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決めた道を正解にする覚悟はあるか? ライドシェアに注目したミレニアル世代の起業家の話

決めた道を正解にする覚悟はあるか? ライドシェアに注目したミレニアル世代の起業家の話

「決めた道を正解にする覚悟はあるか?」

モビリティプラットフォーム「CREW」を提供する株式会社Azit(以下、Azit)・CEOの吉兼氏はそう問いかける。

大学卒業後、企業に勤めることなく起業家の道を選んだ。一度は運営中のアプリが配信停止の事態に追い込まれて苦しい時期も経験した。

それでもなお、仲間たちと真摯にプロダクトを磨き続けたからこそ、誰も実現できていない世界をつくり出せる可能性がある。

直近(2018年9月3日発表)では、総額約10億円の資金調達にも成功している。

今回は、吉兼氏が抱いたAzitへの、「CREW」への想いを、伺っていく。

配信停止になったアプリと、困難を乗り越える組織体制

■吉兼 周優(よしかね・ひろまさ)
株式会社Azit CEO
1993年埼玉県生まれ。慶應義塾大学理工学部管理工学科卒。
2013年11月に株式会社Azitを創業。その後は同社にて、「“Be natural anytime”―自然体でいられる日々を」というミッションの元、CEOとしてモビリティ領域での事業を推進する。

「CREW」は、スマートフォンで気軽にライドシェアの依頼ができるサービスだ。アプリから、CREWパートナー(サービス公認のドライバー)を呼んで相乗りができる。

ユーザーからの評判も良く、サービスの動向は順調に見える。ところが、起業してから一番大変だったことはなにかと問うと、少し悩んだあと「アプリが突然ストアから削除されたことですね」と答える。

ライドシェアは、俗にいう「白タク」との区別に関する話題でたびたび物議をかもす。 「CREW」は法的な手続きをとってリリースしたサービスにも関わらず、あるとき突然アプリを掲載していたApp Storeから削除されていた。

ライドシェアは、俗にいう「白タク」との区別に関する話題でたびたび物議をかもす。
「CREW」は法的な手続きをとってリリースしたサービスにも関わらず、あるとき突然アプリを掲載していたApp Storeから削除されていた。

吉兼 「当時、ユーザーの8割がiPhoneユーザーだったので、すごく焦りましたね。Apple本社に連絡しても『どうしようもありません』と言われてしまって。
出資してくれていた投資家の方々にも説明責任を果たせなくて、すごくつらい時期でした。弁護士と書類を集めてAppleに法的見解に関して丁寧に説明したことで、ある日突然復旧していましたけれどね」

サービスの継続自体が危ぶまれる事態だ。通常であれば焦ったり、気が気でなくなったりと、冷静さを保てなくなってもおかしくない。しかし、吉兼氏の考えは少し異なった。

吉兼 「やれることをやろうってことと、社内を変な空気感にしないことだけは意識していました。そんなこともあるよね、ダメだったらそのときに考えようって。
だって、どこかで決めた道を正解にしなければ、自分たちのサービスを信じて走り続けることなんてできないじゃないですか。だから、そのときどきで常に最善の打ち手を打ち、だめならそれまでの覚悟で向き合っていましたね」

サービスをつくると高校生にすら負けると知った

振り返ると、Azitの創業は2013年。吉兼氏が大学3年生の頃だ。ところが、現在のチームとして動いた最初の経験は大学1年生の頃まで遡る。きっかけは、大学の友人に誘われて出場したビジネスコンテストだった。

振り返ると、Azitの創業は2013年。吉兼氏が大学3年生の頃だ。ところが、現在のチームとして動いた最初の経験は大学1年生の頃まで遡る。きっかけは、大学の友人に誘われて出場したビジネスコンテストだった。

吉兼 「もともと、mixiやSkypeでコミュニケーションを取ることが好きだったので、ビジネスコンテストの話を受けたときにおもしろそうだなって。まあ、正直なところは100万円の賞金がとれたらバイトしなくて済むことに惹かれたんですけれどね(笑)」

安易な気持ちで出場したビジネスコンテストだったが、残念ながら受賞を逃す。そのとき、吉兼氏は強い衝撃を受けたという。優勝したのが、たったひとりでアプリをつくっていた高校生だったからだ。

吉兼 「出場していた参加者のなかで、唯一プロダクトにまで落とし込んだものをつくっていた人がその高校生でした。自分は高校生にも負けるのか、とすごく驚きましたね」

その後、次年度のビジネスコンテストに合わせて対策を立て、toCのプロダクトの開発を行なった。結果は優勝。シリコンバレーへの渡航の権利を獲得した。

吉兼 「ほかのチームに比べて、僕らは1年間みっちりビジネスコンテストに向けて準備していましたから。とはいえ、ほかにすることもないから、くらいの気持ちで取り組んでいましたけれどね」

ビジネスコンテストでの優勝が、吉兼氏の人生を大きく左右することになる。

就職した先の未来に、Azit以上のワクワク感はないと思った

シリコンバレーへの渡航は、吉兼氏にとっては大きな衝撃だった。ビジネスコンテストで優勝するまでは「なんとなくアルバイトをするよりは楽しいから」と続けていた活動も、シリコンバレーで見たリアルなスタートアップの姿によって、強い興味に変わっていたという。

シリコンバレーへの渡航は、吉兼氏にとっては大きな衝撃だった。ビジネスコンテストで優勝するまでは「なんとなくアルバイトをするよりは楽しいから」と続けていた活動も、シリコンバレーで見たリアルなスタートアップの姿によって、強い興味に変わっていたという。

吉兼 「シリコンバレーに行って一番刺激を受けたのは、スタートアップに本気で取り組む優秀な大人たちの姿でした。僕がシリコンバレーに渡ったときは、Evernote、Dropbox、Uberなど、現在の名だたるスタートアップが街の一角にひしめきあっているタイミングでしたから」

帰国後、さっそく受けた刺激をもとにプロダクトをつくろうと思うも、エンジニアリングもデザインも知識が足りないと感じた吉兼氏は、まず勉強するところからスタートした。Co-Founderの十亀にエンジニアリングを任せ、自分はサービス設計やデザインをゼロから学んだ。

吉兼 「勉強した知識を活かして、アプリやサービスづくりに奔走していました。ビジネスコンテストで評価されても、市場があるかどうかはまた別物なんですよ。だからスタートアップとして収益をあげるのは正直難しくて……」

「そこで、一旦全員就職活動をする決断をしました」と、続けた。

当時のAzitのメンバーは8人。一度全員が就職活動に踏み切り、半数は実際に就職。吉兼氏を含む残り4人で、Azitを継続することに。

吉兼 「正直、就職するかどうか悩みました。しかし、Azitのメンバーとなにかをつくることが楽しくて、一生懸命になっている瞬間がうれしかったんですよね。事業もなにも決まっていないけれど、このメンバーでなにかやりたいと思って再スタートを切ったのが2014年末のことでした」

ちょうど同じ頃、とあるスタートアップ・プログラムの一貫で出会った佐俣アンリ氏からの資金調達を行なった。小さくはまとまらず、けれどtoCサービスをつくりたいと思ってのことだった。

「呼ばれたら、僕がすぐに迎えに行く」CREWのはじまり

エンドユーザーのためになるサービスづくりを目指し、Azitがこれまでに取り組んだ事業は多岐に渡る。写真のストレージサービスやアパレルEC、音楽や教育分野のサービスなども構築した。

エンドユーザーのためになるサービスづくりを目指し、Azitがこれまでに取り組んだ事業は多岐に渡る。写真のストレージサービスやアパレルEC、音楽や教育分野のサービスなども構築した。

リリースしたサービスは大きな花は咲かなかったものの、大きい市場で戦うことだけは決めていたと吉兼氏は語る。

吉兼 「スタートアップをたくさん見ていてわかったんです。日々、こんなにもビジネスのことばかりを考えている経験豊富な人たちがたくさんいるのに、社会人経験のない僕らがビジネススキルで勝てる余地なんてほとんどないなと。それなら、彼らが取り組まない領域に飛び込もうと思いました」

たとえばピボットすることになっても、ゼロからのスタートにはならないように市場の大きな分野で戦うことは決めていた。

そのうえで、ビジネスプランを100個ほど考えて、Azitに出資してくれていた佐俣アンリ氏に意見を聞いたところ、モビリティ領域の選択肢が浮き上がった。

吉兼 「モビリティのなかでも配車の選択肢はすぐに思いつきました。それに、市場や自分たちのスキルを考えても勝ち筋があると思えたんです。重視したのは、僕らがやる意味があることと、ビジネススキルではなくネットワーク効果(*1)に成功が左右されることです。
まずは試験的に小さなサイクルで仕組みを回してみることにしました」

省コストで試験するために、吉兼氏は自分の足のみで「CREW」のサービスモデルを動かした。Facebookで広告を配信し、LPに「車を呼ぶ」ボタンのみを設置、呼ばれたら吉兼氏が車を出してユーザーを迎えに行く。リーンスタートアップの手法だ。

吉兼 「『CREW』は、ガソリン代や高速代などの実費と手数料以外は、ユーザーが満足度に合わせて支払う謝礼のみで成り立ったサービスです。そもそも、日本人は人の車に相乗りすることがあるのかどうかというニーズから調査しなければ、サービスとして成り立たないと思ったんです」

「とにかく大変な時期でした」と苦笑いする。

ライドシェアサービスは、世界的に見てもUberの一強ではなくローカルのサービスがシェアを獲得する傾向のある領域だ。日本にはまだ浸透していない文化だからこそ、先行者メリットがあると踏んでいた。

*1:利用者が増えれば増えるほどそのサービス価値が増加すること

初期の頃に立てた市場に対する仮説は今もずっと変わらない

これからの「CREW」について話をすると、ミレニアル世代だからこそ感じる視点で吉兼氏は未来を捉えていた。

これからの「CREW」について話をすると、ミレニアル世代だからこそ感じる視点で吉兼氏は未来を捉えていた。

吉兼 「僕らは、インターネットが当たり前にある時代のなかに生まれました。スマートフォンで本が買えることも当たり前ですし、スマートフォンでできることの幅は一気に広がりました。
今後、モビリティがスマートフォンのように生活のインフラになる日がくると思うし、物流のあり方も変わります。その波に乗りながら、モビリティのネットワークを牛耳りたいと思っています」

また、海外への進出を考えているのかという問いには「いいえ」ときっぱりと否定する姿勢を見せた。それは、「CREW」だからこそ出せる色合いがあるからなのだという。

吉兼 「相乗りは、地方に行くとまだまだ根付いている文化です。むしろ隣近所とのつながりや関係性を大切にしてきた日本らしい、原点回帰のサービスといってもいいでしょう。
闇雲に海外に進出を目指すのではなく、国産のスタートアップが国内で展開するからこそ生み出せる価値があるし、そういうプロダクトもきっとある。いずれ海外のアプリとの連携は夢見ていますが、僕らが海外に進出していくことはないでしょうね」

インタビューの最後に、これから起業やスタートアップへの転職を検討している方に向けたメッセージを伺った。

吉兼 「『決めた道を正解にする覚悟はあるか?』と言いたいです。スタートアップには向き不向きがあるし、否定されても努力を続けられる人はきっと強いですから。
また、初期の市場に対しての仮説は、いつまで経っても変わることはありません。徹底的に事業計画を磨きあげてほしいです。そして、一番は仲間を大切にすること。どんなにつらい瞬間も、頼れる仲間さえいればきっと乗り越えられるはずですよ」

事業の未来は、必ずしも常に明るいものではないのかもしれない。予期せぬ困難に出会う日や、途方に暮れるような悩みを抱える日だってあるのだろう。

「大変なことがあったとしても、ネガティブなことは絶対に言いません」と語る吉兼氏が日頃仲間と過ごすオフィスでは、常に多くの笑顔が飛び交っていた。

どんな困難に直面しても仲間の笑顔で吹き飛ばそうとするその姿勢には、確固たる強い信念と底抜けの明るさが感じられた。

Azitの強さは、きっとそんなメンバーの明るさと強さにあるのだろう。そう強く感じられる取材の時間だった。

執筆:鈴木しの
取材・編集:Brightlogg,inc.
撮影:横尾涼

※現在Azitでは採用強化をしております。

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