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全世界の命を救う内視鏡AIの実現に向けて。インキュベイトファンドとGCPがAIMに投資したワケ

「ありえないことに、かつては、人の目で見てがんを発見していたらしい」。そう、語られる未来が訪れるかもしれない。

そんな未来の実現を目指すのは、株式会社AIメディカルサービス(以下、AIM)だ。世界を見渡しても日本が卓越した技術力を持つ分野と言われる「内視鏡」と、AIを組み合わせて、AIによる内視鏡の画像診断サービスを開発している。

同社は、10月4日にシリーズBでの資金調達を実施。創業2年で累計調達額は62億円、今後の飛躍的な成長が期待されているスタートアップであることが伺える。

今回は、AIMへの投資を実施した、インキュベイトファンド 村田氏とグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP) 福島氏を招き、AIM代表取締役2名を含めた4名での対談を開催した。

シリーズBでの資金調達を終えた今、起業家・投資家それぞれの目線から、AIMを語る。

「テーマ×経営チーム」が投資の決め手だった

──まず、今回の調達に至った背景からお伺いできますか。

多田 「我々が作っているサービスでは、AIを活用した画像診断により、ピロリ菌の発見を行うことから始めました。現在では、静止画レベルであれば胃がんの発見も可能な上、PoC(Proof of Concept 概念実証)も実施し、人の100倍のスピードでがんの発見ができています。

これまでは、臨床の傍らで1年間かけて70名もの専門医が行なっていた200万枚の画像の解析が、約1時間ほどで終わる計算です。その早さと精度があれば、リアルタイムで内視鏡検査をしながらがんの発見を行うこともできるでしょう。

治験を経ての薬事承認には至っていませんが、技術的には現場で利用できる段階に近づいたこともあり、薬事関連費用とさらなる開発資金が必要となる未来を考え、シリーズBでの調達を実行しました」

村田 「前回のシリーズAから今回の調達まで、約1年。すごく良いスピード感ですよね。内視鏡AIと一言で言っても、それを通して発見できる病気は非常に多いです。なぜなら、医療機器は器官ごとに必要とされているのに対し、内視鏡とAIの組み合わせであれば消化器すべての病気を発見できるから。部位ごとに機器を変える必要もなければ、希少なガンも見つけられる可能性もある。非常に、将来性の高いサービスだと思います。

ただ、長い時間軸が必要な領域であるのもまた事実です。開発コストもかかりますし、協力者の力を借りデータを集めたり、知見を得る時間がかかる。さらには、薬事承認を得るのも大変です。ですから、短期間でのスケールではなく、マイルストーンを置きながら、長期でのスケールを目指すのが良いかなと思っています。

僕らインキュベイトファンドは大きく出資する場合でも、3〜5億円ほどでした。しかし今回は、あえて倍の10億円を出資しています。それだけ、覚悟の大きな出資なんです」

福島GCPは、最近新しいファンドを組成したばかりですが、社会的意義を有する大きなチャレンジの背中を押したいと考えています。AIMの取組みは、そのテーマにもバッチリ当てはまっていました。

今後、AIが社会実装される大きな流れは不可逆と考えています。AI×医療は、大きなチャレンジではあるものの、非常に明確な課題解決につながる。幅広い目的を見据え研究開発を進めているAIスタートアップがある一方、AIMはがんの発見や診断支援と、ユースケースが明確な点にも魅力を感じました。

さらには、代表の多田さんは長い間、専門医としてこの領域の課題に直面していた存在であり、また多くの医療機関との信頼関係も構築している。山内さんはシリアルアントレプレナーとして数社の経営を推進してきた存在。ネットワークや想いなどを含め、チーム×テーマとして必ず成功してほしいと思ったんです」

多田村田さんに至っては、今でも週に1時間以上は来社して経営課題を一緒に考えてくれていますよね。エンジニアのスカウトに走ってくれることもある」

村田 「この1年間は、とにかく採用に本腰を入れていましたね。代表のふたりが面接した人材を僕も面接したり、その逆もあったり。本当に忙しかったときは、毎日来ていました(笑)」

福島 「僕らも、村田さん同様に、採用を始めとした事業・経営面でお手伝いをさせて頂く予定です。僕自身、ヘルスケア領域での投資が増えてきている中、解像度を上げて時間軸に合わせた関係各所とのコミュニケーション面でのサポートに入りたいと思っています」

世界中の人々の命がスコープ。ペインポイントを見抜き、臨床と研究の両軸で開発に取り組む

──そもそも、なぜ内視鏡AIに特化したスタートアップの創業に踏み切ったのでしょうか。

多田 「23年間、臨床医師として内視鏡に携わっていて、課題の多い分野だったからです。たとえば、大腸の内視鏡では、大腸をぐるりと一周しなければならないため、施術中に穴が空いたり傷つけてしまうなどの問題点がありました。ここ10年で内視鏡の機器の精度が上がり、だんだんと安全に検査できるようになってはきましたが、そこで顕著になったのが医師の負担です。

内視鏡での胃がん検診は、診断を行う医師のミスを減らすために、ダブルチェックの体制を敷いて画像を確認することが義務付けられました。ひとりあたり、40〜50枚撮影する画像を、医師がふたり体制で日々の業務と並行してチェックする。私はさいたま市内でクリニックを構えていたのですが、市民検診を受ける4万人、すなわち200万枚の画像を医師が目視で確認しているんです。朝から19時まで外来で患者さんの対応をした後、夜に確認作業を行う大変さを実感していました。

現状をなにか変えたいと思っていたとき、たまたま人工知能の第一人者、東大の松尾豊教授からディープラーニングの話を聞く機会があり、これだ、と思ったんです」

村田 「僕と多田さんは、インキュベイトキャンプインキュベイトファンド主催の起業家・投資家合同合宿)を介して知り合ったのですが、まず話を聞いて大変だと感じたのは、とにかくプロダクトとして実用化されるまでのステップが多いことでした。toBのSaaSプロダクトは、作って、売って、CSに力を入れて、マーケティングしてって具合で、比較的行動指針が明確です。

一方、多田さんが考えていたAI×医療は領域が領域だけに、そもそも作ることが大変。たとえば、教師データを集めるためには、各研究機関に協力を仰がなければなりません。それらのデータを元に画像認識モデルを作り、医師が使いやすいUXを実現して、やっと薬事承認です。スケールにおけるステップが多重構造なので、ひとつの工程が止まるとすべてが止まる。つまりは、玉突き事故を引き起こしやすいわけです。

そして、命に関わるプロダクトですから、品質管理も難関です。セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス関連も含めて、責任者を立てながらプロダクト開発を行っていく必要がありますよね」

福島 「高齢化が先進的に進む日本からどのようなサービスが生まれてくるか海外からも注目されています。中でも内視鏡分野は日本が優位性を有している領域です。日本の技術や経験をベースにして作られたプロダクトであれば、世界の人々を救えるはず。とくに技術力が高いとされる分野で、グローバルに解決策を提示できる今は、チャンスですよね。

先日、セコイア・キャピタルのチャイナチームと話したのですが、アジアでもAIMのサービスはニーズがあると思う、と話していましたし。日本が世界に比べてリードできている分野で、マーケットシェアを取るチャンスがあると思うと期待値も高いです」

村田 「内視鏡は日本生まれの技術で、今や機器などハードでは全世界で約3,900億円、内視鏡検査・治療市場ともなると、その市場は3〜4倍にもなります。ハード分野での進化は著しい上、諸外国と比較しても日本の医師の臨床経験は群を抜いているそうです。国内では医師一人あたり1万件を超える検査経験はスタンダードですが、海外ではクレイジー、と。つまり、データが一番溜まっている国こそが日本なんですよね」

多田 「最初から世界を目指しつつ、すべての消化管臓器の病気を発見できるAIの開発に取り組むことを直近の目標としています。車に搭載するナビって、自動でデータを取り込んで、最新の渋滞情報や新しい道なんかをダウンロードできますよね。そんなふうに、独立したソフトウェアを作り込むことができたら、世界中の患者さんを素早く救えるようになります。

また、プロダクト内で、動画を共有しながら全世界の医師がコミュニケーションを取れるプラットフォームにもなっていきたいです。孤独に研究や臨床と向き合う医師が多い中で、情報提供できるネットワークを作ることで、今よりも医療の進歩を加速できるかもしれません」

エンジニアリングが、人の命を救う時代がやってきた

──医師として自らがスキルアップする道ではなく、新しいチャレンジに取り組みながらキャリアを作っていますね。

多田 「実は、あんまりキャリアチェンジをした実感がないんです。もともと、さいたまで開業したクリニックでも『世界最高レベルの胃腸科・肛門科診療をあなたに提供するべく日々研鑽に励みます。』を理念に謳うくらい、世の中の医療水準を引き上げることが、私自身の喜びなんですね。それは、医療従事者が辿る、必然的な流れだとも思っています。道を変えたわけではなく、延長線上にいると思っているからこそ、今でも臨床に励みながらAIMを経営しています」

村田多田さんのクリニックを初めて訪れたとき、外来受付の裏にあるPCで画像のアノテーション作業を行なっていましたよね(笑)。最初の何万枚かのデータは、多田さんが作ったものです。そんなひたむきな姿を見て、早く事業としてスタートさせましょうと、伝えたことを覚えています」

山内 「本当に、投資してくださったお二方には一緒に大きなチャレンジに踏み出してくださってありがとうございます、と言いたいです。村田さんも、福島さんも、自社過去最大の投資額をAIMに入れてくださっている。事業や将来のことを、僕たちと同じく全力で考え、リスクテイクしてくださる姿に心を打たれたからこそ、投資をお願いしました。

スタートアップとして、医療機器メーカーを創業するのは大変です。アメリカでさえ、既存の医療機器メーカーが技術のある企業をM&Aし、エコシステムを回すのが当たり前の世界ですからね。

でも、医療現場の知見とエンジニアたちの開発力が合わさることで、世界中の人の命を救うことに直結する仕事をしていると思うと、大きなやりがいがあるんです。医師免許なくては救えなかった命が、今やエンジニアリングで救える、とも言えるわけですから。そういった意味では、AIMを経営するやりがいも、働くやりがいも、非常に大きいですよ」

村田 「お二人が本気だからこそ、僕ら投資家も本気になれるんです。それにAIMの作るプロダクトは、特定の疾患を発見するものではないから、広くリーチできるものになると踏んでいます。全世界の人の命、を対象にしたプロダクト開発は、かつてないやりがいになるでしょうね」

執筆:鈴木詩乃
取材・編集:BrightLogg,inc.
撮影:戸谷信博

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