など、新しい取り組みが行なわれる。民間登用が行われることも報道され、門戸が開かれることが話題になった。平井大臣はなぜ民間登用を進めるのだろうか。

平井大臣「すでに省庁にデジタルの専門家はいますが、我々だけではできないことも多い。そのため、非常勤職員としてエンジニアなどのIT人材を募集することにしました。置かれるポストはチーフテクニカルオフィサー、チーフデータオフィサー、チーフセキュリティオフィサーなど。状況に応じた柔軟な采配ができるようにします。いずれはスタートアップ企業の方々にもご協力いただけるよう、委託の機会も設けたいですね」

今回募集する民間人材はリモートワークや兼業も可能。迅速なデジタル化を進めるため、今後は、局長・審議官・課長級の重職も民間から募集する。また、服装規定も柔軟だそうだ。

平井大臣「デジタル庁は比較的自由な制度にします。兼業やリモートワークも許可します。服装も自由で、必ずしもスーツである必要はなく、TPOに合わせてTシャツの着用も可能です。また、社会のグローバル化に対応するため、プロジェクトベースでは外国籍の方に参加していただいても問題ありません。

デジタル庁は常勤・非常勤を合わせて約500名から発足します。しかし、この人数では、年間約8,000億円の予算規模のある日本のシステム全体を最適化できるとは考えていません。いずれ最適なサイズも分かってくるでしょう。1,000名なのか、2,000名なのか、必要に応じて人員を拡充していく予定です」

現場ではどのような人材を求めているだろうか。国のシステムを担当する優秀な人材が求められそうだが、平井大臣は「トップエンジニアだけではない」と話す。

平井大臣「デジタル庁が実現したいのは、『誰一人取り残さない』システムです。だから、システム構築力だけでなく、アクセシビリティが求められます。必要な技術は、UIUX、セキュリティ、マルチクラウドへの最適化など。それぞれ異なる領域ですが、幅広く全てを実現していきたい。今後、自治体でもアプリケーションを作りたいですし、SaaS的なソフトウェアが求められるケースもあるでしょう。日本社会全体のデジタル化を進める上で重要な事柄ですので、セキュリティを担保しながら、徹底的に使い勝手がいいものを開発できる人材を求めています」

最後に、発足にあたり意気込みを伺った。

平井大臣「霞ヶ関において、新しい省庁の発足は数少ない事例です。滅多にないチャンスですので、今までとは違う組織文化を作りたい。

2020年にはコロナ禍が起き、世の中は大きく変わっていきました。おそらく、これから成長する企業のみなさんがアフターコロナのプレイヤーになっていくでしょうし、デジタル庁は新しいプレイヤーにもメリットを提供したい。何十年かに一度起こる大きなゲームチェンジの時を、国民の皆さんと共に乗り越えられたらと考えています」

執筆:鈴木 雅矩
取材・編集:BrightLogg,inc.

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