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和製デカコーンを創出するために。省庁が考えるスタートアップ支援の“次の一手”

内閣府・文部科学省・経済産業省・中小企業庁が一同に介し、スタートアップの課題や現状、支援内容などを共有する。

第4次ベンチャーブームが起き、国内のスタートアップ環境は順調に成長の兆しを見せている。現に、官製ファンドやVC、CVCが相次いで設立されたことで、まとまった資金調達がしやすくなり、M&Aの事例が増えたことで上場以外の出口戦略も見えやすくなった。

一方で、グローバルで見れば日本のスタートアップ環境はまだ発展途上だろう。「ユニコーンの増加」「和製デカコーンの創出」「GAFAに並ぶ企業の創出」など、実現が望まれるビジョンは多い。

これらの課題やビジョンに向けて、国をあげて国内スタートアップ支援に乗り出す動きが見られている。

2019年10月23日(水)、自由民主党本部内で開催された「スタートアップ推進議員連盟総会」も、そのひとつ。内閣府・文部科学省・経済産業省・中小企業庁が一同に介し、スタートアップの課題や現状、支援内容などを共有する。支援施策の全体像を把握し、スタートアップを後押しすることが目的だ。

産業の発展に官民の連携は欠かせない。両輪の片方を担う各省庁はどのようなビジョンを描いているのか。本レポートでは、総会の様子をさらいながら、国の取り組みについてお届けしていく。

盛り上がる国内スタートアップ環境、包括的な支援施策でダイナミックな発展を狙う

開会の挨拶を担当したのは、総会の発起人である平井卓也 衆議院議員だ。スタートアップのイノベーションを全力でサポートするために生み出した本総会について、スタートアップ環境の現状と課題を述べた。

開会の挨拶を担当したのは、総会の発起人である平井卓也 衆議院議員だ。

平井氏「海外と比較すると、日本はスタートアップを育てるための準備が遅れ、ダイナミクスさに欠けると考えています。その理由として、エコシステムの形成が追いついていないのではないかと。
 
昔とは異なり、起業したい若者はどんどん増えています。国内にユニコーンも少しずつ増えている。都市部以外でも、創生ベンチャーと呼ばれる地域特化のスタートアップだってあります。民間ベースで盛り上がりが見られますが、それらを総括して支援するシステムはまだありません。
 
内閣府・文部科学省・経済産業省では、それぞれ支援施策を行なっていますが、その全容を知っている人はどれほどいるでしょうか。どの省庁が、なんのために、何を行なっているのか。それらを知らなければ、包括的な政策を作ることもできなければ、規制緩和に動くこともできないわけです」

平井氏の話から見えてくる、国内スタートアップの課題は以下の2点。

・都市部、地方ともに企業数が増えたが、エコシステムの発達が追いついていない
・各省庁は施策を用意しているが、まとまりに欠け全体像が認知されていない

政府は1990年代から「ベンチャー優遇政策」など、新興企業を支援する政策を打ち出している。その動きが実を結び、スタートアップ企業数も増えたが、対する施策は各省庁が縦割りで行っている。スタートアップ環境の土台が整えられた現在、求められているのは各省庁に横串を通した包括的な施策だ。

日本ベンチャーキャピタル協会会長が、国内スタートアップの現状を報告

平野氏の発言からは「更なる発展のために、包括的な施策が必要」という課題が見えた。ならばスタートアップ環境は統計上、どのような推移を見せているのだろうか?

総会には一般社団法人「日本ベンチャーキャピタル協会」会長の赤浦徹氏も出席し、日本のスタートアップをめぐる統計資料を報告している。

国内141の正会員をかかえ、独立系、金融系、大学系、CVCなど多くのステークホルダーが参画する同協会。会長の赤浦氏は「スタートアップ環境は盛り上がりを見せているが、グローバルに比べて大きな投資が行われていない」と指摘する。

会長の赤浦氏は「スタートアップ環境は盛り上がりを見せているが、グローバルに比べて大きな投資が行われていない」と指摘する。

赤浦氏 「日本のスタートアップの総資金調達額は、2012年の645億円を底に右肩上がりで増加しています。昨年の実績では3,880億円。幾度か訪れているベンチャーブームのピーク時の数値に戻ったと言えるでしょう」

赤浦氏 「また、スタートアップ1社あたりの調達額は、平均で3億円超。中央値が1億円と高い数値をマークしています(2012年は平均0.9億円、中央値が0.13億円)。大型調達が進んでいる領域としては、オートモーティブ、宇宙、セキュリティ、製薬・創薬、バイオケミカルなどが挙げられ、2018年は30億円を超える調達が19社あったことも大きな成果と言えるでしょう」

赤浦氏 「現状、資金の出し手は事業会社、CVCが多く、VCが全体の1/3程度に留まっています。2019年度でVCのファンド設立数は64、総額も3,293億円(平均50億、中央値15億)と上昇傾向ではあるものの、スタートアップ1社に対して数百億規模の大きな投資は多くはありません」

赤浦氏 「日本と米国の総投資額を比較すると、日本は0.4兆円、米国は14兆円と約37倍の差があります。この背景として、米国では機関投資家が出資者の過半を占め、ファンドの大型化が進んでいることが挙げられるでしょう。これら海外投資家からの資金獲得を進め、国内ファンドの大型化を進めていく必要があります」

総会をとりまとめる平井氏や、日本ベンチャーキャピタル協会会長の赤浦氏の報告に共通する課題は、「国内ベンチャー環境の土台が固められたが、今後更なる飛躍が必要」ということだろう。

ちなみに、赤浦氏は同メディアで国内スタートアップの現状について意見を述べている。より詳しく知りたい方は、こちらもご一読いただきたい。

◎日本ベンチャーキャピタル協会の新会長、赤浦氏と中野氏が語るスタートアップエコシステムを盛り上げる3つの注力ポイント

さて、閑話休題。スタートアップ環境を含め、産業を進歩させるためには、官民の連携が必要だ。民間ベースでは独立系VCの設立やCVCの増加が見られるが、各省庁はどのようにスタートアップを後押ししているのだろうか。

内閣府・文部科学省・経済産業省、それぞれの政策と未来を作る取り組み

平井氏や赤浦氏に続く形で、内閣府、文部科学省、経済産業省の3省庁から、スタートアップ支援政策の現状や今後についての情報共有が行われた。

内閣府
内閣府はスタートアップエコシステムの拠点形成を目標に、7つの戦略を立てている。

7つの戦略とは

・世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成
・大学を中心としたエコシステム強化
・世界と伍するアクセラレーション・プログラムの提供
・技術開発型スタートアップの資金調達促進
・政府、自治体がスタートアップの顧客となってチャレンジを推進
・エコシステムの「繋がり」形成の強化、気運の醸成
・研究開発人材の流動化促進

これらの戦略に総額206.6億円の予算をかけ、スタートアップの後押しを行う。

スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略の主な取り組み

特に、「大学を中心としたエコシステム強化」には総額63.2億円が、「技術開発型スタートアップの資金調達促進」には総額100.8億円が投じられた。金額が他の項目より多いことから、技術開発に特に力が入れられていることが読み取れる。

総会で取り組みが紹介された「スタートアップ・エコシステム拠点都市の形成」では、地方自治体、大学、民間組織で協議会を形成することで、縦割り構造の打破を図るという。このように、官民が連携しながら政策や事業を後押しすることで、スタートアップの創出や成長に貢献することを目標とする。また、グローバル展開を見据えて、海外への拠点作りも行う意気込みだ。

文部科学省
文部科学省の政策は、新しい市場の開拓を主軸に置く。いわばイノベーティブな大学発スタートアップの創出や、アントレプレナー育成のための研究開発支援だ。大学発スタートアップのエコシステムを動かす人々を生み出すため、旗を振れるアントレプレナーを数多く輩出することが、直近の課題だと捉えている。

具体的には、2017年度から執り行っている「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」や、2012年度から開催している「大学発新産業創出プログラム(START)」などを施策として引き続き実施。担当者は「起業人材の育成→起業→成長・発展と、フェーズに合わせたサポートを可能にしたい」と語る。

令和2年の要求予算はそれぞれ、EDGE-NEXTが5.1億円(前年度予算額3.8億円)、STARTが30.7億円(前年度予算額17.5億円)と、昨年に比べて規模の拡大を狙う。

経済産業省
経済産業省の取り組みは、質の高いスタートアップへの集中支援による、ユニコーンの創出だ。スタートアップの起業数を増加させるだけではなく、グローバルで通用する大きな成果を生み出すことが、今後の日本の成長に必要だと考えている。

たとえば、学生に向けた大学からの研究開発資金、すなわちGAPファンドの拡充を行うことで、スタートアップの走り出しでの苦難を極力減らす。また、NEDO、JSTなどの研究開発機関との連携を強化することで、事業効果を一気に引き上げるなども検討段階だ。

2018年6月に発表された経済産業省のベンチャー支援プログラム「J-Startup」も引き続き実施。年間10億円超の予算を投じ、グローバルで戦える企業創出を目標に支援を続けていく方針だ。

各議員からも積極的に意見が挙がる

各省庁からの共有を終えた後の質疑応答では、参加議員からさまざまな意見が寄せられた。

各省庁からの共有を終えた後の質疑応答では、参加議員からさまざまな意見が寄せられた。

「起業家がVCとマッチングできる環境をもっと整えたい」

「初期フェーズのスタートアップが生き残りにくい現状がある。調達のスキームを作ってサポートする必要があるのでは」

「法人口座すら作れない起業家がいるという。スタートアップの立ち上げのハードルを下げる仕組みはどうしたら作れるか議論したい」

「次回以降は金融庁も呼び、規制改革について議論を進めるべきだ」

「資金の流れがなぜ、どこで滞っているのか把握することが必要。それを明瞭化する場を設けたい」

このように、各議員から積極的に意見が出たことが非常に印象的だった。今後、総会は定期的に開催される予定だ。活発な議論が具体的な施策・法案を生むことを期待したい。

今後、総会は定期的に開催される予定だ。活発な議論が具体的な施策・法案を生むことを期待したい。

余談にはなるが、総会後の平井氏にインタビューすると、グローバル戦略を主軸にしつつ、地方特化のスタートアップ支援を行う構想も聞くことができた。グローバルの競争力ばかりに目を向けず、地域課題を解決する企業を支援する姿勢に好感が持てる。

国内スタートアップ環境は起業数やVCが増加し、着々と基盤を固めつつある。次なる舞台はグローバルだ。「ものづくりの国」が再び世界で躍進できるか否かは、官民の双肩にかかっている。

※各資料は、経済産業省「スタートアップ支援にかかる 経済産業省施策のご紹介」、文部科学省「大学発ベンチャー支援に関する 文部科学省施策について」、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会「我が国のスタートアップの資金調達 ならびにVC業界の現状について」を引用

編集デスク:BrightLogg,inc
執筆:鈴木詩乃
編集:鈴木雅矩
撮影:山口真由子

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