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アダコテックは“自動検品AI”で製造業が長年抱える課題を解決する

製造業は日本を代表する産業で、高品質なものづくりが世界でも高い評価を得ている。この品質を管理するために「検品」と呼ばれる作業があるのをご存知だろうか。

これは生産工程の最後に製品検査を行うパートを指し、その多くは目視など人の手で行われてきた。重要な工程ながら機械による自動化が難しく、担当者が1日に確認する製品は数千個。ミスなく瞬時に不良品を判断しなければいけないため、とてもハードな仕事だ。

近年、この検品作業を担当する人材の確保が難しくなっている。検品が滞れば品質の維持は難しくなり、日本の製造業は停滞してしまうかもしれない。この課題へのソリューションとして、AIによる自動検品システムを提供する株式会社アダコテック(以下、アダコテック)にお話を伺った。

河邑亮太(かわむら・りょうた)
三井物産DMMを経て、アダコテック代表取締役CEO三井物産では7年間、事業経営、事業管理、M&A実務を経験。南米チリの自動車ローン事業を行う子会社に社長補佐兼CFOとして3年間出向したのち、東京本店では主に新規M&A投資に従事。20184月からDMMの経営企画室に転職。社長直下でVR領域での新規事業提案を実施したのち、社会人向けプログラミング事業を行う投資先ベンチャー企業に常駐し、PMI/バリューアップを実施。20197月より株式会社アダコテック4人目の社員として入社、20199月より取締役、20204月より現職。

知られざる検品の世界。課題は山積していた

検品作業の人材不足はなぜ起こっているのだろうか?同社CEOを務め、この課題に詳しい河邑亮太氏(以下、河邑氏)は「検査の多くは熟練の技が必要であり、人材確保も難しい」と話す。

河邑「検品作業は単純そうに見えて、熟練の技術が必要な作業です。検品パートの担当者はミスなく長時間、瞬時に検品をし続けなければいけない。人材育成が必要なパートなので、採用してもすぐには活躍してもらえません。十分な検査人員を常時確保するのは難しく、ここに労働人口の減少が拍車をかけています。

一方で、ITや機械を使った自動化をしようにも技術的な問題から実現が難しかったという背景もあります。結果として、製造工程全体に占めるコストは大きくなっており、人件費の3割が検品作業に充てられている企業もあります」

課題は人手不足だけではない。検査基準の高さも製造業の負荷になっているという。

河邑「日本の製造業は世界的に見ても検査基準が高く、検査の回数も多い。人が検査を行っていると、どうしても最も基準が厳しい人に照準が合っていってしまうため、結果的に現場にとっては大きな負荷になっています。

アダコテックはこの状況を改善し、検品にかかる負荷を減らしていきたいと思っています。そのために必要なことは『定量的な検査』です。AIによる定量的な検品が普及すれば、必要十分なだけの検査が行われるようになり、結果として検査の回数やコストを減らすことができると思っています」

従来と異なるAI学習システムで、導入速度を飛躍的に高める

河邑氏の話を聞くと、検品の現場には今すぐテコ入れが必要だと感じる。なぜ今まで課題が残り続けてしまったのだろうか。そして、同社は自動化が難しい検知システムをどのように実現しているのだろう?

河邑「検品の自動化が難しかったのはデータのサンプル不足が原因です。2012年頃からAI検品システムが流行し、正常品と不良品の違いをもとに製品異常を検出していました。システムを稼働させるためには、両者の画像を大量にAIに学習させなければいけません。しかし、製造業において不良品が生まれる確率は概ね数%以下で、データのサンプルが不足しがちでした。加えて、表面の傷や打跡など様々な不良パターンを覚えさせなければいけないので、AI学習に時間がかかっていたのです。

一方、アダコテックが提供するAI検知システムは、正常品の画像だけで学習を終えられます。この技術は国立研究開発法人『産総研』が40年以上基礎研究を進めていたHLACという特徴抽出法を活用したもので、ディープラーニングなどと比較して、少ないデータ量、計算パワーで不良品の検知が可能です。正常品の画像が100200枚程度あれば学習が始められますし、データ収集期間は最短で1日で済みます」

学習工程を見直すことで、同社はシステムの導入ハードルを一気に下げた。さらに設備費用を安価に抑えることにも成功しているという。

河邑「従来型のAI検知システムはディープラーニングを使ったものが多く、稼働させるために高性能なハードウェアが必要でした。アダコテックAI検知システムは稼働時の計算量が圧倒的に少なく、独自の画像処理技術を施しているのでGPUも必要ありません。そのため、安価なパソコンで動かせます」

課題を解決できるのは私たちだけ、ならばアダコテックがやらなければ

業界のニーズに即した機能が受け入れられ、同社のシステムは徐々に製造現場に導入されている。順調に見える事業だが、製造領域特有のビジネス課題を抱えているようだ。

河邑「製造業の設備投資はスパンが長く、弊社が受注している案件の中には半年以上かけて稼働が始まるものもあります。スタートアップとしてはお客様のフィードバックをどんどん頂いて、プロダクトを改善させていきたいのですが、そのサイクルが長くなりがちなのが事業の難しさと感じるポイントです」

スタートアップにとっては難しい領域の製造業、同社はなぜここで勝負することを選んでいるのだろうか?

河邑「この領域にビジネスドメインを定めた理由は、お客様の声にあります。製造業の皆さんが非常に困っている課題で、類似のソリューションはあるものの、製造現場への適用が進んでいないというのが現状です。であれば、課題を解決できる私達たちがやらなければ。

幸いなことに弊社のビジョンに共感頂けるお客様も多く、お客様と一体となって、業界全体にとって役に立つような最適なソリューションを日々追求しています」

困っている人がいるからやらなければいけない。河邑氏の言葉からは使命感に似たものを感じた。もちろんビジネスなので、使命感だけでは成り立たない。スタートアップならではの勝算があるという。

河邑「私たちは組織が小さい分、意思決定が素早く、試行錯誤もしやすい。AI検証に必要なデータの数が少ないという話をしましたが、実際の検証もできる限り短い時間でお客様にお届けするようにしており、『え、もうできたの?』とおっしゃって頂けることも多くて。

加えて、やはりスタートアップということで、青臭いことを語っても、応援頂ける、ということを嬉しく思っています。中規模の製造業の社長様とお付き合いさせて頂いており、スタートアップ顔負けのスピード感でプロジェクトを進めて頂けたりしております。もちろん最終的には結果を出してなんぼの世界ですが、スタートアップである利点も活かしながら、今後も業界の課題解決に向けて奔走していきたいですね」

一貫して業界全体の検品課題を見据えるアダコテック。最後に、今後のビジョンを聞いてみた。

河邑「ものづくりは日本のお家芸で、経済を牽引する原動力です。日本の洗練されたオペレーションは宝だと思っていますが、一方で、グローバルな視点で見ると、大量生産拠点はインドや中国に移っており、日本にはより高付加価値なものづくりが求められている時代だと思います。

そんな中、顧客のニーズにタイムリーに応え、日本の製造業がさらに発展していくための一つの手段として、自動化が大事だと思っています。特に検査領域はとても自動化の余地が大きいため、自動化を通じて検査現場の人的リソースがよりクリエイティブな領域にシフトするきっかけを作れればと思っています。

我々だけの力では難しいと思っていて、今後より多くのプレイヤーにこの領域に参加頂きたいです。検品の課題は業界全体で取り組んでいく課題で、いずれは国や自治体も含めたアプローチもできればと思っています。『モノづくりの進化と革新を支える。』というビジョンの実現を目指して事業を続けていきます」

執筆:鈴木雅矩
取材・編集:BrightLogg,inc.
撮影:河合信幸

 

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