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スタートアップCTOが抱えるピープルマネジメント&採用の課題感とは?

スタートアップCTOが抱えるピープルマネジメント&採用の課題感とは?

テックスタートアップにとって、技術組織の構築は企業の成長において重要な課題だ。エンジニアの採用、ピープルマネジメント、P/L(コスト)管理など、直面する課題はさまざまといえる。

そこで今回は「今後の技術組織において、意思決定はどのように行われるべきなのか?」をテーマにスタートアップのCTOを招いたトークセッションを開催。

技術組織で働く人材はどのように意思決定を行う必要があるのか。パネルディスカッションやLT(ライトニングトーク)などを行なった。本記事では、その中でもパネルディスカッションの様子をお届けする。

当日、イベント会場では参加者へのアンケートを実施。最も注目度の高かったピープルマネジメントの話題を中心に、スタートアップの現場で実際に現場を統括する方々の声を伺う。

各社のCTOが考える有効的なピープルマネジメント

各社のCTOが考える有効的なピープルマネジメント
■松岡剛志(モデレータ)
rector,inc.代表取締役
Yahoo! Japan新卒第一期生エンジニアとして複数プロダクトやセキュリティに関わる。ミクシィでは複数のプロダクトを作成の後、取締役CTO兼人事部長。 その後B2Bスタートアップ1社を経て、rectorを創業。

松岡 「今日はよろしくお願いします。今回はピープルマネジメントの話題を中心にトークセッションを進めていけたらと思います。ピープルマネジメントにおける議題を、今回は3つ用意しました」

松岡 「離職が多い、会社と個人のベクトルが異なる、エンジニアとハラスメントについて、ですね。ちなみに、登壇者のみなさんの中で、直近組織作りで揉めた方っていますか?(笑)」 一同 「(笑)」

松岡 「離職が多い、会社と個人のベクトルが異なる、エンジニアとハラスメントについて、ですね。ちなみに、登壇者のみなさんの中で、直近組織作りで揉めた方っていますか?(笑)」

一同 「(笑)」

■松本勇気 DMM.com CTO 大学4年生だった2013年に、創業直後の株式会社Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当し、幅広い領域の開発を手がける。 また、新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/ARといった各種技術の調査・開発を行う。2018年8月まで株式会社Gunosyにて執行役員 CTOおよび新規事業開発室室長。2018年10月11日より合同会社 DMM.comCTO(最高技術責任者)に就任。
■松本勇気
DMM.com CTO
大学4年生だった2013年に、創業直後の株式会社Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当し、幅広い領域の開発を手がける。また、新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/ARといった各種技術の調査・開発を行う。2018年8月まで株式会社Gunosyにて執行役員 CTOおよび新規事業開発室室長。2018年10月11日より合同会社 DMM.comCTO(最高技術責任者)に就任。

松本 「まあ、揉める前に解決してほしい課題ではありますよね。スタートアップだとスキル重視で採用するなんてことがあるかと思いますが、それよりもマインドやキャリアが会社に合っているかどうかを考えるべきだと思います。
 
また、個人と会社のベクトルが合わなくなっているって悩みは、多くの場合、メンバーとの関係構築にリソースを割かずに放置しているんですね。たとえば、月に一度だったはずの1on1が3ヶ月に一度になっている、みたいな。
 
3ヶ月もメンバーを放置していたら、そのメンバーは他社からのオファーを受けたり新しい環境を探したりするので、所属する企業とのベクトルはだんだんずれていくはずなんですよね。
 
僕自身、今の会社に入ってからは半年くらいですが、1on1の精度を高めることでメンバーの不満を理解できるようにと組織体制を改革していますから。短いスパンでの軌道修正を進めることが、ベクトルを合わせるためには重要だと思いますね」

松岡 「マネジメント体制の構築ってすごく難しくないですか? それまでヒューマンマネジメントの経験がなかった人材がマネージャーとなり、メンバーの一人ひとりのマインドをマネジメントするって大変じゃないですか。たとえば、1on1のコツみたいなのってあるんですか?」

■椎野孝弘 Kyash CTO 米国セント・マイケルズ大学経営修士課程修了。2社のExitを経て、株式会社コミュニティファクトリーに取締役CTOとして参画。 ヤフーへ売却後、ヤフー社モバイル戦略責任者に就任。その後、BCG Digital Ventures Tokyo Region CTO、株式会社FOLIOの取締役CTOを経て2019年1月より現職。
■椎野孝弘
Kyash CTO
米国セント・マイケルズ大学経営修士課程修了。2社のExitを経て、株式会社コミュニティファクトリーに取締役CTOとして参画。ヤフーへ売却後、ヤフー社モバイル戦略責任者に就任。その後、BCG Digital Ventures Tokyo Region CTO、株式会社FOLIOの取締役CTOを経て2019年1月より現職。

椎野 「答えはないのであくまでヒントですが……1on1ってメンバーの悩み相談の場になりがちですよね。ただ、それだけだとせっかくの時間を取ってお互い話しているのでもったいないなと思っていて。僕自身、コーチングの資格を持っているのでその知見を1on1で活かすことが多いです。おすすめの方法は、四半期ごとにゴール設定をしながら進捗をすり合わせていく場にすること。個人のスキルセットに合わせて、目標値と、今の差分とをすり合わせています」

松岡 「なるほど、コーチングの技術を活かすんですね。ちなみに、自分でコーチングを学ぶことはできると思うのですが、マネジメントに関わるマネージャーを育成する際に気をつけていたことってあるんですか?」

椎野 「前職のヤフーは、1on1文化が根付いた風土だったのでそこでの学びが参考になりました。具体的には、コーチング分野で読んだ本を、社内のコーチングに興味のあるメンバーにシェアするんですよ。いわば、コーチを育てるためのコーチングですね」

松岡 「それ、すごく良いですね! 井上さんはいかがですか?」

■井上正樹 ウェルスナビ 取締役CTO&COO グリーにおいて開発本部副本部長・開発企画室長としてインフラ整備やエンジニア育成を担当した後、ゲーム事業本部長を経て、2016年3月より、ウェルスナビのCTO兼プロダクト開発ディレクターを務める。 プロダクトの企画から設計・開発・運用を一貫してリードしつつ、事業成長に向けたマーケティングを推進。社員全体の6割をエンジニア・デザイナーが占める金融機関として、組織作りにもリーダーシップを発揮。
■井上正樹
ウェルスナビ 取締役CTO&COO
グリーにおいて開発本部副本部長・開発企画室長としてインフラ整備やエンジニア育成を担当した後、ゲーム事業本部長を経て、2016年3月より、ウェルスナビのCTO兼プロダクト開発ディレクターを務める。
プロダクトの企画から設計・開発・運用を一貫してリードしつつ、事業成長に向けたマーケティングを推進。社員全体の6割をエンジニア・デザイナーが占める金融機関として、組織作りにもリーダーシップを発揮。

井上 「1on1は、積極的に取り組んでいます。マネージャには研修で1on1の進め方を学んでもらうのと、実施もれがないように人事の方で実施状況の確認を行っています。
 
あとは、会社の方向性をCEOと話すことが多いですが、できるだけすぐに、メンバーに共有するようにしています。エンジニアはもちろん、CSのメンバーまで集めて会社のロードマップとして伝えています。
 
スタートアップは、常に状況が変わっていくので、自分たちが何を目指しているのか共有することで、メンバーが自分たちで道筋を考えてくれることを期待しています」

松岡 「なるほど。それでは、せっかくなので、イベントに参加してくださっているウェルスナビCPOの岸田さんにも話を聞いてみましょう。実際、ロードマップの共有を社内で行なってみてどうですか?」

岸田(ウェルスナビCPO) 「(笑)。そうですね。常に状況を伝えてくれるので、今どこに向かっていて、何を目指しているのか伝わっていてすごくわかりやすいですね!」

岸田(ウェルスナビCPO) 「(笑)。そうですね。常に状況を伝えてくれるので、今どこに向かっていて、何を目指しているのか伝わっていてすごくわかりやすいですね!」

松岡 「いきなり話を振ってしまってすみません(笑)。ありがとうございます! 松本さんはいかがですか?」

松本 「僕もいろいろ気にかけていることはありますが、一番は中にも外にも発信することですね。組織の人数が増えてくると、思っていることや考えを全員に伝えるのって大変になるじゃないですか。
 
だから、僕の場合はみんなが見れるSlackに日報を書いて提出する。良いことでも悪いことでも、正直に書くことで、メンバーとディスカッションする機会も生まれますし。ときには意見を直接僕に話しに来てくれるメンバーもいます。
 
あとは、発信を目的とした登壇も有効ですよね。考えていることをイベントで話すと、こうして記事になって、いろいろな人の目に触れて社内に戻ってくる。第三者の意見が介在することで、自社の考え方が間違った方向には走っていないことを再確認できますよね」

松岡 「ありがとうございます。ここまでで、個人と企業のベクトルのズレを防ぐための方法論がたくさん出てきました。
 
・定期的に何らかの目標を持った1on1を行う
・コーチングを取り入れる
・コーチングできるメンバーを増やす仕組みを作る
・社内向けにロードマップを作る
・意見をフラットに発信できる場を設ける
 
ほかに、まだ言い残したtipsがある方っていらっしゃいますか?」

松本 「僕、ありますね。今の会社に入ってすぐだったのですが、言語化して伝えなければならないことをパッケージ化していました。なかなか今向いているベクトルを伝えようと思っても、すぐに言葉になるわけではないんです。だから、組織の目指す先や評価方法などは、パッケージとして固めておくのがいいと思いますね」

松岡 「いいですね。ちなみに、社員が増えてくると、ベクトルが少しずつずれてくるメンバーっていませんか? そういったときって、みなさん、どうしていますか?」

井上 「コミュニケーションを多くとって解決できるように試みますが、なかなか難しい場合はありますね」

松岡 「スキルありきで採用すると、そういった齟齬も生まれそうですよね」

椎野 「まあ、個人と会社のベクトルが永遠に合い続けることはないですからね。企業を取り巻く環境がすごいスピードで変わっていることと、個人の仕事のあり方や人生が多様化していることもあり、ベクトルが一致している期間も短くなりつつあると思います。
 
だから、今いる会社が良い意味で踏み台となって、さらに大きく羽ばたけるような環境を作ることが重要かなと。大きく羽ばたいた先が今いる会社の新たなチャレンジなのか、他にあるのかは個々人によって異なるとは思います。
 
仮に外の環境を選んだとしても、その人に取って良いチャンスが得られるのであれば、その会社が成長の場として世間に認知され、新たな成長を求めて新しい人材が入社してくるような良い還流が生まれるものと思います」

どうしたらスタートアップの技術組織は、スムーズに採用ができるようになるのか

どうしたらスタートアップの技術組織は、スムーズに採用ができるようになるのか

松岡 「少し採用に関する話もできたらと思っているのですが、みなさんが思う採用におけるコツや技みたいなものってあるのでしょうか?」

松本 「シンプルですが、今足りていない穴をロジカルに埋めるのが一番かなと思いますね。採用って、認知する→興味を持つ→応募する→面接ってフローで進んでいくので、一体自分たちはどのフローで候補者を失っているのか知るのはすごく大切です。
 
その穴と、欲しいファンクションとがそれぞれ見つかっていたら、採用するための戦略も作れますからね。まあ、そうは言いながらも、飲みに行って腹を割って話すからこそ採用できるなんてこともあるかもしれないですが……(笑)」

松岡 「体を壊さない程度に肝臓を使っていく方法もあるんですね(笑)」

井上 「僕らの場合は、創業時に人事担当者がいなかったので自らエンジニアを採用していた記憶があります。とにかくWantedlyを使って、良いと思った方にスカウトメッセージを送り続ける日々でした。最近では、優秀なマネジメント層が採用できるようになったので、彼らのつながりでまた優秀な人材と出会える流れはできています」

椎野 「そもそもどんな人を採用したいのかってわからないと、採用にはつながらないってこともありますよね。カルチャーフィットって言いますが、それってつまりどういうことなのかとカルチャーが言語化できていない場合もありますから。
 
創業初期のスタートアップは、採用にかけられる時間もリソースも限られています。だからこそ、効率化が必要だと思いますし、役割分担して進めていくのが良いのではないでしょうか。
 
ビジョンを語る人、スキル面を見る人、アトラクトする人、みたいに。人に合わせてプロセスを変えながら、最適化していくと採用もうまくいくようになってきます」

「技術組織の意思決定」で抱える悩み

「技術組織の意思決定」で抱える悩み

Q.最近、自社のカルチャーを6つの文言で定義した。ただ、いざ面接してみても、6つすべての要素にフィットする人材が少なく採用につながらない。カルチャーフィットはどのように判断するべきなのか?

椎野 「僕らもバリューベースでカルチャーをまとめているのですが、すべてにフィットする人材ばかりが集まってくるとは限りません。なのでポテンシャルも含めて意思決定者と現場の人間の複合的に判断しています」

松本 「僕の場合は、少しでもフィットしないと感じた場合には採用しないですね。とはいえ、採用するメンバーのグレードにもよるのかなと思っています。
 
たとえば、組織規模が大きくなってきているタイミングでのメンバーレベルなら、多少の誤差は許容できる気がするんですよね。ただ、それがディレクターや執行役員クラスなら妥協はできないですし。カルチャーフィットしない場合も、社員でなく業務委託って関わり方もあると思うので、そこは臨機応変に対応していますね」

Q.競合他社と内定がバッティングしてしまったときの給与定義が知りたいです。採用時の条件を変えるのかどうか、社内の現メンバーとの調整をどうするかなど。

井上 「採用で他社と競合した場合に、給与をどうするかというのが話題に出ますが、中途採用の場合は基本的に相場に合わせていかないと採用が厳しいなという感覚です。
 
もともとのメンバーに関しては、全体を俯瞰してみたときに差は生まれないよう意識して、不均衡が生じる場合は、すぐに給与調整を行うようにはしていますね」

おわりに

技術組織の課題解決に向けて開催された本セッション。トークセッション内では、参加者の課題をヒアリングしたり質疑応答を行なったりしながら、対話のように進行していく様子が印象的だった。

また、本セッション後には「スタートアップのインフラあるあるLT」と題して、スタートアップが出くわす成功談や失敗談などを語るLTも開催。Finatext Lead Developer 石橋淳志氏、ノイン CTO 小川雅史氏、オルツ CTO 西村祥一氏をお招きして、それぞれのスタートアップが抱えたエピソードに触れてもらった。

企業によって、組織の課題はさまざまだ。ただ、多かれ少なかれ同じ壁に出会い、知見を共有しながら乗り越えることが必要であることも、セッションを聞く中では感じられる。

もしもスタートアップの技術組織で課題感を抱いている場合は、本記事を通して少しでも解決の糸口を見つけていただけたら幸いだ。

主催:for Startups, Inc
協賛:日本オラクル株式会社

執筆:鈴木しの
編集:Brightlogg,inc.
撮影:戸谷信博

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